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シアトル出身のシンガーソングライター エミ・マイヤーさん

シアトル出身のシンガーソングライター
エミ・マイヤーさん
取材・文:室橋美佐

 

東京を拠点にシンガーソングライターとして活躍するエミ・マイヤーさん。今年9月にシアトルのジャズ・レーベル、 オリジン・レコードから新アルバム「モノクローム」を発売しました。第一子出産を間近に控え、ますます輝きを増す エミさんの素顔に迫ります!

新アルバムはシアトルのインディーズ・レーベルで

アルバム「モノクローム」は、日本、韓国、タイで2015年に発売しており、オリジナル曲「モノクローム」「イフ・アイ・シンク・ オブ・ユー」などに、スタンダートジャズのカバー曲を加えていました。今回、オリジン・レコードから出すアルバムでは、北米マーケット向けにスタンダードジャズを外し、オリジナル曲を中心に収録しています。新曲の「オデュッセイ」「パラソ」「肉と 骨」などは、オリジン・レコード創設者でドラム演奏者のジョン・ビショップらローカル・アーティストたちとコラボしています。

ジョンは、中高生の頃にジャズ・キャンプで教えてもらって 以来、私のメンターです。昔から憧れていた地元の老舗インディーズ・レーベルからアルバムを出せたことは、私にとって、それだけで意味のあることです。

新曲の収録は(マイクロソフト創設者のひとり)ポール・アレン氏のスタジオを使わせてもらいました。彼は素晴らしい 設備を提供し、地元のジャズ・ミュージシャンを積極的にサポートしています。最近は変わりつつあるシアトルですが、そいういうローカルのコミュニティーがあるのは、シアトルの素敵なところですよね。

中学時代に出合ったジャズの世界へ

クラシック・ピアノを子どもの頃から習っていました。中学校に入って、ジャズ・バンドでピアニストを探していると聞き、参加したのがジャズの世界に入るきっかけとなりました。同じピアノ演奏でもクラシックとジャズはとても違っていて、最初は戸惑いました。たとえば、ジャズではクラシックのような細かい譜面はなく、アドリブの演奏が大切です。ジャズが身近 にあるシアトルで、素晴らしいメンターに囲まれる環境に身を置くことができました。

母は日本人ですが、私はシアトル育ちなので、やはり日本語よりも英語のほうが強いです。作詞も英語で書くほうが得意。英語で歌うときは自然と感情が入るので、ひとつひとつの言葉がしっかりと聴き手に届くよう、発音に気を付けて歌います。日本語で歌うときは逆。発音に気を取られると感情が入らなくなってしまうので、発音は気にせず、感情を込めることに集 中します。

シアトルには実家があるので、よく帰省します。いつ来ても新しい店ができていて、レストランめぐりが楽しみです。グリーン・レイクを散歩するのも好き。でもいちばんの楽しみは、実家にあるグランドピアノを弾くことでしょうか。東京ではもっぱらキーボードなので。

東京は人がたくさんいて、ライブ会場もいろいろとあり、連続して週末ライブを開催しても「かぶる」ということがありま せん。客層も、会場の雰囲気も、協演者も、その時々で全く違っ たものになる面白さがあります。世界中から訪れるアーティ ストも魅力です。

生まれてくる子どものための新曲

もうすぐ母になるということで、周りからは「人生が激変する よ」と言われていますが(笑)、まだどんな風に変わるのか予想もつきません。でも、今は歌うときもピアノを弾くときも、お腹の中の赤ちゃんに聴かせている感じはあります。

新宿Flagsの2017年秋冬キャンペーンソングとなっている新シングル Tables Turnはマックルモアのプロ デューサーとして知られているBudo のプロデュースによりシアトルで録音

ちょうど9月に、テネシー州ナッシュビルで次作アルバムを 収録してきたのですが、生まれてくる子どものために作った「ララバイ(子守歌)」という新曲も入っています。ここ数カ月はお腹の中で赤ちゃんの耳がつくられるころ。初めて耳にする曲に なるのかなって、不思議な気持ちです。ナシュビルは保守的で家族を大事にする土地柄。子育て中のアーティストが多く、スタジオに家族を連れて来ることも。東京やニューヨークでの収録は夜間に行われがちですが、ナシュビルでは昼間の収録が普通。子どもの学校が終わる3時ごろには収録を終えるなど、とても新鮮でした。

次のアルバムは来夏辺りにゆっくりと出していく予定。イベントやCMのお仕事も続けていきますが、しばらくは作詞・作曲に集中する時間を、これまで以上に大切にしていきたいと思っています。

取材協力:EN Pacific Service Inc.

Music Video, “If I Think of You” ‘s production supporter

エミ・マイヤー(Emi Meyer)■シアトル-神戸ジャズ・ボーカリスト・コンペティションで優勝。デビュー・アルバム「キュリアス・クリーチャー」は 数々のジャズ・チャートで首位を獲得し、その年のベスト・ニュー・アーティストにも選ばれた。温かなスモーキー・ボイスは多くのCMでも聴くこと ができ、2015年に大ヒットした映画「ビリギャル」でも劇中歌3曲を歌っている。
公式サイト:Emi Meyer

 

ハイテク関連企業の国際マーケティング職を経て2005年からシアトル在住。2016年にワシントン大学都市計画修士を取得し、2017年から2022年まで北米報知社ゼネラル・マネジャー兼北米報知編集長を務めた。シアトルの都市問題や日系・アジア系アメリカ人コミュニティーの話題を中心に執筆。