潮の香りが漂う港町エドモンズの一角に、静かに暖簾を掲げる鮨処「山海」。肩肘張らずに味わえる確かな一貫と、カウンター越しに交わされる何気ない会話。その心地よさと日常の些細な瞬間を豊かにする一皿を求めて、また足を運びたくなる一軒です。
取材・文:岡本美穂
山海/Sankai
時の流れが慌ただしく進むITの街シアトル・ダウンタウンから少し離れたショアライン。踏み切りへ向かうと潮風が迎えてくれる。海と山に囲まれたこの街は、今密かに「小さな鎌倉」と呼ばれているという。
閉鎖的になりすぎないリラックスした雰囲気のカウンター席
アメリカンスタイルのレストランや雑貨店が立ち並ぶ中、ひときわ静かなたたずまいの店がある。
「山海」だ。
店に入ると、店主の中野さんが穏やかな笑顔で迎えてくれた。柔らかなオレンジ色の照明に包まれた店内は、カウンター席とテーブル席に分かれている。展示ケースにはその日仕入れた魚が並び、シアトルで最も多くの種類の魚をそろえているという中野さんのこだわりが垣間見れた。
今回は、おまかせをいただいた。11貫53ドル、14貫66ドルという価格には、気軽に訪ねてもらえる寿司屋でありたいという中野さんの思いが込められている。
木製のテーブルと椅子が並ぶ落ち着いた店内
「特に印象に残っているお客さんとのエピソードはありますか」と尋ねると、中野さんは笑ってこう答えた。「毎日いろんな人に会うからね。毎日がエピソードだよ」その一言に、この店が「寿司を食べる場所」であると同時に、「人と人が交わる場所」であることが伝わってくる。家族で切り盛りしている「山海」では、客と店の境界線もどこかやわらかい。その場に流れるのは、寿司屋というより、人の営みの温度だ。
一貫一貫に職人技が宿る
中野さんはこだわりが強く、それでいて勉強熱心な面も併せ持つ。「今の若い寿司職人たちは、学びやすい環境が整っていてうらやましいよ」と語る姿からは、長年寿司と向き合い続けてきた誠実さがにじみ出ていた。話を聞くうちに、この方は本当に寿司が好きなのだと自然に思わされた。
一貫一貫に宿るのは、派手さではなく、積み重ねてきた時間の重みだ。熟練の技が静かに光る「山海」は、気づけばまた帰ってきたくなる店だった。ふと誰かのぬくもりを思い出した夜に、ぜひ、扉を開けてみてほしい。
山海/Sankai
111 4th Ave. N., Edmonds, WA 98020
営業時間:日〜木4pm〜9pm、金土4pm〜9:30pm
☎️425-955-8789、 eat@sankaisushi.com
www.sankaisushi.com、 instagram: @sankaisushi

















