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【特別編】お正月は要注意! お餅などによる窒息事故の予防と対策〜女性の命を守るヘルスケア

女性の命を守るヘルスケア Vol.27

アメリカ生活中に乳がん、卵巣がん、子宮がんを経験する患者の心に寄り添い、悩める女性たちをサポートするSHARE 日本語プログラムによる寄稿シリーズ。現在のアメリカの医療制度で今、日本人の私たちができることを探ります。

【特別編】お正月は要注意! お餅などによる窒息事故の予防と対策

ソイソース読者の皆さん、こんにちは。今回は特別編として老年医学専門医の山田悠史が、喉に食べ物を詰まらせる「窒息」について、予防と対策を説明していきます。 日本ではお正月になると、高齢者がお餅を詰まらせて亡くなるというニュースが後を絶ちません。ニュースで聞いている分には他人ごとのように感じるかもしれませんが、実は誰にでも起こり得ることなのです。お餅は、誰もが想像しやすい窒息の原因になる食品ですが、アメリカでは何に注意すべきだと思いますか?

窒息が起きやすい食べ物とは?

基本的には大きくて、空洞のない食べ物には窒息のリスクがあります。ステーキやホットドッグ、飴などでも、よくかまずに飲み物と一緒に一気に飲み込んでしまうと、そのリスクは高まると言えるでしょう。

また、パンも窒息に気を付けたい食べ物のひとつです。パンは空洞だらけではないかと思うかもしれませんが、ミルクやコーヒーなどの水分と一緒に摂取することで、水を含んだスポンジのように膨れ上がり、リスクが高まります。ケーキとコーヒーの組み合わせも同様です。

食べ物が食道へ正しく送り込まれていれば、窒息が起こることはありません。しかし、食道の前方に空気の通り道である気管がつながっており、そこに誤って食べ物が入り込んでしまうと、窒息が起きるのです。この気管の入り口にはふたが付いていて、飲み込みの際にはこのふたがきっちりと閉まり、窒息や誤嚥ごえん を防いでくれています。ただ、この閉まりが悪かったり、持病などの影響でスムーズに閉められなくなったりすると、窒息や誤嚥が生じてしまいます。

窒息を防ぐには?

それでは、どのようにすれば窒息を防げるのでしょうか。これまで例に挙げた食品を食べないというのは、必ずしも正解ではありません。「リスクが高い」とはいえ、それらを全て避けてしまっては、食の楽しみが薄れてしまいますよね。

まずは、どのような食べ方がリスクになるのかを知っておくことから始めましょう。前述の通り、あまりかまずに飲み物で一気に流し込む食べ方は窒息のリスクを高めます。よく咀そ嚼しゃくをして、食べ物と飲み物は別々に摂取するのが安全です。飲み物に関しては、アルコールもリスクになります。「お餅を食べながら日本酒」というのは、高齢者にとっては窒息のリスクの高い食べ方なのです。

また、前のめりになってかき込むような食べ方もリスクが高まります。なぜなら空気の通り道は食べ物の通り道の前方にあるので、重力がかかり、誤嚥を招いてしまうのです。姿勢良く、ゆっくり食べるようにしましょう。

おしゃべりをしながらの飲食も避けたいところ。話をしている間は空気の通り道をふさぐためのふたが開いているからです。窒息を防ぐには、いったん食べ物を飲み込んでから話をすることが大切です。

それから、高齢者が食べている間によく咳をしたり、むせたりする場合は注意が必要。あらかじめ食べ物を細かく切っておくなどの工夫も有効です。

窒息のシーンに遭遇したら

もし身近で窒息が起こってしまった場合は、すぐに救急車を呼んだうえで、いくつかの応急処置を行ってください。

本人が咳き込んでいるなら、詰まらせた物が出てくる可能性があるので、咳を続けてもらうようにします。それができなければ、「Five and Five」などと呼ばれる処置が有効であると考えられています。

この処置は、当事者の背後に立ち、前かがみにしたうえで背部から連続で5回ほど叩打する(背部叩打法)、または背後からお腹に手を回し、握り拳を作った手で腹部に5回ほど圧を加える(腹部突き上げ法)という2つの方法があります。できない場合は、急いで応援を呼ぶこと。レストランであれば、講習を受けたスタッフがいることも考えられるからです。

リスクの話ばかり書いてしまいましたが、食べ物による窒息のリスクを知り、しっかりと防いだうえで、皆さんが楽しいお正月を迎えられることを願っています。

山田悠史■米国老年医学専門医。マウントサイナイ医科大学老年医学・緩和医療科所属。ニューヨークで臨床医として活躍する傍ら、日本のニュース・メディア「NewsPicks」の公式コメンテーター、新型コロナワクチンの正しい知識の普及を行う「コロワくんサポーターズ」の代表を務める。また、講談社ウェブ・マガジン「mi-mollet(ミモレ)」での連載や、音声コンテンツ「医者のいらないラジオ」配信なども行い、多岐にわたって活動。2022年6月に上梓された『最高の老後』が絶賛発売中。

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1976年にニューヨークでスタートした非営利団体のSHAREキャンサー・サポートが母体。同団体の正式日本語プログラムとして、アメリカで暮らす日本人、日系人の乳がん、卵巣がん、子宮体がん、子宮頸がん患者およびその家族の精神的不安を取り除くためのピアサポートと、米国医療事情を日本語で提供。

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