Home アメリカ生活 Dr. 松浦の診察室から 第12回 発達や行動の相談...

第12回 発達や行動の相談、その後どうつながる?〜Dr.松浦の診察室から

小児科医が臨床経験と知見をもとに、子育て中の皆さんの不安や迷いに寄り添う情報をお届けします。

第12回 発達や行動の相談、その後どうつながる?

子どもの発達や行動について、「少し気になるけれど、どこに相談すればよいのだろう」と悩む保護者は少なくありません。言葉の発達がゆっくり、落ち着きがない、かんしゃくが強い、そのような心配があるとき、多くの場合、最初の相談先になるのは、かかりつけの小児科医や家庭医です。では、かかりつけ医に相談した後、子どもはどのように専門医療や支援につながっていくのでしょうか。今回は、その一般的な流れについてお話しします。

検診で行われるチェック

アメリカでは、Well-Child Visitと呼ばれる乳幼児・小児健診の中で、子どもの成長や健康状態だけでなく、発達や行動についても確認されます。生後3日から5日ごろの健診から始まり、1、2、4、6、9、12、15、18、24、30カ月、3歳以降は毎年の健診で、身長・体重、予防接種、栄養、睡眠などとあわせて、発達の様子も見ていきます。この中で行われるのが「発達スクリーニング」です。短時間の問診や質問票を通して、言葉、運動、人との関わり、遊び方、日常生活での困りごとなどを大まかに確認します。スクリーニングは診断ではなく、「もう少し詳しく見たほうがよいか」「支援につなげたほうがよいか」を判断するために行われます。

スクリーニング後の3つの道筋

①かかりつけ医で経過を見る場合
今すぐ専門機関に紹介するほどではないものの、少し注意して見ていきたい場合には、かかりつけ医がそのままフォローします。通常の健診より短い間隔で再診することもあります。言葉が増えているか、園や学校での様子がどう変わったか、家庭での困りごとが続いているかなどを確認します。

②療育や学校支援につなげる場合
かかりつけ医で経過を見ながら、同時に療育や学校支援につなげることもあります。0歳から3歳未満までは、Early Interventionと呼ばれる早期支援プログラムがあり、言葉、運動、食事、社会性などについて評価を受けます。支援の必要性が認められれば、必要に応じた支援サービスにつながります。

3歳以降は、学区を通した評価が行われ、必要に応じて、IEP(Individualized Education Program、個別教育プログラム)につながることがあります。ちなみに、ワシントン州では、Early Interventionや学区でのIEP評価は、医師の紹介がなくても保護者が直接申し込め、評価や支援の多くは無償ですが、一部のサービスについては保険請求ができる場合もあります。

また、上記の公的な支援とは別に、または同時に、かかりつけ医が理学療法、作業療法、言語療法などの民間の療育施設へ紹介状(Referral)を出すこともあります。この場合は、保護者が療育施設に連絡して予約を取り、基本的には医療保険、場合によっては自費で療育を受けます。

③専門医療機関へ紹介される場合
発達の遅れが明らかな場合、行動面の困りごとが強い場合、自閉スペクトラム症やADHD(注意欠如・多動症)などが疑われる場合には、専門医療機関へ紹介されることがあります。専門外来では、より詳しい問診、観察、発達検査、心理検査などを通して、診断や支援方針を検討します。

専門医療機関では誰が診るのか

③で紹介を受けた場合、発達や行動を専門に診る医師には、いくつかの専門があります。

発達行動小児科医は、小児科の中で発達や行動を専門に診る医師です。私自身もこの領域に所属しています。自閉スペクトラム症、ADHD、知的発達症、学習面の困難に加えて、言葉、運動、食事、睡眠など、子どもの体も含めた発達を広く見ていきます。必要に応じて、発達検査、遺伝検査、血液検査、画像検査などを検討することもあります。

児童精神科医は、子どものこころ、感情、それに伴う行動を専門に診る医師です。自閉スペクトラム症やADHDも診ますが、不安症、うつ病、双極症、強迫症、トラウマ関連の症状など、メンタルヘルスの問題が目立つ場合に関わることが多く、薬物療法の調整に長けています。

そのほか、脳性まひがある場合にはリハビリテーション科、てんかんがある場合には小児神経科、自閉スペクトラム症の評価や支援に特化したセンターなど、子どもの状態に応じて別の専門機関につながることもあります。

スクリーニングと専門検査の違い

かかりつけ医のスクリーニングは、限られた診察時間の中で、発達や行動の気がかりを拾い上げるためのものです。一方、専門外来での検査は、子どもの特性をより詳しく理解し、診断や、その後の支援方針につなげるために行われます。たとえば、自閉スペクトラム症の評価では、専門検査に数時間かかります。つまり、かかりつけ医での評価は「入り口」、専門外来での評価は「より詳しく理解するための評価」と考えるとわかりやすいでしょう。

困ったときは、まず相談を

発達や行動の相談をしたからといって、すぐに診断がつくわけではありません。地域や時期によっては、専門外来の受診までに半年以上かかることもあります。また、専門外来に紹介されたからといって、必ず大きな問題が見つかるわけでもありません。もし気になることがあるときは、抱え込まず、早めにかかりつけの小児科医や家庭医に相談してみましょう。早めに相談することで、経過を見守るだけでよいのか、療育や学校支援につなげたほうがよいのか、専門医療機関で詳しく見たほうがよいのかを、子どもの様子に合わせて考えていくことができます。

『発達障害を正しく知る』(幻冬舎新書)
松浦有佑さんの新刊が3月25日に発売されました。発達障害をめぐる誤解や不安について、最新の研究や世界の知見をもとにわかりやすく解説した一冊です。シアトルの紀伊國屋書店ほか、オンライン書店でも購入できます。
詳細:www.gentosha.co.jp/book/shinsho

松浦 有佑
米国小児科専門医。ワシントン大学シアトル小児病院小児発達行動専門フェロー。日本医師免許取得後、日本国内初期研修を経て米海軍病院で勤務。アメリカ医師免許を取得し、2021年からニューヨークのマウントサイナイ病院で小児科専門医レジデンシーを開始。同時にジョンズホプキンス大学で公衆衛生修士課程を専攻。ともに修了し、2024年より現職。NHKワールドや在米邦人チャンネルさくらラジオでラジオドクター等の出演歴あり。共著には『全く英語が話せなかった私のとっておき医療英語勉強法』『ぼくらのリアル!メディカル英会話フレーズ集』がある。2026年に『発達障害を正しく知る』(幻冬舎新書)を刊行。