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アート作品の解釈〜技あり!機械翻訳達人への道第21回

機械翻訳の精度は飛躍的に向上。でも、よく読むと「あれれ?」な部分も。ちょっとしたコツで見違えるほど自然な日本語に直せる技を紹介します。

第21回 アート作品の解釈

【今回の例文】

Graham Little Painter
He creates intensely, immensely details paintings inspired by 1970s fashion magazine photographs. He recontextualizes these women – and only recently men – with different, often everyday environments. His work is brimming with the detail and historical knowledge of art history.

Isabelle Wenzel Performer and photographer
She is a photographer and acrobat. Isabelle seems to fall but not to fall in her images. Somehow without gravitation. We felt her work is so unique translating a total freedom in her femininity. Exploring in the tradition of other female visionary artists of the last century what femininity means.
HERMÈSスクラップブックよりアレンジ)

【機械翻訳】

グラハム・リトル ​​画家
1970年代のファッション雑誌の写真からインスピレーションを受け、強烈なディテールの絵画を制作する。彼は、これらの女性、そして最近では男性を、異なる、しばしば日常的な環境と再文脈化する。彼の作品には、美術史のディテールと歴史的知識がふんだんに盛り込まれている。

イザベル・ヴェンツェル ​​パフォーマー、写真家
写真家であり、アクロバットでもある。イザベルのイメージは、落ちそうで落ちない。なぜか重力がない。私たちは、彼女の作品が、女性らしさの中にある完全な自由を翻訳した、とてもユニークなものであると感じました。前世紀の他の女性先見性アーティストの伝統の中で、女性らしさとは何かを探っているのです。

(DeepL翻訳)

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【修正後】

グラハム・リトル​​ 画家
1970年代のファッション雑誌の写真にインスパイアされたグラハムの作品は、驚くほどディテールまで緻密に再現されている。作品の女性たち(これまでは主に女性ばかりだったが、最近は男性も登場している)を当時とは異なる日常のひとコマに置いて再構成する。そうした作品の細かい描写には、美術史における知見があふれんばかりだ。

イザベル・ヴェンツェル​​ パフォーマー、写真家
フォトグラファーで曲芸師でもあるイザベル。写真の中の彼女は、倒れそうで倒れない。まるで重力が存在しないかのようだ。作品は非常に独特で、自身の女性らしさの中にある完全なる自由を翻案している。女性アーティストの先駆者たちが前世紀に築いた伝統の中で、イザベルは女性らしさとは何かを追い求める。


今回は現代アート作品について、絵画と写真の鑑賞文を取り上げます。完成度の高いアート作品にふさわしい日本語で表現してみましょう。

今回のポイント✅

1. recontextualizesはどう訳す?

機械翻訳では、「再文脈化する」と直訳されていますが、これはアート作品ですのでわかりにくいですね。修正訳では、「再構成する」としました。

2. fallは「落ちる」でいい?

実際の写真を見ないと難しいかもしれませんが、曲芸師でもあるイザベルの写真は、自身のアクロバティックな動きを捉えています。今にも倒れそうで倒れない姿。ここは正確に訳したいところです。

3.単語の羅列は避ける

機械翻訳で「前世紀の他の女性先見性アーティストの伝統の中で」と直訳されている部分を、修正訳では、「女性アーティストの先駆者たちが前世紀に築いた伝統の中で」としています。意味を捉えて文章を組み立て直すテクニックが求められます。

まとめ

アート作品の鑑賞文は、英語でも日本語でも「非日常感」が強く、洗練された文章にするのは至難の業。日頃からアートにたくさん触れて、感覚を磨いていきましょう。

フリーランス翻訳家・通訳。外務省派遣員として、92年から95年まで在シアトル日本国総領事館に勤務。日本へ帰国後は、政党本部や米国大使館で外交政策の調査やスピーチ原稿の執筆を担当。キヤノン元社長の個人秘書、国連大学のプログラム・アシスタントなどを経て、フリーに転身。2014年からシアトルへ戻り、一人娘を育てながら、 ITや文芸、エンタメ系を始めとする幅広い分野の翻訳を手がける。主な共訳書は、金持ち父さんのアドバイザーシリーズ『資産はタックスフリーで作る』など。ワシントン州のほか、マサチューセッツ、ジョージア、ニューヨーク、インディアナ、フロリダにも居住経験があり、米国社会に精通。趣味はテニス、スキー、映画鑑賞、読書、料理。