Home 学校・教養 新書で知る最新日本事情 「移民」国家をどのように設...

「移民」国家をどのように設計するか

毎月数十点が出版され、「教養」「時事」「実用」と幅広い分野を網羅する日本の新書の新刊を通して、日本の最新事情を考察します。


┃「移民」国家をどのように設計するか

『ふたつの日本/「移民国家」の建前と現実』 (望月優大著、講談社現代新書)の著者は、国のかたちが大きく変わろうとしている今、直視すべき現実を突き付けている。日本政府は長らく「移民」という言葉自体をタブー視し、意識的に避けてきた。街に暮らす外国人が増えてきているのを実感しながらも、短期労働のいわゆる「出稼ぎ」がほとんどなのでは、と思う人もいるかもしれない。しかし、「永住権」を持つ外国人に限ってみても、すでに100万人を超えているという。 在留外国人が増加する一方で、日本人は人口 減少が止まらない。国内における「外国人」の比重は、今後増えていくのは間違いない。さまざまな事情で公的教育を受けられずにいる、外国籍の子どもたちや外国にルーツを持つ「日本人」 の子どもたちの問題など、現時点で完全には可視化されていない深刻な課題もある。日本に「移民」はいない、という建前は今後通用しない。 移民の存在やその処遇をどうしていくべきか、 国家として具体的に向き合うべき時期に来ている、としている。

ふたつの日本移民国家の建前と現実 望月優大著講談社現代新書

大学など留学生を迎える立場にある人や、従 業員として外国人を雇用する立場にある人はもちろん、日常生活でのあらゆる機会を通じて外国人に接する場合に知っておくべき重要な基礎知識を解説しているのが、『知っておきたい入管法/増える外国人と共生できるか』(浅川晃広著、平凡社新書)である。国籍とは何か、「外国人」の定義、在留と帰化の違いなど、移民政策や外国人労働者問題を考える際に必要となる、法的な基礎知識についてわかりやすく解説する。外国人労働者は年々存在感を増し、人口減少・労働人口減少が深刻な日本社会にとって、すでに欠くことのできない存在となっていることは、さまざまな分野で実感されているだろう。外国人に関する制度設計のあり方は「国づくり」に直結する、と著者は指摘する。

┃変化を続ける時代 日本でトラブル続出

観光立国を目指す日本。しかし、紅葉シーズンの京都などを筆頭に、日本の至るところでキャパシティーをはるかに超えた観光客が殺到し、「観光公害」とも言うべき事態が起きている。有名な観光スポットはもちろん、これまで穴場とされていたスポットにもSNSの影響で多くの人が押し寄せるようになった。交通、景観、住環境などトラブルが続出して、地域住民の日常生活がおびやかされるようになる。

『観光亡国論』(アレックス・カー/清野由美著、中公新書ラクレ)では、世界の観光地で深刻な問題となっている「オーバーツーリズム(観光過剰)」について取り上げる。著者のひとり、アレックス・カー氏は、長年日本に在住する東洋文化研究家。世界のオーバーツーリズム対策の事例を紹介し、観光公害をポジティブに解決するための提案をする。

観光亡国論アレックスカー清野由美著中公新書ラクレ

昨今、世界で急速に拡大しているシェアリング・エコノミー。民泊のAirbnbや、ライドシェアのUberなど多くのビジネスが登場している。しかし、日本では、各業界の既得権との調整やすみ分けの問題から、規制が強化されている。現状では、ライドシェアは違法な白タク扱い、民泊は「ホテル・旅館並みの営業は許さない」という方向だ。

『岩盤規制/誰が成長を阻むのか』(原英史著、新潮新書)の著者は、「日本経済を低迷させてきた最大の要因は、政府がビジネスを妨げてきたことにある」と指摘する。官僚機構が強い権力を持ち、 役所にいろいろとお伺いを立てなければ何もできない、「事前規制型」と呼ばれる行政体系から、「事後チェック型」への転換が提唱されながらなかなか進まない。めまぐるしいスピードで変化を続ける時代に、「岩盤規制」改革をどのように進めていくか、政府のあり方をどう変えていくか。 既存の規制体制では適合できない問題が続出している今、柔軟性とスピードが要求されるビジネスに対応できる経済特区など「規制の実験場」のような取り組みを世界に先駆けて進めることが、「第四次産業改革」へ対応するためにも急ぐべきだと主張している。

岩盤規制誰が成長を阻むのか原英史著新潮新書

※2019年3月刊行から