子どもとティーンのこころ育て
アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。
子どもがきちんと宿題に取り組むようになる方法
「親に言われなくても進んで宿題をやってほしい」というのは、子育てのよくある悩みですよね。子どもに任せていたら全然やっていなくて、叱ってけんかになり、お互い嫌な気分になることも。今回は、「自己決定理論」をベースに、子どもが自発的に宿題に取り組める方法を考えてみました。
やる気のメカニズムを説いた自己決定理論は、アメリカの心理学者、エドワード・デシ氏とリチャード・ライアン氏によって提唱されました。ひと口にやる気と言ってもさまざまあり、3つの心理欲求、「自律性」(自分で決めて行動する)、「有能感」(自分には力がある)、「関係性」(自分は他者に尊敬され認められている)がどのくらい満たされているかで自己決定の度合いは異なるとしています。具体的には、以下の6つの種類に分かれます。
1. 無動機(Amotivation)
やる気がなく、他者からも何も言われないので行動しない状態。例:宿題はやりたくないし、親も何も言わないのでやらない。
2. 外的調整(External)
やる気はないが、他者から報酬と罰を与えられて行動する状態。例:宿題はやりたくないけれど、親から怒られるのでやらなきゃいけない。
3. 取り入れ的調整(Introjected)
やる気はないが、行動の価値は理解し、他者の目を意識して行動する状態。例:宿題はやったほうがいいが、やりたくない。でも、教室で恥ずかしい目に遭うのでやる。
4. 同一化的調整(Identified)
その行動の価値を理解し、自ら進んで行動する状態。例:宿題はやったほうがいいのでやろう。
5. 統合的調整(Integrated)
その行動が自分の夢や目標と直結するので、自らやりたいと思い、行動する状態。例:医者になりたい。そのために勉強しよう。
6. 内発的動機付け(Intrinsic)
その行動自体が楽しいので行動する状態。例:勉強は好き。だからやりたい。
この6つの動機付けのうち、2から5までは行動の理由が外部から来ている「外発的動機付け」です。やる気、生産性、幸福度は6の内発的動機付けに向かうほど高くなり、その逆にストレスや燃え尽き症候群の値は1の無動機に近づくほど高くなります。
理想は内発的動機付けに従って子どもが自発的に勉強することですが、実際には勉強そのものが好きな子どもはあまりいません。そこで、その手前の4(同一化的調整)と5(統合的調整)をいかにうまく使って子どものやる気をアップさせるかがカギに。
この2つの動機付けは、やる気、生産性、幸福度が内発的動機付けとほぼ同じ度合いであるという結果が出ています。つまり、将来の夢や目標を明確に持つ子どもは、楽しいから勉強している子どもとほぼ同じ結果を出すことができます。
親の役目は、子どもの夢や目標を思いっきり応援してあげることと言えますね。また、なぜ宿題をするのか、学校や勉強の必要性について、子どもとじっくり話し合い、子ども自身が納得することで、子どものやる気も高まります。
逆に、好きなことに対して報酬を渡すなど、2(外的調整)を使うとアンダーマイニング効果につながり、やる気が損なわれる可能性も。楽しい気持ちが阻害され、幸福感が低下するので避けたほうが無難です。お金や物などの報酬は、興味のない活動に興味を持たせるために限定して使いましょう。
最近では、マインドフルネスとやる気の関係についての研究も進んでいます。マインドフルネスにいる状態の人ほど、行動自体を楽しむことができる内発的動機付けの値が高いという結果が出ています。「今ここ」の状態に意識を向け、そのままの自分を肯定的に受け入れることで自律性が高まり、自己決定の度合いが強くなるからです。さらに、やる気と幸福感が高まるだけでなく、他者への思いやりと利他的な行動も増えるとのこと。
今この瞬間の子どもをそのまま受け入れつつ、子どもの夢や目標を応援し続けることが、内発的動機付けを高めるいちばんの方法と言えます。やはり、子育てに近道はないようです。
やる気のメカニズムを説いた自己決定理論は、アメリカの心理学者、エドワード・デシ氏とリチャード・ライアン氏によって提唱されました。ひと口にやる気と言ってもさまざまあり、3つの心理欲求、「自律性」(自分で決めて行動する)、「有能感」(自分には力がある)、「関係性」(自分は他者に尊敬され認められている)がどのくらい満たされているかで自己決定の度合いは異なるとしています。具体的には、以下の6つの種類に分かれます。
