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カサンドラ症候群とは? ASDとの関連と心のケア〜子どもとティーンのこころ育て

子どもとティーンのこころ育て

アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。

カサンドラ症候群とは? ASDとの関連と心のケア

「配偶者が子育てに協力してくれない」「気持ちを分かってくれない」といった経験はありませんか? 子育てには夫婦間の協力が不可欠ですが、パートナーと対話をすればするほど、相手にされなかったり逆ギレされたりする状況が続き、強い不安やストレスを感じているのであれば、それは「カサンドラ症候群」かもしれません。

「カサンドラ症候群」とは、発達障害、特に「自閉スペクトラム症(ASD)」をもつパートナーとの関係において、自分の気持ちを理解してもらえず、精神的に孤立した状態を指します。国際的な診断基準に基づく正式な疾患名ではなく、2003年に心理学者により名付けられました。

ASDとカサンドラ症候群の関連

ASDは、コミュニケーションの困難さや共感性の欠如、こだわりの強さなどを特徴とする発達障害です。人の気持ちが分からないので人が傷つくようなことを平気で言う、自分だけのルールに固執するなど、日常生活のあらゆる場面で問題が発生します。たとえば、病気で寝ているのに「ご飯は?」と聞いてくる、就寝中なのに大きな音を立てる、自分は無駄な浪費を繰り返すのに相手には極端な倹約を強いたりするケースがあります。話し合いをしても平行線をたどることになり、パートナーは一方的に我慢するようになります。カサンドラ症候群の具体的な症状は以下の通りです。

• 不安、恐怖心、怒り、過覚醒:常に不安で警戒している状態
• 強い孤独感・絶望感:自分のつらさを誰にも理解してもらえないと感じる
• 抑うつ気分:自責の念や無価値感にとらわれて落ち込む
• 身体症状:不眠、食欲不振、頭痛やめまいなど自律神経の失調

子どものASDと配偶者のモラハラ
子どもがASDと診断され、パートナーのモラハラ的な態度がASDの特性に起因していると気づくこともあります。ADHDには治療薬がありますが、ASDには特効薬がなく、根本的に治ることもありません。特に、社会的に成功している人は自分に問題があるとは思わないため治療は極めて困難です。さらに、ASDを持つパートナーの両親や兄弟も発達障害の傾向があり、非ASDのパートナーが一方的に責められる構図になりがちです。では、どうすれば自分の心を守ることができるのでしょうか。以下のような対処法を意識してみましょう。
カサンドラ症候群の対処法
❶ ASDの特性を理解する:
ASD当事者とパートナー双方がASDの特性について学び、双方の妥協点を見つけて具体的に書き出します。「パートナーが病気の場合、料理は自分で作る」「予定や要件はメールでやり取りする」「夜10時以降はヘッドホンを使う」など。トラブルが起こったらその都度、修正や改善策を模索します。

❷ 心理的境界線の構築:
周囲や友人から「問題のない夫婦なんかないわよ」「稼いでくれているだけでもいいじゃない」と言われ、一層落ち込んでしまう人もいます。精神的につらいときは、会話を一時中断し、自分の気持ちを優先してあげましょう。「自分の感じていることはおかしくない」と認めることが大切です。一旦落ち着いたら、「パートナーのせいで私は不幸だ」「この人が変わりさえすれば」といった相手にフォーカスする思考を少しずつ手放し、「自分が何をしたいか」に思考を移していきましょう。

❸ セルフケアと外部支援:
カウンセラーや家族の会、支援グループの掲示板などを活用し、横のつながりを強めて孤立感を軽減しましょう。「自分だけの時間」を確保し、思いっきり不満を吐き出せる場所を持つことで、客観的に自分の状況を把握できます。感情が適切に処理されると、パートナーと適度な距離を保てるようになります。

カサンドラ症候群は、責任感の強い人が陥りやすい心の危機です。あなたのつらさは「甘え」でも「わがまま」でもなく、その逆の「頑張り過ぎてない?」という心からのサインです。無理せず、あなた自身を大切にすることが、家族を守る一歩にもなります。まずは、「私は一人じゃない」と思える場所を見つけてください。そして、自分の心の声に耳を傾けてあげてくださいね。
長野 弘子
ワシントン州認定メンタルヘルス・カウンセラー(認定ID:LH60996161)。ニューヨークと東京をベースに、ジャーナリストとして多数の記事を寄稿。東日本大震災をきっかけに2011年にシアトルへ移住し、災害や事故などでトラウマを抱える人々をサポートするためノースウエスト大学院で臨床心理学を専攻。米大手セラピー・エージェンシーで5年間働いた後に独立。現在、マイクロソフト本社の常駐セラピストを務める。hiroko@lifefulcounseling.com