大人気ブロードウェイ・ミュージカル、シアトルに上陸!
取材・文:西東円佳
ブロードウェイのロングラン作品の一つであり、1997年にトニー賞6部門を受賞したジャズ・ミュージカル「シカゴ」。今も世界中で高く評価され続けているこの名作が11月2日(日)まで フィフス・アベニュー・シアターにて上演中されました。その魅力について、同作の音楽監督として活躍中のアンディー·チェン氏に話を伺いました。
「シカゴ」の作品紹介
1975年にブロードウェイで初演された「シカゴ」は、1920年代の禁酒法時代、いわゆる「ジャズ・エイジ」のシカゴを舞台にしている。劇中歌『オール・ザット・ジャズ(All That Jazz)』を耳にしたことがある人も少なくないだろう。当時は伝統的な女性観に縛られない生き方を求める「フラッパー」と呼ばれる女性たちが徐々に増え始め、メディアのゴシップが世間をにぎわせていた時代だった。「シカゴ」の主人公は、殺人罪で収監された2人の女性、スターを夢見る主婦ロキシー・ハートと元ナイトクラブのスター、ヴェルマ・ケリー。彼女たちはメディア操作を得意とする悪徳弁護士ビリー・フリンの助言を受け、有名になり無罪を勝ち取ろうと行動を起こす。その過程で当時の腐敗した司法制度や名声を追い求める人間の滑稽さが浮き彫りになる。
ジャズやタンゴを基調としたエネルギッシュな音楽が特徴的な本作は、大人向けミュージカルであると同時に、アメリカ文化を理解するうえでも一度は観ておきたい作品の一つだ。
観劇レポート
10月24日のオープニングナイト、会場はすでに開演を心待ちにする観客で溢れていた。注目していた「セル・ブロック・タンゴ(Cell Block Tango)」は女囚たちがなぜ投獄されたのか、どんな心情でいるのかを描く情熱的なタンゴ調のナンバー。曲が始まると同時に、観客から歓声が沸き起こり、ステージには熱い視線が注がれた。女囚たちの怒りや主張、抑圧からの解放を刻むように踏み鳴らされるヒールの響きや、犯した罪に対する複雑な感情を宿した鋭いまなざしに圧倒された。キャストたちが『シカゴ』を心から愛していることが、舞台の隅々から伝わってくる。彼らはそれぞれのキャラクターに独自の色を与え、作品に新たな生命を吹き込んでいた。
東洋の雰囲気漂う歴史ある劇場にて
その情熱を、全ての曲を指揮した音楽監督のアンディー・チェン氏が音楽で導いていく。キャストや観客との掛け合いを楽しむ演出によって、演者・観客・オーケストラが一体となり、2時間半があっという間に過ぎた。終演後、観客から大きな拍手とスタンディングオベーションが送られたのはいうまでもない。
自分の名前が新聞に載り、努力が報われた瞬間のロキシー
6人の女囚たちが魅せる、迫力ある「セル・ブロック・タンゴ」
弁護士ビリーをめぐる女囚たちの魅惑的なナンバーに注目
「先人が築いた真実を尊重し、継承していきたい」
アンディー・チェン氏インタビュー
アンディー・チェン◾アジア系アメリカ人。️ニューヨーク州北部の小さな町で育つ。音楽監督の修士号を取得後、信頼と機会を与えてくれた人々との出会いがきっかけで「シカゴ」の全米ツアーに2年間参加。今年度から音楽監督に就任。「まるで夢がかなったような、言葉にならない思いだ」と語る。
演奏を通して表現する「掛け合い」とは
私の最大の責任は、「シカゴ」の作家たちの意図と、長年にわたって受け継がれてきたこのリバイバル公演の創造性を守ることです。このショーは、照明や美術、音響、テンポ、音楽といったあらゆる要素が調和し、舞台上で一つになって息づいています。先人が築き上げた世界観を尊重しつつ、観客がより深く物語を体感できるように演出しています。楽譜そのものは明快でありながら、想像を広げる余白を残すよう心がけています。
バンドがショーの中でこれほど生き生きと息づくミュージカルは多くありません。キャストやミュージシャン、そして舞台裏のスタッフが一体となり物語を紡いでいます。そんな掛け合いや呼応の瞬間にこそ、このショーの「魔法」が宿るのです。ぜひその瞬間を見つけてみてください。きっと心に残る時間になるはずです。
ショーが「一体化」する瞬間とは
今年のツアー初日、ワシントン州ヤキマで行われたプレビュー公演は、忘れがたい時間でした。観客の皆さんは実感していないかもしれませんが、会場にいることで生まれる音の響きや感情の反応が、キャストの演技に影響を与え、物語の緊迫感をいっそう高めてくれます。観客もまた、このショーを完成させる一員なのです。そのエネルギーを、私たちは音楽を通してお返ししたいと考えています。
人間味あふれる仕事
音楽監督という仕事は、多くの課題を抱えていますが、それ以上にやりがいのある仕事です。公演運営やスタッフの調整を行いながら、週に7、8回、2時間半に及ぶ上演を指揮し続けるという、肉体的にも厳しい役割です。それでも、仲間のアーティストたちが懸命に取り組む姿を見守り、彼らが最高のパフォーマンスを発揮できるよう、その力を引き出せることが、何よりの喜びです。
シアトルの皆さんにメッセージ
「シカゴ」は愛と情熱の結晶です。そして強いメッセージ性を持つ作品でもあります。風刺と繊細さを基調に、マスメディアの力やセレブリティーにまつわる幻想を鋭く描くこの作品は、舞台上の華やかさを楽しむだけでなく、どの時代にも響く深い気づきや共感をもたらしてくれます。
この音楽と物語をシアトルの皆さんと共有できることを光栄に思います。どうぞお楽しみください。
日程:開催中~11月2日(日)
場所:The 5th Avenue Theatre
1308 5th Ave., Seattle, WA 98101
料金:$55.60〜
問い合わせ:☎206-625-1900、guestservices@5thavenue.org
チケット・詳細:www.5thavenue.org


















