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現職教員の目から見た 新しい日本の授業スタイル

新型コロナウイルスによるパンデミックをきっかけにデジタル化が加速し、より柔軟な対応が求められるようになった学校教育の現場。日本の公立小学校教諭としても長年勤務する四つ葉学院の西尾由香校長に、日本の最新教育事情を伝えてもらいます。

取材・文:西尾由香(四つ葉学院 https://yotsubagakuin.com) 写真:本人提供

2012年、海外子女教育研究校の四つ葉学院を設立した西尾由香校長。
日本教師教育学会、小学校英語教育学会の役員会員、また都内の現職教員として日米海外子女教育の研究に携わる

ICT環境による授業を体験

毎夏、海外在住の子どもたちが日本の小学校体験をするように、日本の小学校に教諭として復職し、教壇に立っている。各種教育機関と情報交換を重ね、日本の学校の現状や最新の課題などを学ぶことが目的だ。シアトルで子どもたちの日本語学習を支えるために授業を工夫し、教育の質を高めていくためにも、日本の状況を知ることは必要不可欠だと考えている。

ICT(情報通信技術)環境を整備した「GIGAスクール構想」が加速する中、この2021年度の復職では新しい授業スタイルを体験した。以下、科目別に内容の一部を紹介する。

国語 学習目標や課題に応じ、タブレット端末を活用。「ロイロノート」というプログラム・システム・アプリで、感想や意見文を作成できる。班活動では画面上で各自が調べた内容を持ち寄り、班でまとめたものを発表する。ICTを使うことで、1時間の授業が児童主体で活動的に展開される。

算数 各自が計算の文章問題をタブレットに作成。授業後半ではその問題をシェアして解き合う。低学年はノート指導も重視されるため、記入し終えたノートをタブレットカメラで撮影し、教師に送信する。目的に応じてタブレットとノートを併用するスタイルが主流となっている。高学年は、タブレットで図形問題の作成に取り組む場面も。タブレットは家へ持ち帰り、宿題でも用いる。プリント教材よりも熱心に取り組む姿が見られた。

理科 植物観察学習にICTを採用。日時と成長の様子を数値データ化でき、いろいろな角度から撮った画像も取り入れられる。気付いたことをドキュメントファイルに入力し、写真を時系列に並べて観察記録を整理する。高学年は、実験の予想・仮説のために収集した情報を、付箋紙ソフト機能で取捨選択、分類整理し、実験方法について意見交換を行い、アイデアを広げていた。

社会 地図や図表、写真などの資料、ワークシートを教師が全員のタブレットに送信し、子どもが書き込んだ意見をクラスで共有。それを参考に自分の意見を見直して考えを深められるほか、新しい課題を見つけることもできる。事前に評価の観点を示すことで、子ども同士で評価し合える機能を効果的に使い、授業への参加意欲を高められる。教師は授業全体の流れを見ながら、個々の学習に臨む姿勢や理解度を把握して個別指導につなげる。

体育 マット運動、走り幅跳び、ハードル競争のタイムや測定距離をタブレットに入力。子ども同士で動画を録画し、手や足の位置、体の使い方を確かめ合うためにICTを活用している。

日本の現状を踏まえた海外子女教育を

ICTを取り入れた新しい授業スタイルとは、これまで教師が実践してきたことにICTを組み合わせ、最適化した授業の形だ。ICTを導入した教育環境では、児童が学習成果を持ち寄って共有し,学校ならではの学び合いを行ったうえで、結果を各自で深められる。令和の教育は、これまで以上に多様性を尊重し、ICTも活用しつつ、各学校でカリキュラム・マネジメントを充実させ、教育課程の編成、実施、評価、改善を計画的かつ組織的に進めることが重要になる。こうして教育の質が向上することで、子どもの可能性を引き出し、協働的な学びを実現していくことができる。

教育課程を編成する際の基準である新学習指導要領は、「主体的・対話的で深い学び」という視点から授業改善を行うことを目標としている。海外でも日本同様、カリキュラム・マネジメントの充実は欠かせない。四つ葉学院では、海外子女教育の研究校として、以下のような先進的、実証的な教育研究を実行している。

●主体的・対話的学びを育む国語と理科の統合型授業

●教科横断的な視点に立った理数教育

●幼小一貫教育と、異なる年齢の子どもたちが交流し、学習意欲を高める手立て

●自ら運動に取り組む意欲の育成

●ICTを効果的に活用し学びを深める授業

●海外での効率的・効果的な道徳の教科横断型授業

最後に

日本での復職体験を終え、海外子女に必要な力とは何かを改めて考えた。それは、「多種多様な価値観に触れても自分を見失わない強い精神力と対応力」、そして「明晰な決断力と柔軟性」ではないか。

昨年度、四つ葉学院では、他州の補習校とのZoom交流授業や、世界中の補習校に向けての公開授業を行ってきた。今年度は、都内の小学校の協力の下、日本の教室と世界中の補習校とをつなげるプロジェクトを予定している。