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世界を結ぶ授業デザイン 〜日本の小学校+大学院との共同研究授業〜

新型コロナウイルスによるパンデミック下、世界中の学校でオンライン授業が取り入れられ、探求的学びにつなげる地域や国を超えた交流授業も活発化しています。四つ葉学院の西尾由香校長に、実際に行われた交流授業の様子と共にその重要性を伝えてもらいます。

取材・文:西尾由香(四つ葉学院 https://yotsubagakuin.com
写真:本人提供

国を超えた大きな教室作り

「おはようございます!」

「こんにちは!」

双方による元気な挨拶で始まった、東京都品川区の公立小学校とベルビューの四つ葉学院による子どもたちの交流授業。2学期に入って間もない9月23日、光村図書出版の国語教科書を使った日本とアメリカをつなぐ授業は、以下の3単元で構成された。

11月7日立命館小学校との第1回交流授業ではそれぞれ学校を紹介し合った

「こんなことがあったよ」:実際の体験やできごとから伝えたいことを中心に構成を考え、報告する文章を書く。

「ききたいな ともだちのはなし」:作成した文章を元に感想を伝え合い、自分や友だちの発表の良いところを見つける。

「てがみでしらせよう」:敬体を使った文章の書き方を見直し、語と語、文と文の続け方に気を付けて自分の気持ちを表現する。

四つ葉学院の子どもたちは、日本の教室の様子や授業の進め方などを体験し、お互いに意見や質問の交換をしたり、授業の感想を手紙で伝え合ったりと、活気あふれる有意義な時間を共有することができた

国際性を育てる授業とこれからの取り組み

日本では2020年4月よりGIGAスクール構想の下、ICT(情報通信技術)を活用した、多様性を尊重し協働的な学びが求められる「新しい授業スタイル」が一気に加速。それに応じて、日本から渡米する児童生徒や、近い将来に本帰国する子どもたちのためにも、今の日本の教育現場に沿った授業を海外でも構築していくことが求められている。

同月16日の授業はチャット機能を活用

四つ葉学院では2学期後半から来年度に向け、立命館小学校との交流授業を継続していく。国語学習を発展させ、「身の回りの事象と社会情勢」、「世界平和と自分の幸せ」など幅広い題材・観点から学びを広げ、世界の補習校と日本の教室を結ぶ授業スタイルを模索する。Zoomのブレイクアウトルーム機能を用い、小グループに分かれて学んだことを発表し合うなど、アクティブラーニングが活動の主体だ。広島宿泊体験を通した平和教育やアジア・南米の貧しい子どもたちに給食を届ける「食」のNPOプロジェクトといった立命館小学校のSDGs活動と、シアトルの現地校のゴミ減量を目指す「5R」活動を共有し、社会問題を自分事として捉える視点を育てていくことが大きなゴールのひとつになる。

さらに、国際的視野を広げ、学びに対するモチベーションを高めていく教育法を研究する京都大学大学院のチームと共に、今回の立命館小学校との交流授業について共同研究を進める予定だ。オンライン交流授業に焦点を当て、海外子女に効果的な授業法や日本語教育のアプローチ、そして国際理解への興味・関心に導く要因を調査する。

最後に

昭和初期の偉大な教育者、大村はま氏による著書『教えるということ』に次の言葉がある。「研究をしない教師は先生ではない。教師の資格とは、研究を続けること。研究しない理由は、前進する気持ちがないから。研究は苦しい。子どもは一歩でも前進したいと行動する。教師は、子どもと同じ世界にいる。同じ世界にいない教師は、教師として失格である。研究をして、子どもと同じように伸びる気持ちを持つことが、教師の資格だ」

四つ葉学院の教職員も、子どもたちのために、教師であり続けるために、海外子女教育の研究に日々邁進している。

2012年、海外子女教育研究校の四つ葉学院を設立した西尾由香校長。日本教師教育学会、小学校英語教育学会の役員会員、また都内の現職教員として日米海外子女教育の研究に携わる