シアトル近郊の専門家たちが、悩み多きバイリンガル子育てについて回答。子どもと楽しむ、子育てのヒント。
Q. 子どもの計算力向上にそろばんを考えています。親にそろばんの経験がなくても問題はありませんか?
A. 親の仕事は声かけなど習慣作りのみ。家庭での指導は必要ありません。アメリカで算数ができる子は可能性がより広がります。ぜひ、そろばん学習をサポートしてあげてください。
まず、そろばん学習の仕組みについて説明します。日本では通常、珠算10級からスタートしますが、近年は入塾年齢が4歳からと低下しており、初級レベルでのニーズが高まっています。当院では14級から、繰り上がりや繰り下がりのない単純な加減算を行います。11級までは計算よりもむしろ「正しい指の使い方」を重点的に指導。暗算は11級くらいから少しずつ導入しますが、これはそろばんの珠をイメージして加減算を行うものなので、そろばんの運珠の指の動きが正しくできてから指導を開始することにしています。それもあり、指の動きは非常に大切。11級までは指の使い方の練習がメインとなるので、家庭で実施する練習や宿題の際には「正しい指を使ってる?」といった声かけのみで十分です。
10級からは正式な検定試験を受験しての進級となります。当院は、日本の2大珠算連盟のひとつ、全国珠算教育連盟の検定試験が受験できる正規認定教場となっています。そろばんは各級ごとのカリキュラムがあっても、学年や年齢で分けられるものではないので、4歳や5歳でも9級に入ったらかけ算を、そして8級からはわり算を学習します。年齢に関係なく進級できるのが、そろばんの良いところ。九九は11級から練習帳を導入し、1年近くかけて暗記していきます。
そろばんは、加減算、乗算、除算という3科目があり、進級するにつれて扱う数字の桁数が大きくなります。9級で3桁、8級で4桁、5級では6桁から7桁の数字を扱います。練習や検定試験は7分という制限時間内で15問を解くので、上の級へ行くほど計算、運珠のスピード・正確さが要求され、必然と計算力が養われていきます。ほかの算数系習い事と違うのは、そろばん学習において養われるのは計算力のみではないというところ。暗算では右脳すなわちイメージ力が発達します。また、集中力や忍耐力も付いてきます。最近ではコンピュータを使ったフラッシュ暗算という練習もありますし、昔からある読み上げ算練習では、耳で聞いた音を数字に置き換えていく作業を瞬時に行うことで、脳の活性化につながります。
8級くらいから保護者の方から「もう完全に私はお手上げです」という声を聞きます。わかる範囲は何とか家庭でも指導してあげたいと、それまで手伝ってきたという方も無理をせず、指導陣にお任せください。パンデミックの今、オンラインでの指導も進化しました。リモートでピンポイントの指導ができたり、似た問題の動画をYouTubeでシェアして理解を深めてもらったりと、補習も充実してきています。保護者の方には、声かけなどをして学習環境を整え、子どもの習慣付けのために協力してもらえれば十分です。
米国の現地校において算数が特別できる生徒というのはエリート(Gifted)扱いになり、飛び級したり、同学年の他の生徒よりレベルの高い教育を受けたりすることができます。算数ができるできないというのは、数字に対して苦手意識を持ってしまっているかどうかで決まります。そろばんは進級制度を取っていますので、レベルが上がるごとに合格ステッカーがもらえ、モチベーションが上がってきます。階段をひとつひとつ上っていくことが小さな成功体験の積み重ねとなり、子どもたちは「算数大好き」と感じるようになります。5歳で入塾した生徒は、2年生に進級する前にかけ算の練習ができるようにする、というのが当院の学習目標です。
シアトル算数珠算学院
佐野哲哉さん
シアトル算数珠算学院代表。米国珠算教育連盟理事。埼玉県川越市で幼少期より母親が営む珠算塾で学習し、中学の頃から指導に当たる。IT関連会社の駐在員としてシアトルに赴任するも体を壊し退職。一念発起して2011年8月に同院をスタート。2020年2月からオンラインに移行し、年内継続予定。
STEP Education, Inc.
d.b.a. Math Abacus School of Seattle
2320 130th Ave. NE., Bldg. E, #LL-50, Bellevue, WA 98005
☎425-635-8326
http://abacusseattle.com
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