カナダ出身の落語家、桂 三輝(かつらサンシャイン)さんによるイベントがUW和心会とタウンホール・シアトルの協力により開催されます。オンラインでも参加できる無料イベントを機会に、落語の世界を味わってはいかがでしょう。
取材・原文:デイビッド・ヤマグチ
翻訳:加藤良子 写真:UW和心会提供
桂 三輝さんはカナダ・トロントに生まれ、劇作家や作曲家、ミュージカルのプロデュースなどを行ってきた。2008年、桂 文枝さんの15番目の弟子となり、桂 三輝と命名される。400年続く落語の歴史の中でも数少ない外国人落語家のひとりだ。
英語と日本語だけではなく、最近では中国語での落語にも挑戦し、新しい風となっている。NHKワールド番組「Dive into UKIYO-E」への出演を始め、昨年のG20大阪サミットのオープニング・レセプションで司会を務めるなど活動は多岐にわたり、今年に入ってからは3月12日までニューヨークのオフ・ブロードウェイ公演を行い、『ニューヨーク・タイムズ』紙といった大手媒体にも取り上げられた。
残念ながら新型コロナのため、シアトル公演は東京からのライブ中継に切り替わったが、落語に親しめるまたとない機会となる。開催に先駆けて特別にインタビューをさせてもらった。
Q. 日本人とアメリカ人ではお互いに越えることのできない文化の隔たりがあるように感じます。落語の世界にも同じことが言えるのではないでしょうか。アメリカ人はこの隔たりを越えられると思いますか。
A. アメリカ人は日本文化にとても興味を持っています。日本食、漫画、アニメ、歌舞伎、能、浮世絵、邦画、着物、柔道、空手、日本刀など……。アメリカ人の観客から「日本らし過ぎる」ことで文句が出たことはありません。むしろ逆で、アメリカ人には日本らしければらしいほど良いようです。ニューヨークでも同様ですが、これまで何度か公演してきたシアトルでもその傾向を強く感じます。この400年続く落語の世界を、海外にいる英語やフランス語話者にもわかりやすく伝える手助けができることは光栄に思います。
Q. ニューヨークのシアター界の批評家たちが公演を高く評価していますね。公演内容はどの程度、伝統に即したものなのでしょうか。ブロンド西洋人落語家としての個性を優先した内容になりますか。
A. 古典落語は師匠から弟子に伝えられるもので、たとえばジャズでスタンダード曲を演奏するように、弟子は同じ噺を同じように披露します。さらに、それぞれの落語家が自分なりの個人的な話、体験談などを盛り込んでいきます。観客はその噺を聞きながら、元ネタになっているのがどの噺なのか予測しながら楽しむのです。そういう意味では、英訳であるという点を除けば、ほぼ100%古典落語を元にパフォーマンスをしています。ちなみに、私は生まれつきのブロンドじゃないんですよ。ブロンドだと師匠が付けてくれた「サンシャイン」という名前にぴったりなので、あえて染めています。
Q. 落語家になる前は、トロント大学でギリシャ語を勉強し、古代ギリシャの喜劇作家の演劇にも通じているそうですね。こうした経験は、落語家としてのパフォーマンスに役立っていると感じますか。
A. はい。最初に落語と触れて夢中になった時にいちばん驚いたのは、これまでずっと興味を抱いて勉強してきたことは、全て落語の世界に続いていたのだと感じたことです。
Q. 最近の活動について教えてください。ずばり、もうかりまっか?
A. 今はYouTubeを利用して英語、日本語、そして中国語で落語を世に広めることに集中しています。本当は5月にトロントでNetflix向けの収録も予定していたのですが、パンデミックのため延期となってしまいました。ほかにはポッドキャスト放送をしたり、本の執筆を行ったりしています。
Q. 最後に読者へのメッセージをお願いします。
A. シアトルは2013年に始まった北米ツアーで最初に立ち寄った場所で、観客の皆さまに温かく迎えられ、素晴らしい経験となりました。今回の公演は計画し始めた1年前からずっと楽しみにしていたので、シアトルのタウンホールに直接行くことができず本当に残念です。皆さまにとって、この難しい時期を乗り越えた後、落語の公演に足を運んでもらえるきっかけになるよう、オンラインを通し落語の世界を広めていけたらと思います。
日時:10月 20日(火)7pm~
料金:無料
問い合わせ:☎206-543-4996、asianll@uw.edu
詳細:https://townhallseattle.org/event/katsura-sunshine-livestream/
※イベント参加には、上記リンク先より要登録。英語での公演予定