Gan Bei
ガン・ベイ
宇和島屋シアトル店から目と鼻の先に位置する小さな中華料理店、ガン・ベイ。若き女性オーナーが目指すのは、チャイナタウンに活気を呼び戻すこと。アジアン・アメリカンの底力を見せつける、これからの成長に注目したいレストランです。
取材・文:河野 光
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入り口から見えるのは、大きな金魚が泳ぐ水槽。まさに典型的な中華料理店、かと思えば、右手には本格的なバー・カウンターが。随所に飾られる赤やオレンジのオーナメントの間にシーホークスの旗も交ざるちぐはぐさに、なんだかワクワク、ソワソワする。
チャイナタウンで生まれ育ったチャイニーズ・アメリカンのイエン・マさんがガン・ベイをオープンしたのは、2018年12月。それまでは別オーナーの元でイエンさんの両親が香港風カフェ・レストランを営んでいた。
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「中華料理の伝統や技術を大切にしながらボリュームのある料理をリーズナブルな価格で提供し、若者向けの新しいメニュー開発にも挑戦しています」と語るイエンさん。早速おすすめの「XOライス・ロール」を試してみると、シンプルな見た目からは想像のできない手の込んだひと皿だとわかる。
カリッモチッとした半透明な餅の皮をまとうのは、塩気のある干しエビや青唐辛子。ついついビールに手が伸びる。蒸し上げた皮の1枚1枚を、手作業でくるくると端から巻き、中華鍋に押し付けるようにして多めの油で炒めるのがポイントだと教えてもらった。
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そして、メインに注文したのは「チキン・アンド・グレービー」。香ばしくジューシーなから揚げを、グレービー・ソースにディップするのがガン・ベイ流だ。グラスフェッド牛のバターをふんだんに使用したグレービーには、八角や山椒、五香粉などが入る。主張の強いソースとシンプルなから揚げとのバランスが絶妙。店内でアツアツを頬張るのも良いが、持ち寄りパーティー用にテイクアウトしても喜ばれそうな逸品だ。
イエンさんは、若い世代のチャイニーズ・アメリカンの力で、アメリカ人の中華料理に対する偏見を変えたいのだと熱く訴える。「私が生まれ育ったのはアメリカですが、移民としてこの国に来た家族から受け継ぐ文化をとても大切に考えています。だからこそ、チャイニーズ・アメリカンとして本物の味を表現できると思うのです」。コロナ禍で飲食業界が打撃を受ける中、力強く生き残ったガン・ベイ。シアトルのチャイナタウンの未来を担う店のひとつだ。
Gan Bei
670 S. Weller St., Seattle, WA 98104
営業時間:日月水3pm〜9pm、木金 3pm〜12am、土3pm〜10pm 定休:火
☎️206-625-0408、ganbeiseattle@gmail.com
www.facebook.com/ganbeiseattle
@ganbeiseattle