1. 無動機(Amotivation)
やる気がなく、他者からも何も言われないので行動しない状態。例:宿題はやりたくないし、親も何も言わないのでやらない。
2. 外的調整(External)
やる気はないが、他者から報酬と罰を与えられて行動する状態。例:宿題はやりたくないけれど、親から怒られるのでやらなきゃいけない。
3. 取り入れ的調整(Introjected)
やる気はないが、行動の価値は理解し、他者の目を意識して行動する状態。例:宿題はやったほうがいいが、やりたくない。でも、教室で恥ずかしい目に遭うのでやる。
4. 同一化的調整(Identified)
その行動の価値を理解し、自ら進んで行動する状態。例:宿題はやったほうがいいのでやろう。
5. 統合的調整(Integrated)
その行動が自分の夢や目標と直結するので、自らやりたいと思い、行動する状態。例:医者になりたい。そのために勉強しよう。
6. 内発的動機付け(Intrinsic)
その行動自体が楽しいので行動する状態。例:勉強は好き。だからやりたい。
この6つの動機付けのうち、2から5までは行動の理由が外部から来ている「外発的動機付け」です。やる気、生産性、幸福度は6の内発的動機付けに向かうほど高くなり、その逆にストレスや燃え尽き症候群の値は1の無動機に近づくほど高くなります。
理想は内発的動機付けに従って子どもが自発的に勉強することですが、実際には勉強そのものが好きな子どもはあまりいません。そこで、その手前の4(同一化的調整)と5(統合的調整)をいかにうまく使って子どものやる気をアップさせるかがカギに。
この2つの動機付けは、やる気、生産性、幸福度が内発的動機付けとほぼ同じ度合いであるという結果が出ています。つまり、将来の夢や目標を明確に持つ子どもは、楽しいから勉強している子どもとほぼ同じ結果を出すことができます。
親の役目は、子どもの夢や目標を思いっきり応援してあげることと言えますね。また、なぜ宿題をするのか、学校や勉強の必要性について、子どもとじっくり話し合い、子ども自身が納得することで、子どものやる気も高まります。
逆に、好きなことに対して報酬を渡すなど、2(外的調整)を使うとアンダーマイニング効果につながり、やる気が損なわれる可能性も。楽しい気持ちが阻害され、幸福感が低下するので避けたほうが無難です。お金や物などの報酬は、興味のない活動に興味を持たせるために限定して使いましょう。
最近では、マインドフルネスとやる気の関係についての研究も進んでいます。マインドフルネスにいる状態の人ほど、行動自体を楽しむことができる内発的動機付けの値が高いという結果が出ています。「今ここ」の状態に意識を向け、そのままの自分を肯定的に受け入れることで自律性が高まり、自己決定の度合いが強くなるからです。さらに、やる気と幸福感が高まるだけでなく、他者への思いやりと利他的な行動も増えるとのこと。
今この瞬間の子どもをそのまま受け入れつつ、子どもの夢や目標を応援し続けることが、内発的動機付けを高めるいちばんの方法と言えます。やはり、子育てに近道はないようです。
参照
(1)Connecting motivation, awareness, values, and thriving: New research from Self-determination theory
https://www.youtube.com/watch?v=LHQv7FU8Atw
(2)夏休みを最大限に生かして子どものやる気を引き出す方法~子どもとティーンのこころ育て
https://soysource.net/lifestyle/children_teen_kokoro/kokorosodate-0609/
(3)頭をスッキリさせて「今」にフォーカス! マインドフルネスの正しい実践法~子どもとティーンのこころ育て
https://soysource.net/lifestyle/children_teen_kokoro/kokorosodate-0112/
(4)Mindfulness and Motivation: A Process View Using Self- Determination Theory
https://selfdeterminationtheory.org/wp-content/uploads/2021/07/2021_RyanDonaldBradshaw_Mindfulness_Manuscript.pdf