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L-1 ビザか E ビザか? 企業が考えるべきポイント〜知っておきたい身近な移民法

知っておきたい身近な移民法

米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) 五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき移民法について解説します。

L-1 ビザか E ビザか? 企業が考えるべきポイント

アメリカに進出している企業や、これから進出を考えている企業が、社員を日本からアメリカの法人に派遣する場合、一般的にはL-1ビザまたはEビザという就労ビザの取得を検討することになります。L-1ビザでは、重役·管理職者はL-1A、特殊技術·知識保持者はL-1Bの申請が可能です。一方、EビザはE-1(条約貿易商)とE-2(条約投資家)の2種類に分かれます。E-1はアメリカと申請者の国との間で交わされた通商条約、E-2では投資条約が基盤となって発給されます。今回は、L-1ビザとEビザのどちらの申請が適切かを考える時の主なポイントについてお話しします。

●アメリカ国外の関連会社

L-1ビザは、国際的に企業内転勤するためのビザ。つまり、アメリカ国外に、アメリカの会社の親会社、子会社、支社、合併企業などの関連会社が存在しなければなりません。日本に本社のある会社が、アメリカに子会社を持つ場合などが典型的な例です。アメリカ国外に関連会社がない場合は、L-1ビザのオプションはありません。

アメリカ国外の関連会社の規模も重要です。L-1ビザ保持者が駐在期間中、アメリカの会社はもちろんのこと、アメリカ国外の関連会社も運営を継続していることが条件になります。よって、アメリカ国外の関連会社の規模が小さい場合、L-1ビザ保持者がアメリカ赴任後も存続できることを証明する必要があります。 Eビザはアメリカ国外の関連会社の有無に関係なく取得でき、アメリカで新しいビジネスを展開することが可能です。

●駐在員の国籍

L-1ビザに国籍の条件はありません。日本の会社が、外国籍の社員をアメリカの会社に派遣する場合、L-1ビザを申請することができます。たとえば、日本の本社で働いているイギリス国籍の社員をアメリカに送る場合は、L-1ビザを申請します。

Eビザは、会社の資本の過半数を、申請者と同じ国籍者が所有していることが条件。つまり、日本人が申請する会社は、米国市民権やグリーンカードを保持していない日本人もしくは日本の会社の所有であることが必要です。また、Eビザ申請者の国籍は、会社の国籍と同じでなければなりません。日本の会社が日本国籍の社員を駐在員として送り出すことは可能ですが、社員が日本国籍でない場合はEビザを取得できないので注意してください。

アメリカ国外の関連会社での雇用

L-1ビザの場合、申請前の3年間のうち最低1年間、アメリカ国外の関連会社で重役·管理職者、または特殊技術·知識保持者として、フルタイムの勤務経験があることが条件となっています。Eビザには、このような条件はありません。

●投資額

L-1ビザに投資額の条件はないものの、会社がビジネスを確立するうえで十分な資本があることの証明は必要となります。EビザのうちE-2は、多額の資金をアメリカの会社に投資していることが取得条件。投資額に明確な規定はありませんが、会社が業務を遂行し、ビジネスを確立するのに十分な投資が求められます。

●駐在期間

L-1ビザは初回の滞在期間が3年まで。延長は1回に2年ずつ、L-1A(重役・管理職者)で通算7年、L-1B(特殊技術・知識保持者)で通算5年まで滞在可能です。

Eビザは通常、発行から5年間有効ですが、入国ごとに認められるEビザ保持者の滞在期間は2年に限られます。しかし、延長できる期限は特に設定されていないので、申請基準さえ満たしていれば無制限に延長できます。

●その他

L-1ビザには、外国の会社が新規にアメリカに関連会社を設立する際の特別な枠があります。通常のL-1ビザの滞在期間については上述の通りですが、例外として、アメリカに新規設立した会社の場合、事業を発展させることを目的に1年間の滞在期間が与えられます。この間に事業が成長し、実績ができれば、1年後に更新することも可能です。

Eビザですが、E-1は申請時にアメリカと条約国の間ですでに大量の貿易が行われていることが条件、E-2はすでに多額の資金をアメリカの会社に投資していることが条件となっています。申請する段階で、ある程度の実績がないと取得は厳しいと言えるでしょう。

神戸市出身。明治大学卒業。大手外資系コンピュータ会社でのシステム・エンジニア職経験後渡米。 アメリカのハートランド、カンザス州のワシュバーン大学ロースクール(法科大学院)を卒業、ジュリス・ドクター(J.D.)取得。 カンザス・ワシントン両州において弁護士資格を持つ。K&I Lawyers設立以前は、 ロサンジェルスおよびシアトルにある移民法を中心とする法律事務所での勤務を通じて、多様な移民法関連のケースの経験を積む。 また、移民法以外の分野、特に家族法、遺言・検認・遺言状執行、会社設立、その他民事訴訟にも精通する。カンザス州およびワシントン州弁護士会会員、 米国移民法弁護士協会会員。移民法関連のトピックにおいて、たびたびセミナーを開催。 6100 219th St., SW, Suite 480, Mountlake Terrace, WA 98043 ☎ 206-430-5108 FAX 206-430-5118