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「猿の惑星:聖戦記」戦争はなぜ起きるのか

『War for the Planet of the Apes』(邦題『猿の惑星:聖戦記』)

戦争はなぜ起きるのか

写真クレジット20th Century Fox

11年にリブートした『猿の惑星』シリーズ、『猿の惑星:創世記』、14年『猿の惑星:新世紀』に続く最終章が本作。68年のデビュー作から数えると9作目となるが、旧作とは全く違った内容で、三部作として作られているので、前二作を見てからの鑑賞をお勧めしたい。猿の生き方を通して人間のあり方を考えるという作品のテーマに触れることができると思う。

前作で、人間に根強い恨みを持つ猿が人間に闘いを挑んだことが原因となり、人間から追われる状況に追い込まれた猿の一群。人間の言葉を話し、知的成長を遂げたリーダーのシーザー(アンディ・サーキス)は、戦争を望んでいないことを人間に伝える。だが、彼らを執拗に追うアルファ・オメガ隊の大佐(ウディ・ハレルソン)がシーザーの家族を殺害するに及んで、非戦を唱えていたシーザーは復讐心に囚われる。仲間たちを遠方へと逃す一方、忠実な側近らの静止も聞かず、大佐を殺すために北へ向かうシーザー。ついに彼は大佐が築いた要塞に辿り着き、驚くべき事実と光景を目にする。

Warがタイトルなので、多くの戦闘シーンを予想していたのだが、内容はむしろ戦争がなぜ起きるのか、そのメカニズムの表現であったように思う。猿の仲間割れが起き、大佐を助ける側に回った猿たちが抱く怖れと怯えや、私怨でリーダーの責任を全うできなくなるシーザーの内面の葛藤。そして、猿がいる限り人間の未来はないと唱える大佐の狂信的行動の数々。彼が巨大な壁作りに妄執しているあたりに米国の現状を投影する時代性も感じられた。

前半はやや重い内容で進んでいくが、後半は名作『大脱走』を思わせるテンポの良い演出で面白く見せ、2時間以上という長さを感じさせず、アップに耐える猿たちの表情が巧みに表現されていたことにも、改めて感嘆させられた。夏恒例のハリウッド大作といえば、単純なプロットを特撮と過剰なアクションの連続で見せるという作り方が近年の傾向だと思うが、本作はそんな作品群の中では語るべき内容があり、娯楽映画としては見ごたえあった。

監督は前作と同じ『クローバーフィールド』シリーズを監督したマット・リーヴス。脚本はリーヴスとマーク・ボンバック。西部劇映画から戦争映画まで多くの名作を参考にしたというだけあって、映画ファンには特に楽しめる作りになっている。

上映時間:2時間20分。シアトルはシネコンで4DX、3D、スタンダード各バージョンで上映中。

[新作ムービー]

映画ライター。2013年にハワイに移住。映画館が2つしかない田舎暮らしなので、映画はオンライン視聴が多く、ありがたいような、寂しいような心境。写生グループに参加し、うねる波や大きな空と雲、雄大な山をスケッチする日々にハワイの醍醐味を味わっている。