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シアトルで確立された英語教育メソッドが、日本の小学校へ実験導入~東北大学教授と教育図書出版社長がベルビューチルドレンズアカデミーを視察~

グローバル化の流れを受けて、日本の英語教育のあり方が変わろうとしている。日本の文部科学省が小学校の英語教育の変革に取り組み始めた。これまで英語の教科は小学5年生からだったが、日本でオリンピックが開催される2020年から小学3年生に早められることになったのだ。
英語教育の早期化に際し、「子どもたちに英語の初歩をどう教えるか」という課題の研究を続けている東北大学の堀田龍也教授と、『はなまるスキル』など日本の教材を開発出版している株式会社教育同人社の森達也社長が831日、シアトルを来訪した。ベルビューの小学校「ベルビュー・チルドレンズアカデミー(以下、BCA)」の視察が目的だ。
BCAでは、清水楡華校長の考案により、以前から日本の小学校の国語教育と同様のメソッドを使って、アメリカの子どもたちに英語を教えている。小学生がひらがなを学ぶのと同じ方法で英語のアルファベットを学ぶのだ。BCAに通う生徒の中で母国語が英語でない子どもたちは、学校入学時は英語の読み書きができない。しかし、 同校のメソッドによって3カ月で英語が読めるようになるという。英語が読めるようになると、読んだ絵本を通して単語力や文章力が培われ、簡単な文型まで指導できるようになる。堀田教授は、「日本の抱えている英語教育早期化の課題の糸口がこのBCAの教育メソッドにあると考えています」とBCAに着眼した理由を語る。
同校の英語教育メソッドのもうひとつの利点は、指導者が英語が話せなくても教えられるということだ。現在、日本の小学校で用いられている国語の教育方法と酷似していることもあり、英語ができない教師であっても指導メソッドに従えば教えることが可能になる。日本では英語教師の英語レベルに対する疑問の声がたびたび議論の的になる。各自治体においては外国人教師を雇うのに経費がかかる問題もある。BCAメソッドを用いればこれらの問題も解決するのだ。堀田教授はこれらの点に注目しており、「現在の人材をそのまま活かせるので、英語に特化した新しい人材を採用したり、既存教員の育成に大きな費用投資をする必要もないんです」と強調した。
BCA英語教育メソッドは、今年度後半から日本の小学校へ実験的に導入されることになるそうだ。シアトルで確立された教育法がどのように日本の未来に影響を与えていくのか期待が高まる。
堀田教授と森社長の次の訪問地であるシカゴでは、日本式の算数教育「Japan Math」が地元の小学校に実験導入される。日本の義務教育で使用されている教育同人社の教材が英語に翻訳され、アメリカの子どもたちの算数の基礎固めを手伝う。「初等教育における日本の算数は、暗算能力を養うのにより効果的なんですよ」と森社長。子どもたちの親の世代が小学校で経験した算数教育メソッドが、今後、アメリカの算数教育を変えていくのかもしれない
文:吉田麻葉 取材・構成・写真:越宮照代