シアトルのFMラジオ局KEXP(90.3FM)は、1962年の万国博覧会のために建設された建物の中にある。一歩外に出ればスペースニードルがすぐそばにそびえ立つシアトルセンターの一角だ。今回はスタジオツアーの見学に出かけた。
いざラジオ局の中へ
スタジオ内ツアーは毎週月〜金曜の午前10時と午後2時の2回。案内してくれたのは同局インターンの石川良子さんだ。
最初に紹介されたのは、ツアーの集合場所でもあるギャザリングスペース。壁や床にはローカルアーティスト、ジョナサン・フィッシャーがペイントしたデザインが施されており、カフェとライブ用のステージが併設された広々とした空間でコーヒーを飲みながらゆっくりくつろげる。そこを抜けると番組の収録を行うDJブース、リハーサル部屋、映像・音声の編集室など本格的な設備。合わせて5万枚という膨大な数のCDとレコードを持つ、KEXPの歴史が詰まったミュージックライブラリーはことのほか圧巻だ。
単なるラジオ局じゃない!
KEXPのリスナーは週に約20万人。ロック、ヒップホップ、カントリーなど様々なジャンルの独創的・現代的な楽曲を扱い、40人以上ものDJが、それぞれの個性を生かしてプログラムを編成している。
音楽番組を放送するラジオ局としてのサービスの他に、野外ライブやダンスパーティといった様々なイベントを年間30回以上開催し、局内スタジオライブは年に400回以上行っている。不定期で開催するスタジオライブは入場無料、DJイチ押しのアーティストを鑑賞できる。整理券は当日開演90分前から配布されるので、受付でサインアップのうえで入場。予約はできない。
地元から愛される存在
KEXPを支えているのはリスナーからの寄付だ。ツアー中、たくさんの寄贈品を目にした。受付のデスクやソファなどの家具、ライブルームの竹の床、DJルームの壁の木材なども寄付によるもので、KEXPがいかに地元企業や多くの人々から愛され大切にされているかを物語っている。
KEXPには遊び心と独創性、そして音楽に対する情熱があると感じた。そんな彼らの姿勢が、多くの人々の共感を得ているのではないだろうか。
普段はただ聴くだけのラジオだが、スタジオを実際に見て、働いているスタッフがすれ違うときに気軽に声をかけてくれたりして、アメリカのラジオ局の雰囲気を生で感じることができたのは貴重な体験だった。ツアー終了後に記念として、KEXPオリジナルのステッカーとピンをもらった。
ツアー参加は予約の必要なし。日本人ガイドはいつもいるわけではないが、石川さんが訳した日本語のパンフレットが用意されている。
取材・文:中垣修平、越宮照代 写真:井上昌子
KEXP
472 1st Ave. N., Seattle WA 98109
営業時間:月〜金 9am~6pm、土・日 休み
スタジオツアー:月〜金 10am、2pm
☎︎206-520-5800 詳細:kexp.org