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第2の故郷、ワシントン州

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ソイソース読者からの寄稿コーナー

横浜から未知の国であるアメリカ、シアトルに移り住んでから早30年の月日が流れた。ワシントン州最南端の町、バンクーバーに引っ越して4年、シアトルを懐かしむ傍ら、ポートランドまで車で30分、娘の家まで20分の便利さに満足している。ワシントン州は私の第2の故郷であり、この先何があってもこの地にしがみついて離れようとは思わない。というのは、浅はかにも私はこの素晴らしいワシントン州を1度脱出したからだ。

長雨と薄暗い冬の毎日に嫌気がさした夫への最大の考行と意気込み、アリゾナ州グッドウィル(マリナーズの冬季キャンプ地、ピオリアのそば)に移った。当時住んでいた家も売って、モルタルの塀とヤシの木に囲まれた新興住宅地に新居を構えた。国際色豊かなシアトルに比べて、当時のアリゾナは白人とメキシコ人の町。東洋人に出会うことは珍しかった。スーパーの冷蔵食品の中に積まれたレンガほどの大きさの真っ白い塊が、メキシコ料理に使われるラードだと分かっ てカルチャーショックを覚えたものだ。はるか遠くの山々は茶色の岩山、そしてわずかな緑は人が植えた木々だった。

2、3カ月住んだ後に見つけた私たちにとって唯一の憩いの場所は、住宅地の真ん中に造られた大きな噴水の前のベンチだった。週末はこの噴水の前で水を見つめて半日を過ごした。枯れ落ちることのない針葉樹が鬱蒼と茂り、湖や川、海に囲まれたノースウエスト、毎日雪を頂く山々を見ながら暮らせるワシントン州シアトル周辺の素晴らしさは、離れてみて初めて分かった。

乾燥し切ったアリゾナで心も体も干からびかけた私たちは、たった6カ月離れ住んだだけで、すっかりホームシックになってしまった。「帰ろう」と、ふたり同時に言ってうなずいた。せっかく買った新居が売れるのも待たずに大きなUターンをしたのだった。

緑の少ないカリフォルニア州を経てオレゴン州に入った途端、目に入る葉のたわわな木々に改めて感動したのは言うまでもない。空気もみずみずしい。I-5で「Welcome to Washington」のサインを見た途端、夫婦共々、ふるさとに帰り着いた感動にうち震えた。今から17年前、5月の終わりのことだ。

(M.P/ワシントン州バンクーバー)