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夏は浴衣だし着物はサステナブルなもので 〜 ゆる〜くSDGsな消費者生活

​SDGsとは「持続可能な開発目標」。環境対策や貧困撲滅、ジェンダー平等などなど、大きな目標はたくさんあるけれど、私にもできることって? サステナブルで豊かなおうち時間を目指すべく「地球に、人に、そして自分に優しく」をテーマに、今気になるモノやコトを紹介!

日本の実家に置いてあるお気に入りの浴衣を送ってもらおうかと悩んでいる。実は、この1年で着物に袖を通す機会がしばしばあり、着物熱が再燃中なのだ。

私が着物にハマったのは、今から20年近く前の浪人生の頃。通りがかった呉服店の店先に置かれていた振袖用の反物にひと目ぼれした。しかし、振袖なんてとても手が届かない贅沢品で、成人式用にだって親におねだりできるとも思っていなかった。が、母は前々から考えていたらしく、意外に良心的な価格だったのもあり、その反物で仕立ててもらえることになった。

えんじに近い深めの赤に古典的な菊と桜の柄刺しゅうが入った振袖は、グラデーション柄が主流だった当時、かなり珍しかった(ちなみに、大正ロマンの着物ブームが来たのはその2、3年後)。それ以来、何かを思い切って買うか迷った時には、その振袖を購入した店の販売員さんの「お出合いものですから~」がいつも頭の中に響くのだから、危険で仕方ない。前述の浴衣も、同じ店で扱っていた反物で作ったもの。和服雑誌を買い込んだり、毎日着物で過ごすイラストレーター、きくちいまさんのエッセイ本を読んだりと、すっかり着物沼に落ちてしまった。

着物好きだった祖母が母に仕立てた着物も譲り受け、結婚式や友人との初詣などには、ここぞとばかりに着て出かけたものだ。実家の近くに、着物界では割と知られた専門ビンテージ・ショップがあったのも良かった。ニューヨークにいた頃に着付けを習い、自分で着られるようになったおかげで、結婚式で着るものに悩むことはない。ただ、やはりアメリカにいると着る機会はほとんどなく、ここ5年ほどは引き出しに眠っていた。

メルカリで手に入れたウール着物と帯はどれも新古品の状態で3000円前後家で気軽に洗えるウールはアメリカ生活にはぴったりカジュアルにタートルニットやブーツに合わせるとかわいい

久しぶりに調べてみると、オンラインでのビンテージ着物の購入がすっかり簡単になっていて驚く。状態の良いものが、メルカリで数千円。しかも、転送サービスと連携しており、アメリカまで送ってくれるのだ。ますます危険なことこのうえない!

着物というものは、とってもサステナブルで、誰かの着た古いものを着ることが当たり前。母が50年前に大学の卒業式で着た付け下げを、娘の私が今着られることがうれしい。祖母はもう空へ旅立ってしまったが、大叔母は写真を見比べ喜んでいた。そして、いつかは欲しい本麻の長襦袢はなかなか高価だが、貴重な伝統産業のサポートになる……と、思う。ああ、これはもうしばらく止まらない。

夫の誕生日プレゼントに前々から欲しがっていたスニーカーと雪駄を掛け合わせた雲駄を購入したエアソールで履き心地抜群うらやましい~これも私の浴衣着たい熱に拍車をかけている

近頃の昭和レトロのブームもあり、若い人たちの間で和洋ミックスの着物が流行っているそうだ。有名ブランドが伝統産業とコラボするなど、最近は昔ながらのものをおしゃれに取り入れられるので、本当に良いなぁと感じる。

あのスノーピークがきもののやまととコラボしアウトドア着物なるものを作っているらしい帯なしで着られる気軽さが売りで街着として映えるスタイル性だそうしかしプレタで1 着5 万円と聞くとなかなか手を出しづらい

■やまと × スノーピーク「OUTDOOR*KIMONO」https://store.kimono-yamato.com/Page/ytg_outdoor-kimono.aspx

ボタンとバックルベルトで留められる着物は、和装の仕立ての美しさを保ちながら、帯なしで着用できる。アウトドア・シーンに対応する生地を採用し、着る以外にも「包む」「掛ける」「敷く」など、さまざまな用途で使える優れもの。リサイクル原料で環境にも配慮する。

■goyemon™️ 雲駄
www.goyemon.tokyo/unda

大西 藍さん、武内賢太さんによる2018 年結成のユニット、goyemon ™が手掛ける雪駄とスニーカーを掛け合わせた「unda- 雲駄 -」は、日本の伝統と最新技術の融合で雲のような履き心地を実現。左右の区別がない雪駄の特徴そのままに左右の交換が可能なことから、ソールの寿命を延ばせる、日本の昔ながらのエコスタイルだ。

■きくちいまが、今考えるきもののこと
www.kimonoichiba.com/media/author/kikuti

京都きもの市場が運営するウェブ・メディア「きものと」で連載中の、きくちいまさんによるコラム。かわいらしいイラストと共に、日々の着物のことや、初心者でもわかりやすい着物の解説、素敵なコーディネートの提案などを、さまざまに語っている。

加藤 瞳
東京都出身。早稲田大学第一文学部卒。ニューヨーク市立大学シネマ&メディア・スタディーズ修士。2011年、元バリスタの経歴が縁でシアトルへ。北米報知社編集部員を経て、現在はフリーランスライターとして活動中。シアトルからフェリー圏内に在住。特技は編み物と社交ダンス。服と写真、コーヒー、本が好き。