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キッズアカデミック・ラボの天体観測・自然科学宿泊キャンプ

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トレイルハイクをしながら植物について学ぶ

最初のアクティビティーは、キャンプ場内のトレイルを3時間半かけて自然探索。急な山道の中、そそり立つ大木群や岩場を縫って、小学校低学年を先頭に隊列を組んで進んでいく。大人でも苦労するような道を、高学年の生徒が年少者に手を差し出して助けたり励ましたり、周りの人のペースに合わせて歩くなど、実践を通してチームワークを学んでいるようだ。道中、植物学者である井本博巳先生からノースウエスト自生の植物についてレクチャーを受けた。サーモンベリーの葉は上部を切り取ると蝶の形になること、スノーベリーは真っ白な果実をつけるが体に悪いので食べてはいけないことなどを、子どもたちは真剣なまなざしで聞き入っていた。

トレイル内で採取した植物の標本作成では、子どもたちは、数十種類の樹木や草、ベリーなどを新聞紙の上に並べ、植物の名前を忘れないように記入して重ねていくという、本当の植物学者が行う標本プロセスを体験した。一週間ほど乾燥させると標本が完成するという。

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夜空を眺めて星座と流星の観察

ペルセウス座流星群の出現に合わせて計画された天体観測では、武蔵野美術大学の油絵科に通う学生スタッフが、ペルセウス座に関するギリシャ神話の自作の紙芝居を用意。子どもたちは、惑星や流星群に関する知識を深めるとともに、現役美大生の芸術を堪能した。そして深夜。満天の星空に輝く夏の大三角や、数十個のペルセウス座流星群の流れ星を見る。生まれて初めての流れ星を探すことに眠気を忘れて熱中する子どもたち。星が流れている間に3度唱えると願いがかなうと言われるが、早すぎて難しいため「もっとゆっくり流れてくれますように」と子どもたちが口々に唱えている姿が微笑ましかった。

夏の風物詩、肝試し大会では、二人一組で真っ暗な道を懐中電灯を頼りに歩く。女の人がすすり泣いているような音やサイレンのような音が鳴り、叫び声をあげる子もいたが、「もっと怖くても平気」「もう一回やりたい」という強者も。親たちのいない環境で年齢の違う子どもたちと過ごすキャンプ体験そのものが、子どもたちの胆力育成に繋がっているように思えた。

作る喜びと知る喜びを体験

熱と水蒸気を動力としたポンポン船制作では、船体を木材から組み立て、エンジンの位置や船体の重さを工夫し、河原の人工池で実験。船が重かったり抵抗が大きかったり、熱がうまく伝わらなかったりで前進しないこともあったが、試行錯誤の末、川面を走った時の感動はひとしお。河原にはタニシなどの貝や小さな魚がたくさん生息しており、感動がたくさんあった。その他、非火薬の線香花火作り、岩石採集などが行われた。

アクティビティの合間には、子どもたちの「おなかすいた!」という声がキャンプ場にこだました。おなじみのカレーライスはもちろん、ベーコンレタス・トマトサンド、すき焼きなど多彩なメニューが用意されたが、中でも人気メニューは、肉&天ぷらうどんと焼きラーメン。おかわり希望が殺到した。普段は家で料理や準備の手伝いはしないという子も、みんなと一緒に野菜を切ったり、配膳をしたり、皿洗いをしたりと進んで協力する姿がみられた。

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キャンプの運営や自然観察・科学の指導にあたった井本先生は、「植物やキャンプについての私の知識と、サイエンス・ラボ倶楽部の小中学生指導の優れたノウハウが融合し、子どもたちにとって実り多いキャンプになったという実感がある。事故やけがもなく、みんな安全にキャンプを終えられたのがよかった。子どもたちはパワフルで主体的、積極的という印象を受けた。今回のキャンプで頑張った経験や身に付いたチームワークは、きっと将来役に立つはずだ」と語ってくれた。

キッズ・アカデミックラボは、科学的思考力を培う「サイエンス・ラボ倶楽部」や、日本の大手塾の海外加盟校となる塾部門、そして、文科省のカリキュラムに準拠した土曜補習校プログラムで成る。土曜プログラムでは、現地校の小学校校舎を借りて日本の教科書を用いた授業を行っている。9月からは授業時間延長に伴い、栄養バランスのとれた学校ランチも提供(要別料金)。質の高い教育の充実を実現するキッズアカデミック・ラボに、今後も注目だ。

取材・文・写真:井山文枝