知っておきたい身近な移民法
米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) の五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき移民法について解説します。
*同記事は、ワシュバーン大学ロースクール(法科大学院)を卒業、ジュリス・ドクター(J.D.)取得し、カンザス州及びワシントン州において弁護士資格を持ち、K&I Lawyersを琴河利恵弁護士と共に創業した五十畑諭弁護士が、在シアトル日本人の読者に向けて解説しているものです。詳細については、K&I Lawyersなど移民法の専門家へお問い合わせください。
扶養家族ビザからF-1学生ビザへの変更
多くの非移民ビザのカテゴリで、申請者は一緒にアメリカに滞在して生活する扶養家族を、扶養家族枠で申請できます。ここでの扶養家族とは、メインとなる申請者の配偶者と21歳未満の未婚の子どもを指します。21 歳に到達している子ども、あるいは21歳未満であってもすでに結婚している子どもは該当しません。
H-1Bビザ保持者の扶養家族はH-4ビザを、L-1ビザ保持者の扶養家族はL-2ビザを取得することができます。なお、Eビザ保持者の扶養家族はメインとなる申請者と同じ種類のビザとなり、E-1ビザ保持者(貿易家)の扶養家族ならE-1ビザを、E-2ビザ保持者(投資家)の扶養家族ならE-2ビザを取得可能です。
扶養家族がアメリカで学校に通う場合、F-1ビザ(学生向けビザ)は必要ありません。ただし、F-1ビザの条件を満たしており、希望する場合には、単独でF-1ビザを申請することも可能ですし、そのほうが良いケースもあります。
幼い子どもがいる家庭では、扶養家族として非移民ビザを取得することが一般的です。一方、大学に通うような年齢の子どもの場合、初めからF-1ビザを取得しておくことで、21歳になってビザを書き換える手間を避けることができます。また、メインとなるビザ保持者が急に帰国することになった場合も、支障なく学業を続けられます。
それでは、扶養家族として同じカテゴリの非移民ビザを取得したものの、もうすぐ21歳の誕生日を迎える状況にある場合はどうしたら良いでしょうか。この場合、2つのオプションがあります。
【オプション1】
1度出国し、米国大使館・領事館にて F-1 ビザを申請
タイミング良く夏休みや冬休みを利用して申請することができればベストですが、審査期間自体あまり長くないので、それ以外の時期であっても学業への影響は最小限に抑えることができます。大使館・領事館で面接後、通常は1週間くらいでビザが発行されます。
【オプション 2】 アメリカに滞在したまま F-1 にステータス変更
アメリカ国内に滞在したままF-1にステータスを変更する手続きを行います。この場合、問題となるのが審査期間で、現在のところ一般的には4〜6 か月ですが、中には半年を大幅に上回るケースもあります。現在、この申請にはプレミアム・プロセスが適用されないので、審査期間の短縮はできません。
移民局のポリシー上、学校が始まる30日前までに現在の移民法上のステータスを保持していなければなりません。そのため、アメリカ国内でF-1にステータスを変更する場合、時間に余裕を持ってステータス変更を申請しなかったがために、学校が始まる30日前までに現在のステータスが切れてしまう場合(例:21 歳の誕生日を迎えるなど)、ギャップが生じることになります。 このギャップを埋めるため(合法的なステータスを維持するため)、F-1ステータス変更申請中にB-2へのステータス変更を同時に申請しなければならないケースがあります。どうしても国内でのステータス変更が必要な場合には、21 歳の誕生日を迎えるギリギリではなく、早めに申請しておきましょう。
なお、扶養家族用のビザが必要なのは、メインとなる申請者と一 緒にアメリカで生活する場合のみです。たとえば、メインとなる申請者がアメリカに単身赴任し、家族が夏休みを利用してアメリ カに遊びに来るなど、観光が目的の場合、家族は扶養家族用のビザを取得する必要はありません。日本国籍で90日以内のアメリカ 滞在であれば、ビザ免除プログラムを利用できます。家族が免除プログラム対象国の国籍でない場合は、Bビザが必要となります。