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大胆に文章の構造をいじる〜技あり! 機械翻訳達人への道

機械翻訳の精度は飛躍的に向上。でも、よく読むと「あれれ?」な部分も。ちょっとしたコツで見違えるほど自然な日本語に直せる技を紹介します。

【今回の例文】

King County Executive Dow Constantine announced today that King County Metro has agreed to purchase 40 battery-electric buses from New Flyer, Inc., to be delivered in 2021 and plans to order 80 more in the coming year – a major milestone in the county’s efforts to improve air quality, reduce carbon and create a zero-emissions bus fleet by 2040.(出典:キング郡プレスリリース)

【機械翻訳】

キングカウンティエグゼクティブのダウコンスタンティンは本日、キングカウンティメトロがニューフライヤー社から40台のバッテリー式電気バスを購入し、2021年に配達することに合意し、来年にはさらに80台を注文する予定であると発表しました。これは郡の取り組みの主要なマイルストーンです。空気の質を改善し、炭素を削減し、2040年までにゼロエミッションのバスフリートを作成します(Google)

【修正後】

キング郡のダウ・コンスタンティン長官は、1月30日、キング郡メトロが充電式バス120台を段階的に購入すると発表しました。そのうち40台は2021年に運行が開始され、2022年秋には80台が追加導入される予定です。いずれも製造元はニュー・フライヤー・オブ・アメリカ社。この決定により、大気環境の改善と二酸化炭素排出量の削減、さらに2040年までにメトロ・バスのゼロエミッション化を目指すキング郡の取り組みが、大きく前進することとなりました。

原文は特に難しい単語もなく、わかりやすいものの、一文が長いのがクセモノです。左はGoogle翻訳。このままでも意味は伝わりますが、右のように修正してみました。必ずしも原文に沿って訳していません。読み手のことを考えると、これくらいの冒険はしたほうがいいと思います。皆さんも職場などで翻訳を頼まれた時には、読みやすさを第一にアレンジしてみてください。

今回のポイント

冒頭は短く、わかりやすく

120台という数字は原文にありませんが、「40台と80台を数年かけて購入する」ことが発表の目玉ですから、最初に言い切ってしまいます。

重要でない情報は切り離して後付けに

バスの製造元(from New Flyer, Inc.)の情報は、優先度としてはそれほど高くありませんので、文章から切り離してOK。新しい文章として付け足します。

「−」でつながっている文章は切る

「– a major milestone」のように、「−」や「;」などの記号(読点)が出てきたら、そこで切ります。「したがって」「たとえば」「すなわち」など、正しく前後関係を捉えた日本語で補うと自然な流れになります。今回は「この決定により」として、文章をつなげました。

フリーランス翻訳家・通訳。外務省派遣員として、92年から95年まで在シアトル日本国総領事館に勤務。日本へ帰国後は、政党本部や米国大使館で外交政策の調査やスピーチ原稿の執筆を担当。キヤノン元社長の個人秘書、国連大学のプログラム・アシスタントなどを経て、フリーに転身。2014年からシアトルへ戻り、一人娘を育てながら、 ITや文芸、エンタメ系を始めとする幅広い分野の翻訳を手がける。主な共訳書は、金持ち父さんのアドバイザーシリーズ『資産はタックスフリーで作る』など。ワシントン州のほか、マサチューセッツ、ジョージア、ニューヨーク、インディアナ、フロリダに居住し、米国社会に精通。趣味はテニス、スキー、映画鑑賞、読書、料理。