シアトルの知恵ノート
知っておくと暮らしが豊かになるヒントを、シアトルで活躍するさまざまな専門家の方に聞きます。
白身魚から生まれた日本の知恵、カニカマ
今や世界中で愛されるカニカマ。本物のカニではないのに、風味と食感を忠実に再現し、お寿司やサラダなど幅広いメニューに登場します。実はこのカニカマ、日本が誇る食品技術の結晶であり、しかも健康的で良質なたんぱく源としても高く評価されています。ここでは、身近なカニカマの魅力を少し掘り下げて紹介します。
オーシャンズキッチン
加藤 穣■1995年より株式会社極洋に勤務。海老の買付販売で世界中を飛び回り、20年以上にわたり水産業に携わる。2021年、現地法人社長としてシアトルに赴任。2023年、カニカマ生産会社オーシャンズキッチンを設立し社長となる。2025年春から本格生産を開始。趣味は料理とアウトドア全般。
Ocean’s Kitchen Corporation
7622 S. 188th St., Kent, WA 98032
☎️253-246-8391、contact@oceanskitchen.us
https://oceanskitchen.us
カニカマの原料「スケソウダラ」と独特の製法
カニカマの主な原料はスケソウダラという白身魚です。クセのない味わいのため加工に向いており、すり身の素材として理想的です。日本人には馴染み深い「ちくわ」や「かまぼこ」の原料としても知られています。オーシャンズキッチンでは、その中でも特に品質の良いアラスカ沖産のスケソウダラのみを使用しています。冷たい海で育つため身が締まりたんぱく質の質が高いのが特徴です。脂質が少ない分、カロリーを抑えつつも満足感を得られるため、健康志向の食材としても高く評価されています。
さらに注目したいのは、カニカマの製造方法です。層になった繊細な見た目から想像できるように、その製法は驚くほど精緻です。まず、すり身にでん粉や塩などの調味料を加えて練ると、魚肉中のたんぱく質が粘りを出し、弾力のある食感が生まれます。これがカニカマのプリっとした噛みごたえの源です。次に、すり身をシート状に伸ばしながら蒸し上げ、カニの身の繊維感を出すためにスリットを施し、表面に天然由来の紅色の着色をしながら成形します。こうして、まるで本物のカニの身のような見た目と香り、味わいが完成します。
言葉にすると簡単そうですが、すり身の品質を見極める目や温度・練り具合の細かなコントロールなど、熟練した職人技と最新鋭の機械が組み合わさって生産されています。
健康面でも優等生、高たんぱく・低脂質・低カロリー
カニカマは、見た目や味だけでなく、栄養面でも優れた食品です。100グラムあたりのカロリーは約95キロカロリーと非常に低く、それでいて高たんぱく(約11グラム)です。脂肪はほとんどなく、コレステロール値も低いため、ダイエット中の食材としても人気があります。さらに、スケソウダラ由来のたんぱく質はアミノ酸バランスに優れ、筋肉の維持や免疫力向上に役立つとされています。また、魚由来のたんぱく質は消化吸収にも優れ、胃腸に負担をかけにくいというメリットもあります。
「Surimi (すり身)」、世界に広がるカニカマ文化
カニカマは1970年代に日本で誕生しました。当初は本物のカニを再現するというよりも、魚肉をおいしく、そして楽しく食べてもらう工夫として生まれたそうです。1980年代には欧米やアジアへと輸出が広がり人気を博しました。その後、アメリカを含む各地で現地生産が始まりました。今では、カニカマを直訳した「Imitation Crab(イミテーション・クラブ)」と並んで、「Surimi(すり身)」がカニカマを指す世界共通語となっています。特にアメリカやフランスでは、さまざまな製品が定着し、「ヘルシーなシーフード・プロテイン」として、サラダや寿司ロール、スープなどに欠かせない食材になっています。
手軽でおいしく健康的。万能食材を生んだ日本の知恵
カニカマはそのままでもおいしく、加熱調理にも向いています。サラダに加えれば彩りと風味が増し、チャーハンや卵焼き、グラタンに入れるとコクが出ます。アメリカでは、ロール寿司の具材として圧倒的な人気を誇っています。冷やしても温めてもおいしく、冷蔵庫に常備しておくと何かと便利な頼れるたんぱく源です。
カニカマはただの代用品ではありません。良質な白身魚の栄養と、日本の練り製品技術、そして食の楽しみが融合した、まさに「食のイノベーション」です。アラスカの清らかな海で育ったスケソウダラが、日本の職人技によって生まれ変わり、世界の食卓を彩っています。その背景を知ると、あの見慣れた赤と白のスティックが少し誇らしく見えてくるのではないでしょうか。















