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文化の違いを考慮した結果分析

アメリカ人のA さんはあるコンサルティング会社で日本に関するチームに所属されています。 先日、日本の企業向けに行った研修のアンケートの結果分析をしている際、疑問にぶつかりました。 アンケートの内容は満足度や理解度を5段階で示す形式と、コメントで答える形式のものがセットになっていました。5 段階の数値で表している結果に関してはあまり良い評価が出ていなかったのですが、コメントでは良い評価をもらっているのが不自然に感じるとの事でした。 この研修はA さんの会社が各国で行っているスタンダードな内容で、日本以外の国では比較的良い評判の研修だったこともあり、今回の結果にA さんは驚いたそうです。また、数値での評価とコメント欄の内容が一致しないと感じており、どうしてその様な結果が出たのかわからず、意見を求めてこられました。 研修を行う際、クライアントの国や職種・業種によってトレーニングの内容や組み立てを考慮する必要がある場合があります。例えば、やたら元気なアメリカ人講師によるフリーディスカッション形式の研修では、日本人は萎縮してしまう傾向があります。A さんに、どんな講師がどんな研修を行ったのかを訊ねると、日本育ちの日本人講師2 人が日本語で研修をしたとの事。ということは、研修参加者と講師との間の文化的な違いには問題がないと推測できました。 そこで、アンケートのデータそのものを見せて頂くことにしました。それは日本人スタッフが日本語を英訳したものでした。A さんは日本語がわからないので、その英訳をもとに結果分析をしたそうです。英訳に関しては日本語の原文と比べても大きな誤訳はありませんでした。しかし、コメントの内容を読むとA さんが戸惑った理由が判明しました。 コメントには「今日はお疲れさまでした。ありがとうございました」など、多くの感謝の言葉が記されていました。A さんはこれらを、参加者の研修に関する満足度と受け止めていました。しかし、感謝と満足は異なるものです。 日本人がよく使う「お手数かけます」「ありがとうございます」などの言葉は、相手に対する思いやり「私のために時間を割いてくださりありがとうございます」の意味合いであって、「あなたのサービスはすばらしいです」といった評価とは異なります。また、「色々な情報を知れてよかったです」は、必ずしも「知りたかった情報を提供して貰え、今後の仕事に役立つ研修で満足できました」の意味ではありません。 A さんには、「感謝の気持ちが評価として反映されることもあるかもしれないが、感謝と満足は同じではない」ことを伝えたところ、納得して頂けました。サービスに満足していなくても感謝や相手への労わりの言葉は忘れない日本人的なコミュニケーションは、礼儀正しい(Polite)といわれる日本人のイメージにつながっているのかもと思った一件でした。 [コーチング]