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映像作品のあらすじを訳してみよう(2)〜技あり! 機械翻訳達人への道 第24回

機械翻訳の精度は飛躍的に向上。でも、よく読むと「あれれ?」な部分も。ちょっとしたコツで見違えるほど自然な日本語に直せる技を紹介します。

 

第24回 映像作品のあらすじを訳してみよう(2)

【今回の例文】

Sleepless in Seattle

Hanks stars as Sam Baldwin, a widowed father who, thanks to the wiles of his worried son, becomes a reluctant guest on a radio call-in show. He’s an instant hit with thousands of female listeners who deluge his Seattle home with letters of comfort. Meanwhile, inspired in equal parts by Sam’s story and by classic Hollywood romance, writer Annie Reed (Ryan) becomes convinced that it’s her destiny to meet Sam. There are just two problems: Annie’s engaged to someone else and Sam doesn’t know yet that they’re made for each other. (出典:Apple TV)

【機械翻訳】

スリープレス・イン・シアトル

ハンクス主演のサム・ボールドウィンは、未亡人の父親でありながら、心配性の息子の機転で、ラジオのコールイン・ショーに渋々出演することになる。彼は、何千人もの女性リスナーから瞬く間に支持され、シアトルの自宅には慰めの手紙が殺到する。一方、作家のアニー・リード(ライアン)は、サムの話とハリウッドの古典的なロマンスに触発され、サムに会うことが自分の運命だと確信するようになる。ただ、2つの問題がある: アニーには婚約者がいて、サムはまだ2人が運命の相手であることを知らないのだ。

(DeepL翻訳)

⬇︎

【修正後】

眠れぬ夜に

最愛の妻と死別した悲しみから立ち直れないサム・ボールドウィン(トム・ハンクス)は、見かねた息子の計らいで、ラジオのトークショーに渋々出演するはめに。すると、それを聴いた全国の女性リスナーから、何千通というラブレターがシアトルのサムの自宅に殺到する。そんなリスナーのひとりだったライターのアニー・リード(メグ・ライアン)は、サムの話に胸を打たれ、さらにハリウッドの古典的恋愛映画に触発されて、サムと出会うことが自分の運命だと確信する。ただ、そこには2つの問題が……。アニーには婚約者がいて、サムはまだアニーという運命の相手が存在することを知らないのだ。


今回はシアトルが舞台となったラブロマンスの名作映画「めぐり逢えたら」のあらすじ(シノプシス)を取り上げます。難しい文章ではないのですが、こなれた日本語に訳す必要があります。

今回のポイント✅

1. widowed fatherの意味は?

widowは未亡人のこと。女性を指しますが、widowed fatherとなると、「妻と死別した、子どものいる男性」の意味になります。機械翻訳の「未亡人の父親」は明らかに誤訳ですね。

2. 本当に「心配性の息子」でいい?

his worried sonは、息子の性格を言っているわけではありません。ここでは「落ち込んでいる父親を心配している息子」が正解。解釈を誤らないように注意しましょう。

3.タイトルを自由に考えてみよう

この作品は1957年作の映画「めぐり逢い」(An Affair to Remember)をモチーフにしており、日本語版タイトル「めぐり逢えたら」の由来にもなっています。原題「Sleepless in Seattle」を、DeepL翻訳はそのままカタカナ表記で「スリープレス・イン・シアトル」にしています。ちなみに、Google翻訳は「シアトルで眠れない」にしていました。機械翻訳を踏まえ、修正訳では「眠れぬ夜に」と改めましたが、皆さんならどう訳しますか?

まとめ

シアトルの名所が多く登場する、30年前の大ヒット映画。ロケ地となったパイクプレース・マーケットのレストラン、アセニアンには当時の写真が今でも飾られていますね。未見の方は、今からでもぜひ! 次回はノンフィクション映像を取り上げる予定です。

フリーランス翻訳家・通訳。外務省派遣員として、92年から95年まで在シアトル日本国総領事館に勤務。日本へ帰国後は、政党本部や米国大使館で外交政策の調査やスピーチ原稿の執筆を担当。キヤノン元社長の個人秘書、国連大学のプログラム・アシスタントなどを経て、フリーに転身。2014年からシアトルへ戻り、一人娘を育てながら、 ITや文芸、エンタメ系を始めとする幅広い分野の翻訳を手がける。主な共訳書は、金持ち父さんのアドバイザーシリーズ『資産はタックスフリーで作る』など。ワシントン州のほか、マサチューセッツ、ジョージア、ニューヨーク、インディアナ、フロリダにも居住経験があり、米国社会に精通。趣味はテニス、スキー、映画鑑賞、読書、料理。