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キンキラキンにさりげなく〜ゆる〜くSDG’sな消費者生活

SDGsとは「持続可能な開発目標」。環境対策や貧困撲滅、ジェンダー平等などなど、大きな目標はたくさんあるけれど、私にもできることって? サステナブルで豊かなおうち時間を目指すべく「地球に、人に、そして自分に優しく」をテーマに、今気になるモノやコトを紹介!

10年ほど前から、手仕事の器を好んで使うようになった。日本に帰るたび、旅行に出かけるたび、その土地それぞれの作家のお皿やマグカップを少しずつ買い集めてきた。ちょっと良い器を使うようになると、気になるのはやはり壊してしまうこと。特に、生来うっかり者な上、失敗を長々と引きずってしまう気質の私にとって、大好きな器を割ってしまうというのは恐怖極まりなく、器を扱う手もつい慎重になる。

あれは2015年のこと。母が就職した頃に買ったという一人用の小さな急須のふたを落としてしまい、取手がポロンと取れてしまった。大ショックだった。40年近くも前から母が持っていたものなのに……。せっかく大切なものを譲り受けたのに……。「捨てるわけにいかない、絶対に!」と、なんとか直せないかと思いついたのが金継ぎだった。「これを習っておけば、いつ壊しても大丈夫じゃないか」。

欠けた片口、割れたマグカップ。久しぶりに挑戦したのでへたっぴなのはご愛嬌。これはこれで愛しい。でも、これから練習して上手くなってやる! と心に誓う

日本に帰るタイミングを狙い、金継ぎの教室をリサーチ。たどり着いたのが西荻窪の古民家カフェで開催されている「金継ぎ部(http://kintsugibu.com)」だった。漫画家兼漆職人の堀 道弘先生が主宰するワークショップで、直したい器を手に集合し、金継ぎ教室後はお茶して解散、というなんとものどかなもの。堀先生自身ものんびりとした方で、とても楽しく学ぶことができた。器は、「壊れても直せる」と思うと、確かにおおらかな気持ちでいることができるものだ。そして金継ぎは、施すことで「壊れもの」だったものを「一点もの」にできる。SDGsな上にビンテージ好きの心もわしづかみにする技術。昔からの日本人の「もったいない精神」が生んだ芸術なのだ。

堀先生の著書「おうちでできる おおらか金継ぎ」と先生のくれた金継ぎ部修了証(の裏側。笑) 「つぐキット」は、見た目がおしゃれなので、ますますたくさんの人が挑戦しやすくなるんじゃないかな、と思う

久しぶりに調べてみると、5年前の新型コロナ・パンデミックによるおうち時間の増加をきっかけに金継ぎがブームになっていたという。オンライン講座や、おうちでできる金継ぎキットも種類が増え、選び放題。しかもどれもシャレオツなパッケージで驚いた。アマゾンでも気軽にオーダーでき、海外暮らしの身にはありがたいことである。中でも評判の専門ショップ「つぐつぐ」の「つぐキット」をオーダーし、使ってみてさらに驚いた。使いやすい! 「つぐつぐ」はYouTubeでステップごとの懇切丁寧な動画も出していて、私のように習ったのに「もう忘れちゃったよ」という人はもちろん、習ったことがない人でも「これさえ見れば一人でできちゃう!」というほどのわかりやすさだった。その上「つぐつぐ」のサイトには海外向けのページまであった。良い時代だ……。ホント海外暮らしの不便さなんて感じない時代になったなぁ。

■金継ぎとは?
壊れた陶磁器を、漆を中心に小麦粉、米といった自然の素材を用いてはりつけ、金などをまぶすことで見た目も美しく修復する技術。欠けたものや割れたものはもちろん、破片が見つからないものでも他の器の破片を組み合わせて直す「呼び継ぎ」によってよみがえらせることができる。通常本ほんうるし漆を使用するが、合成樹脂を使用したより簡単な直し方もある(手軽ではあるが、この場合修復後に食器として使用はできない)。

■つぐつぐ
https://kintsugi-girl.com
「金継ぎを通して、器・人・伝統をつなぐ」をキャッチコピーに、金継ぎにまつわるさまざまなサービスを提供。初心者向けの金継ぎキットの販売から、金継ぎ教室やワークショップ、金継ぎのプロによる器修復も請け負っている。また、同社のSDGsへの取り組みとして、割れた器のリサイクル、アップサイクルを行っており、金継ぎで修復された器のレンタル、販売もしている。

■Kintsugi Repair Service – JMCraft Store
www.jmcraftstore.com
もしやと思い「kintsugi Seattle」で調べてみてびっくり。シアトルの日系ギフトショップ、KOBOのウェブサイトで金継ぎの修復サービスが紹介されていた(さすが)。カンザスで金継ぎによる行っているのは、日本出身のマイコさんと、シアトルでガラス職人をしていたというジョセフさんの2 人。プロに依頼するとそれなりにお値段はするが、もし大切な器で諦めきれないものがあったらぜひお願いしてみては?

 

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加藤 瞳
東京都出身。早稲田大学第一文学部卒。ニューヨーク市立大学シネマ&メディア・スタディーズ修士。2011年、元バリスタの経歴が縁でシアトルへ。北米報知社編集部員を経て、現在はフリーランスライターとして活動中。シアトルからフェリー圏内に在住。特技は編み物と社交ダンス。服と写真、コーヒー、本が好き。