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バンクーバーで朝鮮文化と遭遇

先月号に登場した韓国系移民のジェームズのおかげでキムチにはまっている。バンクーバーの韓国系食料品店「Hマート」やジェームズ行きつけの料理店のキムチは本格的だし、彼自身もうまいのを作る。夜食でさえお茶漬けの代わりにキムチが食べたくなり、体に悪いと思いつつもついキムチを皿に取り、冷凍しておいたご飯をチンしてしまう。でもキムチは納豆と同じく、最近、健康食として注目されている発酵食品なのだ。また、彼が育てた香りの強いエゴマの葉にニンニクや醤油、ゴマ、塩、ショウガ、トウガラシなどを詰めて重ねて炊いた「ケンニプ・チョリム」も乙な味。ビビンバに使われる赤い唐辛子味噌「コチュジャン」にも出合った。それを少しつけるだけでキュウリや白菜など生野菜がおいしく食べられる。

左から、カナダ人のゲリー、スティーブ、筆者
左からカナダ人のゲリースティーブ筆者

多趣味のジェームズだが、伝統朝鮮太鼓もそのひとつ。折しもこの夏バーナビー市で、「韓国伝統文化祭」が行われた。この時、彼が所属する太鼓グループが開会式前に演奏しながら会場を練り歩くことになり、彼の友人でカナダ人のゲリーと私が急遽、丈10フィートもあるバナーを振りかざして先導する役を引き受けたのだ。

後で知ったのだが、このイベントは8月15日の終戦日が韓国独立記念日「光復節」に指定されていることに関連して行われたのだった。日本の統治が終焉を迎えた日を記念した行事に、日本国籍の私とカナダ国籍のゲリーがバナーを振って支援したことの偶然にあっと気づいた愚かな私だが、さらに考えればこれは、一時期背を向けていた日本と韓国・カナダが今は極めて平和な関係を享受していることの証なのだ。

因みに韓国は朝鮮戦争勃発の折、カナダが南朝鮮支援のため米・英に次ぐ26,971人の兵士を派遣したことに感謝している。一方一部の地元韓国系グループでは、祭りの会場となった市営公園に慰安婦像を設置する運動を行っている事実もあり、日系グループがこれに反対している。バーナビー市議会ではこの要求を「不和が生じる可能性のある問題(potentially divisive issue)」と考え、まず当事者間で平和裏に話し合うことをすすめている。

ジェームズの出現がきっかけで、私の持つ対韓国・朝鮮のイメージは変わった。また日本が、多くの貴重な文化要素を学んだ朝鮮半島を35年間統治したことの是非についても考えさせられる機会を得た。平和な関係においても歴史が時々頭を持ち上げることを身近に知る経験であった。

[カナダで再出発]

滋賀県生まれの団塊世代。京都産業大学卒業後日本を脱出。ヨーロッパで半年間過ごした後シアトルに。在シアトル日本国総領事館に現地職員として39年間勤務。政治経済や広報文化などの分野で活躍。ワシントン大学で英語文学士号、シアトル大学でESL教師の資格を取得。2013年10月定年退職。趣味はピックルボールと社交ダンス。