現役の通訳・翻訳家が、日々の現場で感じる日米の文化の違いや最新の翻訳事情など、英語を通して見えてくる「ちょっとした気づき」を紹介するコラムです。
第2回 車のステッカーに垣間見えるアメリカ人らしさ
アメリカで生活していると車の運転は欠かせません。長い信号待ちや渋滞でのノロノロ運転は日常茶飯事 ですが、そんな時、皆さんはどうやって時間をつぶしますか。筆者は、退屈しのぎに車に貼られたステッカーを 観察するのがひそかな楽しみです。日本では見られないような個性豊かなメッセージが並び、ちょっとした大 喜利のようです。
Biden / Harrisのような大統領・副大統領候補の組み合わせは、選挙期間中によく見かけますね。でも何 といっても定番は、Baby on Board(赤ちゃんが乗っています)でしょう。周囲のドライバーに「赤ちゃんが乗っ ているので、特に気を付けて運転してくださいね」と知らせるサインですが、筆者は先日、こんなステッカーを見 て吹き出しました。
Adults on Board. We want to live too!( 大人が乗っています。大人だって生きたい!)
「そりゃあ、そうだ」と心の中で大笑いしてしまいました。
ところで、筆者が今まで見たステッカーの中で、一番秀逸だと思ったのは、テスラに貼られていたこの一枚です。
Make Earth Great Again( 地球を再び偉大に)
Send Elon to Mars( イーロンを火星に送れ)
これは言うまでもなく、トランプ大統領の掲げる標語MAGA(Make America Great Again)をもじったも のです。筆者は思わず「うまい! 座布団10枚!」とうなってしまいました。
ご存知のとおり、テスラのCEOであるイーロン・マスク氏は一時期、トランプ大統領の右腕として政権周辺で 辣らつわん腕を振るいましたが、その時の言動は大きな波紋を呼ぶことに……。特にテスラのオーナーたちの反応は 敏感で、I got this before Elon went crazy.(イーロンがおかしくなる前に、私はこの車を買った)といっ たステッカーを貼る人があちこちに現れました。Anti Elon Tesla Clubというのもよく見かけましたね。
アメリカ人とはつくづく、自分の意見を表明せずにはいられないのだな、と改めて感心しました。普段は他人 の目をあまり気にしないといわれますが、この時ばかりは、テスラに乗っているのが恥ずかしいと思ったのか、あ るいは一種の「ステータス」だったテスラのイメージが急落したことへの怒りや悔しさからなのか、「テスラには 乗るけれど、マスク氏のことは支持しない」との意思表示が広がりました。
ちなみに、なぜ「火星」なのかというと、宇宙開発企業スペースXの創業者でもあるマスク氏が、人類の火星 移住計画を真剣に進めていることにかけたものです。実にユーモアが利いています。
余談ですが、このテスラ用ステッカーをネット販売した男性は、1カ月で10万ドルを超える売り上げを記録 したとか。それもまた、実にアメリカらしい話です。













