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J-1交流訪問者ビザ:アメリカでの専門的な知識 ・技術強化と文化体験〜知っておきたい身近な移民法

知っておきたい身近な移民法

米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) 五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき移民法について解説します。

J-1交流訪問者ビザ:アメリカでの専門的な知識 ・
技術強化と文化体験

交流訪問者ビザ(Exchange Visitor Visa)であるJ-1ビザは、教育、芸術、研究など、幅広い分野における知識や技術、人材の国際交流を目的としたプログラムに参加する外国人を対象にしています。教師、研究者、学者、オペア、キャンプ·カウンセラー、外国人医師、研修生などがその例です。

研修生のカテゴリには、基本的に「インターン」と「トレーニー」の2種類がありますが、今回は「トレーニー」についてお話しします。このカテゴリの目的は、外国人がアメリカの文化に触れながら、特定の分野で専門的な知識や技術を強化する研修を受けることです。

J-1トレーニー·プログラムの当事者と対象

J-1トレーニー·プログラムには以下、重要な役割を持つ当事者がいます。

1.「トレーニー」と呼ばれる外国人の研修生
2.「ホスト」と呼ばれるアメリカの受け入れ企業
3.「スポンサー」と呼ばれる国務省から認定を受けた研修プログラムを実施する機関
トレーニーは、(1)外国の高等教育機関から学位または専門資格を取得しており、アメリカ国外にて専門分野で少なくとも1年間の実務経験がある外国人、または(2)研修を求めている専門分野で、米国外で5年間の実務経験がある外国人が対象です。また、英語で研修を受けるため、英語力も求められます。

参加に年齢制限はありませんが、研修が目的であること、また上記の研修生の参加条件からもわかるように、研修生の大半は20代、30代です。
受け入れ企業とスポンサー機関の役割
トレーニーの研修先となるホスト(受け入れ企業)は、詳細な研修プランを立てなければなりません。スポンサー機関は、ホストの実態調査と研修プランのレビューに加え、必要に応じて企業訪問を行います。そのほか、研修生の経歴や学歴をチェックし、インタビューを通して必要な英語力があるかどうかを確認します。
そして、スポンサー機関は、トレーニーとホストが研修プログラムの基準を満たしていると判断した場合、DS-2019と呼ばれるプログラム参加許可証を発行します。この参加許可証がないと、大使館でJ-1ビザを申請することはできません。なお、大学などホストとスポンサーの両方を兼ねるケースも見られますが、ほとんどのケースではホストとスポンサーは異なります。

研究可能な分野
J-1トレーニー·プログラムで研修可能な分野は次の通りです。スポンサー機関によっては、サポートできる研修分野に制限があるため、個々に確認が必要です。
●農業·林業·漁業(Agriculture, Forestry, and Fishing)
●芸術·文化(Arts and Culture)
●建設·建築(Construction and Building Trades)
●教育·社会科学·図書館学·カウンセリング·社会福祉(Education, Social Sciences,
Library Science, Counseling and SocialServices)
●健康関連(Health Related Occupations)
●ホスピタリティー·観光(Hospitality and Tourism)
●情報メディア·コミュニケーション(Information Media andCommunications)
●経営·ビジネス·商業·金融(Management, Business, Commerceand Finance)
●行政·法律(Public Administration and Law)
●科学·工学·建築·数学·産業職(The Sciences, Engineering,Architecture, Mathematics,
and Industrial Occupations)
研修期間と同行家族
研修期間はプログラムによって異なり、数週間単位のものもありますが、最長18カ月です。ただし、前述のDS-2019に記載されたプログラム開始日の30日前からアメリカに入国でき、プログラム終了後も30日間はアメリカに滞在することが可能です。
研修生の配偶者と21歳未満の未婚の子どもがアメリカに同行する場合、J-2ビザを申請できます。J-2ビザ保持者は、アメリカ入国後、就労許可証を取得した場合に限り、アメリカでの就労が可能です。
研修はワーキング·ホリデーではない

J-1ビザの研修制度は、「アメリカ版ワーキング·ホリデー」とも言われますが、アメリカにワーキング·ホリデー制度はありません。また、「トレーニー」カテゴリの目的が就労·アルバイトではなく研修であることから、いくつか規制がかけられています。

たとえば、研修生に、専門的な技術や知識を必要としない単純労働をさせることはできません。また、20%を超える事務サポート業務を必要とするポジションへの配置は禁じられています。さらには、研修生が正規社員に代わって、正規社員が本来行うべき業務を担うことは認められていません。
このようなJ-1ビザの許容範囲を超えた就労は不法行為となります。トレーニーもホストも、ビザの目的を正確に認識することが重要です。
神戸市出身。明治大学卒業。大手外資系コンピュータ会社でのシステム・エンジニア職経験後渡米。 アメリカのハートランド、カンザス州のワシュバーン大学ロースクール(法科大学院)を卒業、ジュリス・ドクター(J.D.)取得。 カンザス・ワシントン両州において弁護士資格を持つ。K&I Lawyers設立以前は、 ロサンジェルスおよびシアトルにある移民法を中心とする法律事務所での勤務を通じて、多様な移民法関連のケースの経験を積む。 また、移民法以外の分野、特に家族法、遺言・検認・遺言状執行、会社設立、その他民事訴訟にも精通する。カンザス州およびワシントン州弁護士会会員、 米国移民法弁護士協会会員。移民法関連のトピックにおいて、たびたびセミナーを開催。 6100 219th St., SW, Suite 480, Mountlake Terrace, WA 98043 ☎ 206-430-5108 FAX 206-430-5118