バイリンガル笑顔のタネ
シアトル近郊の専門家たちが、悩み多きバイリンガル子育てについて回答。子どもと楽しむ、子育てのヒント。
Q. 海外で日本語を学ぶ目的として、どんなことが考えられますか。また、そのために バイリンガル教育の現場で実践されている学習方法にはどんなものがありますか。
A. バイリンガルの子どもたちはグローバル人材に欠かせない3つの能力を自然と身に付けていきます。当校を始め、海外子女教育研究校では、グローバル人材育成のためのさまざまな取り組みを始めています。
アメリカにいながら、英語はもちろんのこと、日本語を学ぶバイリンガルの子どもたち。バイリンガル教育の環境を整えることは、子どもたちが創造力、対応力、コミュニケーション力という大切な3つの能力を育む基盤作りにもなります。
【創造力】複数の言語や文化に触れて育った子どもは、言語によって表現が異なることを学ぶ中でさまざまな価値観を知り、自然と発想力が豊かに。
【対応力】異なる価値観に直面しても、固定概念に縛られることなくさまざまな言語や文化に理解を示し、多様性を受容して適切な対応ができる能力。
【コミュニケーション力】さまざまな言語や文化を学び、体験することで子どもの内面を豊かにし、将来の可能性を広げることにもつながる。
グローバル社会で、意見の異なる他者との対立や誤解が生じた場合にも、状況を見極め、多面的多角的に対応したり、多彩な表現力や交渉力を発揮したりすることができます。これらの創造力、対応力、コミュニケーション力は、グローバル化の進展に欠かせない能力として大変重視されます。
当校でもグローバル人材を育てる学校教育環境作りを心がけています。2017年に、文科省は「在外教育施設の高度グローバル人材育成拠点事業」を、海外子女教育振興財団に委託し、プロジェクトを展開しました。
具体的な事業内容は、
(1) 高度なグローバル人材育成のためのカリキュラム開発
(2) 効果的な日本語指導プログラム開発
(3) 日本文化発信の拠点形成としてのプログラム開発
などです。ここでのグローバル人材とは、「広い視野、論理的思考力、適応力、自己表現力などと英語力を兼ね備えた人材」「高度の日本語能力・外国語能力を持ち、ふたつの文化と社会を理解し2国の懸け橋になる人材」など、バイリンガル教育で培われる能力と重なります。
2020年度からの日本国内の初等中等教育大変革に伴い、従来の授業の形も大きく変容しています。そんな中、全世界の在外教育施設(日本人学校や補習校など)も、新しい授業の形や学び方が必然となります。具体的には以下があります。
【教科横断型授業】日本の小中学校で積極的に取り入れられている授業構成。国語と音楽や体育、算数と理科など、複数教科の知識に関連性を見出し、授業を計画・実践することで、それぞれの学習目標を考察し、学びを深める授業のこと。当校でも、限られた授業時間数や教科学習に効果的な教科横断型授業を取り入れている。
【統合型授業】既習の事柄と新たに学んだ事柄を関連付けて考え、理解を統合し、発展させる授業の形のこと。
2020年度は、補習校研究校として、ダラス補習校、プリンストン補習校、ワシントン補習校、シンシナティ補習校、そして当校の5校が研究校として参画し、さまざまな指導法実践に取り組んでいます。海外子女教育振興財団や大学教育機関、他州の補習校と協働し、教育指導上の理論や方法に関する先進的、実証的な教育研究を進めています。
2020年11月、当校は「意欲的に課題に取り組み、自己変容を実感できるオンライン授業」の工夫に関する研究を全世界に向けて公開し、研究協議会では高い評価を得ることができました。今後もグローバル人材を育てる学校の使命として、子どもたちの学ぶ意欲を尊重し、新たな教育課題やカリキュラムデザインを模索していきたいと思います。さらに、日本国内の教育機関や世界中の学校と連携協働して、未来の国際人育成を目指していきます。
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四つ葉学院代表。日本で公立小学校教諭として長年勤務した後、夫のワシントン大学関連病院転勤に伴い渡米。2012年、海外子女教育研究校の四つ葉学院を設立。日本教師教育学会、小学校英語教育学会の役員会員、また都内の現職教員として日米海外子女教育の研究に携わる。
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