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発達心理学から知る幼児教育〜シアトルの知恵ノート

知恵ノート

知っておくと暮らしが豊かになるヒントを、シアトルで活躍するさまざまな専門家の方に聞きます。

発達心理学から知る幼児教育

誰もが願う子どもの健やかな成長。そのためにも、子どもをひとりの人間として温かく見守り、尊重することが大前提です。幼児期の特徴や学びの姿を発達心理学の観点からお伝えします。

三つ子の魂百まで

「三つ子の魂百まで」とは、幼い頃に体得した性格や性質は一生変わることがないという意味です。そう聞くと、少しドキッとするかもしれません。このことわざは「幼少期の環境や経験はとても大切である」という先人の教えですが、説得力がありますね。自己肯定感やポジティブな心が備わるために何が必要なのか、私は教育者として、ひとりの親として、常に自分に問いかけています。幼少期は脳の発達が著しく、パーソナリティー形成に最も重要な時期。そんな子どもたちに必要なのは、「安心できる環境にいて、愛され、たくさん遊び、楽しむこと」に尽きると思うのです。

自己中心性

幼児は自己中心の世界に生き、ほかの人も自分と同じ視点で物事を見ていると捉えています。自分の考えが他者と異なることをまだまだ理解しにくいのです。なぜ怒られたのか、わからないまま過ごしていることもあるでしょう。

インターナショナル・ラーニング・アカデミー(以下ILA)の学習パケットには、心理学者のジャン・ピアジェが考案した三山(みつやま)問題に関連した問いが出てきます。これは、他者が見ている光景は自分とは違うと理解するための課題で、気付きの一歩。また、4歳頃になると、子ども同士で遊びをイメージする協同遊びも始まります。役割を分担して遊ぶことで、自分の思いと他者の思いを推測することを学びながら、「自分も大切だが相手も大切」と知るのです。個人差はありますが、自己中心性は7~11 歳以降、脱却に向かっていくと言われています。

外言と内言

心理学者のレフ・ヴィゴツキーは、「言葉には、外言と内言がある」と論じました。外言とは外面化された伝達=コミュニケーションであり、内言とは発言を伴わない内面化された思考のことです。幼児が発する独り言は、考えを口にすることで整理し、理解しようとしている大切な行為。内言化ができてから、自分の意見や考えを周りにしっかり伝えられると達成感を味わいます。

ILAでは毎朝、いくつかの絵本の読み聞かせを行い、話の内容に基づいて質問したりされたりして意見を交わします。また、多くの絵カードを使い、子どもたちは具体的な写真や絵が表す言葉を聞き、声に出して練習しています。四字熟語に慣用句、季節や文化に関する単語なども唱えます。この時点で意味を全部理解できなくても、音として残すことに意義があります。特に七五調の音に親しむことにより、そこに内在する日本語独特の軽快なリズムに対する感覚が養われていきます。

内発的・外発的動機付け

幼少期は「内発的動機付け」の大事なタイミングでもあります。子どもの小さな進歩に気付いたら、共に喜び合いましょう。この繰り返しで、「やる気スイッチ」が作動するようになります。ILAでも子どもたちは内発的動機が根付いてくると、「おもしろいから」、「うまくできるから」と嬉々として学習パケットに取り組みます。やり終えて「きもちいいー!」と声に出す子もいます。

子どもたちは出席カードのシールがたまると、小さなプレゼントを選べます。このような外発的動機付けもきっかけとして役に立ちます。すでに何回もゴールを迎えた子は出席カードが何枚も重なっています。それをうれしそうにめくって、お友だちと見せ合う姿は誇らしげです。もうプレゼント自体に以前ほどの重きを置いていないでしょう。

「まだできない」から「誰かとならできる」、そして「自分でできる」まで、私たちは教育現場でひとりひとりの発達接近領域を見極めながら適切なチャレンジを与えます。ILAには菜園があり、雨の少ない夏場はみんな進んで水やりをしてくれます。そうして採れた野菜やイチゴの甘さに感激したり、虫を見つけてはじっくり観察したり。子どもたちは屋外活動からもたくさんのことを吸収します。自分の中から湧き上がる知的好奇心は、その後の向上心や開拓精神につながっていくのです。

学びの楽しさを発見し自ら学ぶ子へ

将来の自立性と社会性を育むために好ましい生活習慣やマナー、道徳性を身に付ける。好奇心と探求心を持った創造性豊かな優しい人へ。それが、ILAの教育方針です。どの子も素敵な持ち味があって、まさに十人十色。個性を重視し、少人数制のクラスを設けています。

待ちに待ったお弁当の時間には、ふたを開ける時のワクワク顔、お友だちと同じおかずや容器がわかった時の喜ぶ姿が見られ、微笑ましい限りです。凝ったお弁当である必要は全くありません。ほかの人の食べ物に興味を持ち、理解を深めるひと時です。みんなが、おうちの方々への感謝の気持ちをいろいろな表現で伝えてくれます。


ILAで見学随時受け付け中!

平日:幼児クラス(日・英)
平日午後・土曜日:幼児と小中学生対象の日本語補習授業(プライベートレッスンあり)、そろばん、英語、スペイン語など

インターナショナル・ラーニング・ アカデミー(ILA)

余 春子塾長

春子しゅんこ中国生まれ。横浜国立大学国際社会研究院卒業。1998年日本に留学後、日本に帰化。多文化のバックグラウンドを生かし、温かい雰囲気の中で言語学習に取り組める幼児教室としてILAを創立。

ムニョス真樹子■ロンドン英国国際教育研究所の日本語教師養成課程を修了後、渡米。ロサンゼルスに10年、シアトルに10年在住。発達・教育心理学を中心に関連分野を学んでいる。

International Learning Academy
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