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テイスティングの言い回しを翻訳すると?(3)〜技あり! 機械翻訳達人への道 第20回

機械翻訳の精度は飛躍的に向上。でも、よく読むと「あれれ?」な部分も。ちょっとしたコツで見違えるほど自然な日本語に直せる技を紹介します。

第20回 テイスティングの言い回しを翻訳すると?(3)

【今回の例文】

Type:Dark Chocolate with Inclusion Vintage:January-March 2019 Single Estate:Lydgate Farms Designation:Single Origin – Olohena, Kapaa, Kauai – Hawaii Tasting Notes:The additional honey added to this bar creates a paradox: while the honey makes the chocolate taste sweeter overall, it brings out deeper tones in the dark chocolate making it feel heavier. There are darker dried fruit tones than it’s plain dark chocolate counterpart from the same vintage. Hints of fig, raisins, and spices show in the middle, while the sweet underbelly of the honey-tones present candied walnuts on the finish. Think baklava.

(出典:Lydgate Farmsホームページ)

【機械翻訳】

タイプ インクルージョン入りダークチョコレート ビンテージ 2019年1~3月 シングル・エステート リドゲート・ファームズ 指定 シングル・オリジン–オロヘナ、カパア、カウアイ島–ハワイ テイスティング・ノート 蜂蜜を加えることでチョコレートが甘くなる一方で、ダークチョコレートの深いトーンが引き出され、より重く感じられるようになりました。同じビンテージのプレーンなダークチョコレートよりもドライフルーツの香りが濃い。中盤ではイチジク、レーズン、スパイスが感じられ、フィニッシュでは蜂蜜の甘さの中に砂糖漬けのクルミの風味が感じられます。バクラヴァを連想してください。(DeepL翻訳)

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【修正後】

種類:ダークチョコレート(インクルージョン・バー) 製造時期:2019年1~3月 シングル・エステート:リドゲート農園 産地:シングル・オリジン–ハワイ–カウアイ島(カパア、オロヘナ) テイスティング・ノート:蜂蜜を加えたことで、チョコレートの甘さが増す一方、ダークチョコレートの深みも引き出され、より重厚な味わいに。同時期に製造されたプレーンなダークチョコレートよりも、ドライフルーツの香りが強く感じられます。中盤ではイチジク、レーズン、スパイスのほのかな香りが、フィニッシュでは蜂蜜の甘さの中に砂糖漬けのクルミの風味を楽しめ、バクラヴァ(地中海や中東の国々で食べられるスイーツ)を連想させます。


カカオの産地や品種、製造工程によって、味わいや風味が大きく異なるチョコレート。ワインなどと同様に特有のテイスティング表現が存在し、翻訳にはチョコレート製造に関する下調べが必要になります。

今回のポイント✅

1. チョコレート業界の「インクルージョン」とは

「ダイバーシティー&インクルージョン」(多様性を受け入れる)などとセットでよく使われますが、チョコレートの世界でのインクルージョンは、プレーンな板チョコに対して、ナッツやフルーツ、スパイス、ソルト、食用花などの入った板チョコを指します。

2. チョコレート用語を学ぼう

「シングル・オリジン」は単一産地、単一品種のカカオ豆のみを使用して作られたチョコレートを指し、さらに「シングル・エステート」となると農園まで限定されます。例文にはありませんが、「ビーントゥバー(Bean to Bar)」とはカカオ豆の選定から焙煎、製造までの全工程を自社で一貫して行う製法のこと。これらはカタカナで使用される場合が多いようです。

3.チョコレートにもビンテージ?

ここでのvintageはどう訳せば良いでしょうか。ワインや古着など、価値ある年代物はビンテージとされますが、チョコレートも時間の経過と共に味わいが増すのだとか。今回の例文では「製造時期」としました。

まとめ

カカオの産地のみならず、農園にまでこだわるなど、チョコレートの世界もワインに通じるものがありますね。もうすぐバレンタインデー。テイスティング用語がわかるとチョコレート選びにも熱が入りそうです。

フリーランス翻訳家・通訳。外務省派遣員として、92年から95年まで在シアトル日本国総領事館に勤務。日本へ帰国後は、政党本部や米国大使館で外交政策の調査やスピーチ原稿の執筆を担当。キヤノン元社長の個人秘書、国連大学のプログラム・アシスタントなどを経て、フリーに転身。2014年からシアトルへ戻り、一人娘を育てながら、 ITや文芸、エンタメ系を始めとする幅広い分野の翻訳を手がける。主な共訳書は、金持ち父さんのアドバイザーシリーズ『資産はタックスフリーで作る』など。ワシントン州のほか、マサチューセッツ、ジョージア、ニューヨーク、インディアナ、フロリダにも居住経験があり、米国社会に精通。趣味はテニス、スキー、映画鑑賞、読書、料理。