機械翻訳の精度は飛躍的に向上。でも、よく読むと「あれれ?」な部分も。ちょっとしたコツで見違えるほど自然な日本語に直せる技を紹介します。
第44回 詩を訳してみよう
【今回の例文】
【機械翻訳】
寛大さは、自分ができる以上のものを与えること。そして、誇りは、必要なものよりも少ないものを取ること。
(DeepL翻訳)
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【修正後】
真の寛大さとは、己の範はんちゅう疇を超えて他人に与えること。真の矜きょうじ持とは、己が必要とするときでもすべてを受け取らないこと。
今回のポイント✅
① 人名は必ず調べる
レバノン出身の詩人ですから、日本語では、より原音に近いハリール・ジブラーンが定訳とされていますが、英語読みに近いカリール・ジブランも間違いではありません。どちらにしても、必ず調べましょう。
② generosityの意味するもの
通常は「寛容」「寛大」と訳され、ほとんどの場合はそれが妥当ですが、今回の例文では少し工夫が必要です。一般的に「寛大」と聞くと、ミスなどをしても許してくれるような「心の広さ」がイメージされますが、ここでは「惜しみなく与える」意味合いが強いので、修正訳では「真の寛大さ」としました。ストレートに「真の施し」としても、よいかもしれません。
③ prideは誇りと訳して大丈夫?
ここで言わんとしていることは、「施しを与えられても、すべてを受け取らない心意気」です。要は、「与えるときは気前よく、受け取るときは最小限に」という思想ですね。そこでprideを「プライド」と捉えてしてしまうと、ニュアンスが変わってしまうため、修正訳では「矜持」としました。「プライド」は「他者に認められることを前提とした相対的な自信」であるのに対し、「矜持」は「他人の評価にかかわらず、揺らぐことのない絶対的な自信」です。「誇り」はその中間くらいのイメージでしょうか。
まとめ
『預言者』の著書として知られるハリール・ジブラーンは、1883年、レバノンの敬けいけん虔なクリスチャンの家庭に生まれ、のちにアメリカに移住しました。アラビア語、フランス語、英語に精通し、小説やエッセーなどのほかに彫刻や絵画の分野でも活躍。多くのアーティストや著名人が彼の思想に影響を受けたといわれ、ジョン・レノンやマイケル・ジャクソンもその一人だそうです。