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〜草月流「スカルプチャーいけばな」パフォーマンスを行う〜川名哲紀 氏

DSC03131_opt Q:川名さんはこれまでに何度も生け花パフォーマンスをしておられますが、一般にはまだあまり知られていないと思います。今回のイベントで目指していらっしゃるのはどんなことでしょうか?

草月流の生け花は、時代とともに移り変わるものだということを伝えたいという目的があります。生け花には、ウィンドウディスプレイもあれば、もっと大きなステージに生ける場合もある。そうしたいろんな世間の要求するものに対応するには、生け花の枠を広げておかなくてはいけないと思うんです。パフォーマンスもその方法の1つです。

今回はステージ上で、リンゴの木やオーク、サクラなど、とても大きな花材を使います。音響、照明、人の動きも計算に入れてやるので、それらすべてがどういう風に変化するのか見ていただきたいですね。現在の生け花はこういうものなんですよ、というのを披露して、みなさんの生け花の概念を変えてもらえたらと。

Q:草月流とその他の生け花の大きな違いというのは何でしょうか?

第二次大戦後、前衛芸術運動が盛んになった時、勅使河原蒼風(てしがわら・そうふう)氏がアートとしての「前衛生け花」というコンセプトを作ったのが草月流の始まりですが、生け花の形としては「投げ入れ」といういわゆる自由花なんです。古流と呼ばれる型にのっとった伝統的な生け花との違いは、植物素材を使って自己をどう表現するかという点ですね。アートと言っても、絵画や彫刻ともまた違う。生け花は、生きた植物素材を使うので時間との勝負であったり、作ったものも時とともに変化するし、同じものは二度とは作れません。

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Q:若い人にアピールしそうですね。

古い型にはまったものとしてではなく、芸術としての生け花をうたっていけば、たぶん多くの若い方たちが興味を持つと思うんですよね。それも僕の仕事の一つだと思っています。

これまで形を重んじる生け花と、花をきれいに飾るフラワーアレンジメントは違うものと考えられていたのですが、ヨーロッパではフラワーアレンジメントをする外国人の人たちが生け花をすごく勉強されていて、今では生け花とフラワーアレンジメントの境界が薄れつつあります。ただ単にきれいな花を器に入れるのではなく、自己表現になりつつあるんです。草月の生け花がまさにそうなんですね。

生け花の魅力というか僕にとってのやりがいは、人との出会い、素材との出会い。生け花とは人とのコミュニケーション、花材とのコミュニケーション、そしてクリエーションが融合したものということで、3Cって言っているんですけどね。今回も、花材となる庭木を提供してくださる方との出会い、植物との出会いがあった。その出会いにとても興奮します。

今後、アメリカでも、生け花とアレンジメントのコラボをする方が出てくれば、生け花でもないアレンジメントでもない、ナチュラルアートと言いますか、それだけの造形力をもった作家が出てくれば、日本の生け花が世界的に有名になるんじゃないかと期待しているんですけどね。

Q:今回下見にいらっしゃって、当日用いられる植物素材と出会われたそうですが、その時点ですぐにクリエーションの発想は始まるのですか?

頭の中である程度のことは考えますが、最終的なものは決めません。ある部分は意識して白紙状態にしておく。当日、その場でどう受け止めるか、それも面白いところですから。植物は生き物なので、時間との勝負と言いましたよね。例えば、竹のインスタレーションは通常2、3カ月で解体するのですが、ノースキャロライナでインスタレーションをした時には、雪景色の中でも見たいと言われて1年展示されていました。1年後に見に行くと、竹の裏に黒いカビが生えていたんです。それがとてもいい黒なんです。計算できない自然の力ですね。そういうのを見ると感激します。僕のモットーの1つが「地球の鼓動を聞きながらものを作る」というものなんですが、こうしたものを見ると「自然ってすごいなぁ」って感じるんです。生け花もそうですけど、自然素材というのは人が100%コントロールできるものではない。生き物ですから。その計算できない部分を計算するといいますかね、その時の変化を自分に入れ込む。するとまた新たな発見がある。そうしたものを全部自分が包囲できる広さをもっていないと、自然には対応できないんじゃないかなと思います。

Q:最後に、シアトルの生け花ファンにメッセージをお願いします。

生け花をしている方には、枠から外れて生け花を大きく広く考えてほしいですね。そして今まで生け花をしたことのない方には、ぜひパフォーマンスに来ていただいて、「生け花ってこんなに楽しいんだ」「こんなことができるんだ」と感じて欲しい。そして「私もやってみよう」って思ってもらえれば、こんなにいいことはないですね。

草月流「スカルプチャーいけばな」パフォーマンス
日時:10月3日(土)1:30pm
場所:Kirkland Performance Center
350 Kirkland Ave., Kirkland, WA 98033
問合せ:www.ikebanapower.org
チケット:$35

kawana_profile プロフィール:川名哲紀

いけばな草月流本部講師、インスタレーションアーティスト。1982年以降、草月流3代目家元/アーティスト勅使河原宏氏に師事し強烈な影響を受け、造形作家として活動を続ける。世界に支部を置く草月流の指導の傍ら、作家としてモスクワ、ニューヨーク、オーストラリアなど各国で竹のインスタレーションを行っている。
www.kawanapassage.com