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バイデン政権発足から100日、移民法はどうなる? 〜知っておきたい身近な移民法

知っておきたい身近な移民法

米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) 五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき移民法について解説します。

バイデン政権発足から100日、移民法はどうなる

バイデン政権発足後100日が経ちました。この100日間は、主に改善が必要とされる課題を特定することに焦点を当てたという印象です。特に、トランプ政権による2019年の公的扶助に関する規定(Public Charge Rule)を取り下げたことは、前政権との違いをアピールすることができたため、有効だったと言えるでしょう。そのほかに関しては、どちらかというと問題点が目立ったように感じられます。

たとえばアメリカとメキシコの国境では、トランプ政権の「アメリカに入国させない」政策を覆したため、アメリカに入国を希望する中米諸国出身者が急増しています。未成年者が保護者なしで入国を試みるケースも増えており、アメリカとメキシコの国境を取り巻く移民問題はさらに深刻化しています。

また、移民局で行う申請手続きは審査期間が長引いており、いまだ改善の兆しが見えません。シアトル地域の移民局では、結婚によるグリーンカード(アジャストメント)申請は平均2年、帰化申請は平均18カ月かかっています。さらに、申請提出後に移民局から発行される申請受理書も、新型コロナウイルスのパンデミック発生前は発行まで7〜10日ほどでしたが、現在では4〜6週間かかります。

次の100日間では、大幅に遅れている審査期間の改善を始め、就任当時に掲げていた家族と離ればなれになっている子どもたちを親と再会させることや、移民法制度の合理化など、移民法改革が期待されます。

このような状況の下、移民局は次のような対策を取っています。

可能な限り、過去のバイオメトリックスを再利用する。別の申請で以前バイオメトリックスを提出している場合、グリーンカードの更新や再入国許可申請、就労許可申請などにおいて、それが再利用される、つまりアポイントメントが免除されるケースが多くなっています。免除された場合でも、バイオメトリックス料は返金されません。

グリーンカードの更新申請では、これまでバイオメトリックスのアポイントメント時に、グリーンカードの裏に有効期限を延長することが記載されたステッカーが貼られていましたが、現在、バイオメトリックスのアポイントメントが免除されるケースが多いため、ステッカーは廃止となっています。その代わりに、申請受理書にグリーンカードの有効期限を12カ月延長することが記載されています。よって、申請提出後はグリーンカードの有効期限が切れても、12カ月間は申請受理書の原本とグリーンカードふたつを合わせたものが永住者としてのステータスの証明になります

条件削除の申請を行っている2年の条件付きグリーンカード保持者の場合は、新型コロナウイルスのパンデミック発生前から、申請受理書にグリーンカードの有効期限を18カ月延長することが記されていましたが、これに変更はありません。

2020年3月1日から2021年6月30日までに発行された追加資料の要求(Request for Evidence)や、却下予定通知(Notice of Intent to Deny)申請に対して、期日から60日以内に受理した回答は審査上考慮されます。

H-1Bビザ発給数上限に到達 2022年会計年度のH-1Bビザ申請に関して、移民局は登録期間中に、一般枠、高学歴枠共に年間発給数を超える登録があったことを発表しました。当選者の申請はすでに4月1日から受け付けられています

H-2Bビザ追加割り当ての発表
H-2Bビザとは、非農業季節労働者のためのビザであり、1回限り・季節・収穫期・時々必要とされる断続的な労働、この4つのいずれかに該当する目的で取得できます。2021年会計年度下半期に割り当てられた3万3,000件のH-2Bビザは、2月12日に上限に到達しました。しかし、H-2Bビザの需要が引き続き高いため、移民局は追加で2万2,000件のH-2Bビザの割り当てを決定。そのうち6,000件は、ホンジュラス、エル・サルバドル、グアテマラ国籍者に割り当てられます。追加枠が実際に利用可能になったのは5月25日からです。

インドからの入国規制
インド国内で新型コロナウイルスの感染が拡大している状況を踏まえて、5月4日より、直近14日以内にインドでの滞在歴がある外国人渡航者のアメリカ入国を禁止すると発表しました。アメリカ国籍者やグリーンカード保持者、またその家族など、対象外となる人もいます。

神戸市出身。明治大学卒業。大手外資系コンピュータ会社でのシステム・エンジニア職経験後渡米。 アメリカのハートランド、カンザス州のワシュバーン大学ロースクール(法科大学院)を卒業、ジュリス・ドクター(J.D.)取得。 カンザス・ワシントン両州において弁護士資格を持つ。K&I Lawyers設立以前は、 ロサンジェルスおよびシアトルにある移民法を中心とする法律事務所での勤務を通じて、多様な移民法関連のケースの経験を積む。 また、移民法以外の分野、特に家族法、遺言・検認・遺言状執行、会社設立、その他民事訴訟にも精通する。カンザス州およびワシントン州弁護士会会員、 米国移民法弁護士協会会員。移民法関連のトピックにおいて、たびたびセミナーを開催。 6100 219th St., SW, Suite 480, Mountlake Terrace, WA 98043 ☎ 206-430-5108 FAX 206-430-5118