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患者と医師の関係のあり方~女性の命を守るヘルスケア Vol.11

女性の命を守るヘルスケア Vol.11

アメリカ生活中に乳がん、卵巣がん、子宮がんを経験する患者の心に寄り添い、悩める女性たちをサポートするSHARE 日本語プログラムによる寄稿シリーズ。現在のアメリカの医療制度で今、日本人の私たちができることを探ります。

第11回 患者と医師の関係のあり方

先日、日本の乳がん学会のセミナーを視聴する機会がありました。そのつながりで、これからの患者のアドボカシーのあり方について、医師と患者を含む参加者たちと討論をする会議にも参加しました。

その中で、アメリカの学会などでは多くの女性医師が活躍の場を与えられているのに、日本ではまだ少ないという指摘がありました。ある男性医師は、このような意見が出たことに驚いた様子ではあったものの、これから日本も考えていかなければならない課題だと発言していました。また別の男性医師も、その指摘に戸惑いを隠せない様子だったのが印象的でした。そのほかに、アメリカでは患者が医師にとってのお客さんのような印象を受けるという話題もありました。国民皆保険制度の中で医療を受ける日本と、各自で異なる種類の健康保険に加入するアメリカでは、医療従事者の態度も違うのかもしれないと感じました。

日本では臨床試験に参加してくれる患者が集まらないという問題点も医師側から提示されましたが、患者側からは臨床試験に関する十分な説明を受けられないとの意見が出ていました。まだ、研究材料にされるという悪いイメージが拭い切れないようです。 アメリカでは治験と言われる新薬の効果を計るための研究などでもきちんとした説明を受け、よく理解したうえで、自分の協力した研究が次世代の役に立つのであればと、承諾する患者が少なくありません。私自身、アメリカのリサーチ・ホスピタルで乳がんの治療を受けた際、待合室で研究員から説明を受け、「これから血液検査で摂取するあなたの血液を、私たちの研究にも使わせてもらえませんか?」と協力を依頼されたことが何度かありました。また、治療が終わってからも、マンモグラムを使った新しい研究などに参加しています。

患者に臨床試験への参加を承諾してもらうためには、医師側から納得のいく説明が不可欠です。その研究がどんなに崇高かということだけで協力を得るのは難しいでしょう。医師側もその現状に気付く必要があり、どのようにしたら納得してもらえるのか、患者の目線で考えるべきかと思われます。患者会の持つ影響力を知らない医師も多く、全ての問題が自分たち医師だけで解決できると考えているようにも見受けられます。しかし、このような場面で手助けができるのは、患者のアドボカシーを推進する患者会です。治験で命を救われた経験者などの協力の下、医師側と手をつなぐことで、患者と医師、双方にとって大きな助けになるのではないでしょうか。東京だけでも乳がんの患者会は200ほどあります。それらをまとめる機関がまだないなど問題点も見られますが、患者会を通して患者と医師の距離が縮まることで、これからの医療のあり方が良い方向に変わっていくのではないかと期待しています。

アメリカには相手が誰であれ自分の意思を主張する文化があり、患者も医師と対等に自分の意見を伝えます。しかし、日本人は相手の立場を考慮したうえで、自分の意見を尊重すべきか否かを決めるところがあるようです。自分の考えを押し付けがちな医師もそうですが、医師任せの患者が多いことにも危惧を抱いています。新型コロナの影響で、テレメディスンが取り入れられるようになってから、アメリカのとある記事では「担当医とコミュニケーションがうまくいっていないと感じている患者は、医師の替え時だ」とも報じています。日本人は穏便に物事を解決しようとする方が多いため、扱いやすい患者だという誤解を与えているのではないかという懸念もあります。自分の健康を守るためには、勇気を持って意見を主張することが大切です。

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ヘルプライン:☎347-220-1110(月~金6am~2pm)
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1976年にニューヨークでスタートした非営利団体のSHAREキャンサー・サポートが母体。同団体の正式日本語プログラムとして、アメリカで暮らす日本人、日系人の乳がん、卵巣がん、子宮がん患者およびその家族の精神的不安を取り除くためのピアサポートと、アメリカの最新医療事情を日本語で提供する。

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