現役の通訳・翻訳家が、日々の現場で感じる日米の文化の違いや最新の翻訳事情など、英語を通して見えてくる「ちょっとした気づき」を紹介するコラムです。
第3回 英語にも敬語はある?
「日本語と違って敬語がない」と言われる英語ですが、実際には英語にも丁寧さや敬意を表す表現が存在します。
日本語では敬語ははっきりと体系化されており、主に次の3つに分けられます。
日本語の敬語は大きく3つ
尊敬語:相手の行為を高める(行く → いらっしゃる)
謙譲語:自分の行為をへりくだって表す(行く → 参る・伺う)
丁寧語:文全体を丁寧にする (行く→行きます
敬語を使ううえで重要なのは、相手との距離や上下関係、場面です。誰に対して話しているのかによって表現が大きく変わります。
ところが英語では、日本語のように相手によって二人称の代名詞を変えることはありません。相手が先生でも上司でも親でも友人でも、さらには赤ちゃんであっても、基本的にはすべて “you” で表されます。(余談ですが、筆者は先日、時代劇の英語字幕に携わりました。「そなた、名は何と申す?」「拙者は〇〇と申す」といった古風な日本語も、英語にしてしまえば “What’s your name?” “I’m XXX.” となります。)
ここで、“Did you eat breakfast?”という文を例に挙げてみましょう。日本語では相手との関係性によって言い方が変わるため、次のようなバリエーションが生まれます。
日本語は敬語で関係性を示す
カジュアル:朝ごはん、食べた?
丁寧:朝ごはん、食べましたか?
敬語:朝食を召し上がりましたか?
では英語はどうかというと、文の形を変えることで丁寧さや距離感を調整します。たとえば「窓を開けてほしい」場面では、次のような違いが生まれます。
英語は構文で距離感を示す
軽い命令:Open the window.
丁寧な依頼:Could you open the window?
より控えめな依頼:Would you mind opening the window?
このように、英語には日本語のような体系化された「敬語」はありませんが、文の構造や語彙、言い回しによって、相手への敬意や距離感を細かく表現できます。つまり、英語に敬語が「ない」のではなく「異なる形で存在している」と言えるでしょう。こうした違いを意識して使い分けられるようになれば、立派な英語上級者ですね。

















