機械翻訳の精度は飛躍的に向上。でも、よく読むと「あれれ?」な部分も。ちょっとしたコツで見違えるほど自然な日本語に直せる技を紹介します。
第46回 ||最終回|| 映画のセリフを訳してみよう
【今回の例文】
Charlotte: Twenty-five years. That’s a…
Charlotte: Well, it’s impressive.
Bob: Well, you figure you sleep one-third of your life.
Bob: That knocks off eight years of marriage right there.
Bob: So you’re down to 16 and change.
Bob: You’re just a teenager at marriage.
Bob: You can drive it, but there’s still the occasional accident.
(出典:Lost in Translation)
Charlotte: Well, it’s impressive.
Bob: Well, you figure you sleep one-third of your life.
Bob: That knocks off eight years of marriage right there.
Bob: So you’re down to 16 and change.
Bob: You’re just a teenager at marriage.
Bob: You can drive it, but there’s still the occasional accident.
(出典:Lost in Translation)
【機械翻訳】
シャーロット:25年? それは…
シャーロット:すごいですね。
ボブ:人生の3分の1は寝ている計算ですよね?
ボブ:そうすると結婚生活が8年も短くなるんですね。
ボブ:つまり、16年ちょっとになるんですね。
ボブ:結婚したばかりなのにまだ10代ですね。
ボブ:運転はできますが、それでもたまに事故は起こります。
(Google翻訳)
シャーロット:すごいですね。
ボブ:人生の3分の1は寝ている計算ですよね?
ボブ:そうすると結婚生活が8年も短くなるんですね。
ボブ:つまり、16年ちょっとになるんですね。
ボブ:結婚したばかりなのにまだ10代ですね。
ボブ:運転はできますが、それでもたまに事故は起こります。
(Google翻訳)
↓
【修正後】
シャーロット:25年って…
シャーロット:長いわね
ボブ:人生なんて3分の1は寝ているんだ
ボブ:25年のうち8年だよ
ボブ:だから起きていたのは16年ぽっち
ボブ:結婚においては十代の若造さ
ボブ:運転初心者なんだ 事故だって起こすよ
シャーロット:長いわね
ボブ:人生なんて3分の1は寝ているんだ
ボブ:25年のうち8年だよ
ボブ:だから起きていたのは16年ぽっち
ボブ:結婚においては十代の若造さ
ボブ:運転初心者なんだ 事故だって起こすよ
機械翻訳の精度は飛躍的に向上し、ビジネス文書なら及第点に届くようになりました。ところが、ルールの細かい映像翻訳では、まだ人の手に及びません。今回は映画『ロスト・イン・トランスレーション』のセリフに挑戦してみましょう。
今回のポイント✅
① 原文を正確に解釈する
このシーンは、結婚生活25年を迎えたボブが倦怠期に陥り、出張先で出会った若いシャーロットに自身の結婚観を話している場面です。「人生の3分の1は寝ているのだから、25年結婚しているといっても、起きている時間は16年と少し。人間の一生に当てはめれば、運転免許を取ったばかりの10代の若者で、そりゃあ時々は事故も起こすさ(=道も外すさ)」という原文のトーンを再現す
ることが重要です。
② 字数は極力少なく
映像翻訳には、原則「1秒につき4文字」というルールがあります。それ以上の文字数になると、視聴者が読み切れなくなってしまうからです。この字数制限を守るため、原文から離れても構いません。たとえば、修正訳では、Thatknocks off eight years of marriage right there. を
「(結婚生活)25年のうち8年だよ」と原文にない25年をあえて補っています。
③ 唯一の正解はない!
映像翻訳に唯一の正解はありません。訳者の数だけ訳文が生まれます。字数などの原則さえ抑えていれば、自分の感性に沿って自由に訳せるところが魅力ですね。そのためには、原文の正しい解釈が欠かせません。
まとめ
本コラムは今回が最終回となります。4年半にわたりご愛読いただき、どうもありがとうございました。来年からはさらにバージョンアップした新連載がスタートします。どうぞお楽しみに!

















