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「ふらっと」立ち寄れる安心を:FLATが目指す日本人コミュニティー支援〜私たちの命を守るヘルスケア

がん患者だけでなく、悩める人たちの心身の健康をサポート。現在のアメリカの医療環境で今、私たちができることを探ります。

「ふらっと」立ち寄れる安心を:
FLATが目指す日本人コミュニティー支援


在米日本人を結ぶFLAT

「FLAT・ふらっと」は、2023年 4月にニューヨークで設立されたNPO法人です。日本語を話す在米の医療従事者と患者をつなぐネットワークづくりを通して、日本人コミュニティーを支援することを目的としています。FLATという名称には、「誰もが同じ(flat=平らな、均一な)目線で、ふらっと立ち寄れる場所にしたい」という思いが込められています。

このNPOを共同で創設したブロディー愛子さんがこれまで代表理事を務めてこられましたが、2025年からは私、山田悠史が後を引き継ぎ、代表を務めることとなりました。私は、ニューヨーク市内の大学病院で老年科医として勤務しています。日々、高齢の患者さんと向き合う中で、アメリカに暮らす日本人の中には、社会とのつながりが薄く、孤立していたり孤独を抱えたりしている人が少なくないことを知りました。

同世代の友人が日本に帰国したり、配偶者を亡くしたり、お子さんが結婚して別の州に移り住んだりといった出来事が重なり、気づけば人間関係が減っていたという話をたびたび耳にしたのです。

日本語で助けあう場をつくりたい

現在、ニューヨーク市内には少なくとも2000人の日本人高齢者が暮らしており、そのうち約1000人は英語で自由にコミュニケーションを取ることができないといわれています。少し視野を広げると、ニューヨーク全体で約5万人の日本人が住んでいるとも推計されます。実際には、もっと多い可能性もあるでしょう。その中のどれだけの人がアメリカの医療システムや保険制度を十分に理解し、医療機関で安心して意思疎通できているのでしょうか。

日常会話では問題なく英語を使えていても、医療の場面となると難しさを感じることもあるかもしれません。世界中から人が集まる大都市ニューヨークですが、日本語による医療リソースやサポートは限られています。日本人コミュニティーにとっては「都会の顔をした村」のような場所なのかもしれません。電車やUberで物理的には移動しやすくても、困ったときにどこに相談すればよいのかがわかりにくい情報面での不便さを抱えた場所なのです。

地域によっては、さらに日本語で受けられる医療や相談のリソースが限られていることも考えられます。そうした現状を受け、私たちは「困ったときに、少しでも医療リソースとの架け橋になれたら」という思いで、活動を続けています。

アメリカでの暮らしを支えあうために

人はどこに住んでいても時に病気になります。がんのような深刻な病にかかると、多くの人が「まさか自分が」と思うものですが、成人の3人に1人ががんを発症する時代です。ただし、医学の進歩により、適切な治療を受けることで、長期にわたって生活を続けられるようにもなっています。実際、アメリカでもがんの治療を受けながら生活する方や、ほかの慢性疾患を抱えながら日々を送る日本人の方が多くいます。また、年齢を重ねれば、誰もがやがて高齢者となり、高齢者ならではの悩みや困りごとを抱えるようになります。

現在FLATでは、がん患者や、膠原病などの自己免疫疾患患者のためのサポートミーティング、高齢者が気軽に集まっておしゃべりできるシニアカフェ、ストレス軽減に役立つ陰ヨガなど、さまざまなプログラムを提供しています。いずれも参加費は無料で、医療専門家の話を聞く機会もあります。すべてオンラインですので、全米のどこからでも参加可能です。たとえ住んでいる地域が違っていても、同じような体験をした在米日本人同士が、知識や情報を日本語でシェアしたり、ざっくばらんな会話を楽しんだりすることで、日々の暮らしを支える力になれるのではと考えています。

また、医療専門家による日本語のオンラインセミナーや、アメリカで発行する日本語情報誌への寄稿を通して健康情報の発信も行っています。こうした活動を通じて、少しでも病気や不安を抱える人の力になりたいと願っています。まずはぜひ、FLATのウェブサイト(www.flatjp.org)を訪れて、役立ちそうなサービスがないかご確認ください。また、「このようなプログラムがほしい」といった提案、ボランティアへの参加も大歓迎です。どうぞお気軽にご連絡ください!

山田悠史
米国老年医学専門医。マウントサイナイ医科大学老年医学・緩和医療科所属。在米日本人の生活と医療を支えるNPO「FLAT・ふらっと」代表。ニューヨークで臨床医として活躍する傍ら、日本のメディア「NewsPicks」公式コメンテーター、新型コロナワクチンの正しい知識の普及を行う「コロワくんサポーターズ」の代表を務める。また、講談社ウェブマガジン「mi-mollet(ミモレ)」での連載や、音声コンテンツ「医者のいらないラジオ」配信など、多岐にわたって活動。2023年1月に上梓された『健康の大疑問』(マガジンハウス新書)が絶賛発売中。

 

FLAT・ふらっと
2013年から続く乳がん・婦人科がん患者サポート団体のJapanese SHAREが、2023年4月1日より、ニューヨークを拠点とした非営利団体、FLAT・ふらっとに活動の場を移行。乳がん・婦人科がんのほか全てのがん患者、高齢者、スペシャルニーズのある子どもの保護者を対象とし、在米日本人コミュニティーを健康と医療の面から支える。