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EB-2 国益免除(National Interest Waiver)の申請〜知っておきたい身近な移民法

米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) 五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき移民法について解説します。

本コラムで提供される情報は一般的かつ教育的なものであり、個別の解決策や法的アドバイスではありません。また、情報は掲載時点のものです。具体的な状況については、米国移民法の弁護士にご相談ください。

EB-2 国益免除
(National Interest Waiver)の申請

アメリカでは、雇用に基づいてグリーンカード(米国永住権)を申請することができます。雇用に基づくグリーンカード申請は、申請者の能力や学歴・経歴によって主にEB-1からEB-5と5つのカテゴリに分かれます。そのうちEB-2は第2優先カテゴリとされ、このカテゴリのグリーンカードの年間割当数は全体の28.6パーセントに加え、第1優先カテゴリで使われなかった分が割り当てられます。

EB-2カテゴリは、さらに以下の2つのカテゴリがあります。

(A)Exceptional Ability
科学や芸術、ビジネスの分野で優れた能力の保持者

(B)Advance Degree Professionals
修士号以上の学位を持つ専門職者

通常、このカテゴリでの申請には、労働認定証(Labor Certification)とスポンサー、つまり、採用通知 (Job Offer)が必要となります。しかし、需要が高いとされるスケジュールAの職業(Schedule A Occupations)に該当する場合は、すでに労働局が「アメリカに十分な労働者がいない」と判断しているため、労働認定証は必要ありません。これには看護師や理学療法士、大学教授などが含まれます。

さらに、このカテゴリには、「申請者の能力や技術がアメリカにとって有益である」と判断された場合に限り、労働認定証とスポンサーを免除できる国益免除による申請(National Interest Waiver、以下NIW)の制度があります。今回は、このNIWについて解説します。

上述の通り、NIWでは労働認定証とスポンサーが不要なため、自己申請(Self-Petition)が可能です。ただし、専門分野での国益への貢献を証明しなければならないため、起業家ではない場合、採用通知があるケースがほとんどです。

EB-2申請条件

❶ 科学・芸術・ビジネスの分野で優れた能力の保持者 (Exceptional Ability)、または修士号以上の学位、もしくは学士号と5年以上の専門的な実務経験を持つ専門職者 (Advance Degree Professionals)であること

この条件を満たすには、以下の項目のうち、少なくとも3つの要件を満たす必要があります。
•専門分野での学位、証明書、または賞を持っている証拠
•過去の雇用主から、専門分野での10年間以上のフルタイム就労経験があることを証明する雇用証明書
•ライセンスや認定証が必要な職業であれば、それらを持っている証拠
•専門分野での報酬が専門分野での優れた能力に値する証拠
•専門分野の団体の会員である証拠
•専門分野での業績や実績、または専門分野への貢献に対して、同僚、政府機関、またはプロフェッショナル組織から認識されている証拠
•そのほか、専門分野で優れた能力の保持者であることを証明できる証拠

申請者が専門分野に関連する学位を持っていることは当然ですが、採用通知も専門分野での学位を必要とする職業でなければなりません。たとえば、機械工学で修士号を取得した者が、歯科衛生士としての採用通知を受けても、この申請条件を満たすことはできません。また、学士号と5年の経験をベースに申請する場合はその実務経験は一貫性があり、同じ専門分野である必要があります。たとえば、コンピューター・サイエンスで学士号を取得後、マーケティングの仕事を5年間した場合は、この申請条件を満たすことはできません。

❷ アメリカにとって多大な価値と重要性のある分野の仕事に従事していること

申請者の専門分野での活動がアメリカの国益に貢献することが求められます。ただし、単に雇用主に利益をもたらすだけでは申請条件を満たしません。また、申請者が起業家である場合、会社を設立しただけではアメリカの国益への貢献を証明したことにはなりません。

申請者にその分野の仕事を前進させうる資質・条件が備わっていること

申請者は自身がどのように国益に貢献できるのか、また、それを可能にする資格や経験を持っていることを証明しなければなりません。単に専門分野での経験があるだけでは国益への貢献を証明するのに不十分です。

❹ 総合的に判断して、労働認定証の免除がアメリカにとって利益となること

移民局は、NIWの申請を審査する際、申請者が提出した証拠書類を総合的に評価します。審査において、単一の要素や証拠はなく、申請者の経歴や活動内容などが広範に考慮されます。

五十畑 諭
神戸市出身。明治大学卒業。大手外資系コンピュータ会社でのシステム・エンジニア職経験後渡米。 アメリカのハートランド、カンザス州のワシュバーン大学ロースクール(法科大学院)を卒業、ジュリス・ドクター(J.D.)取得。 カンザス・ワシントン両州において弁護士資格を持つ。K&I Lawyers設立以前は、 ロサンジェルスおよびシアトルにある移民法を中心とする法律事務所での勤務を通じて、多様な移民法関連のケースの経験を積む。 カンザス州およびワシントン州弁護士協会会員、米国移民法弁護士協会会員。 6100 219th St., SW, Suite 480, Mountlake Terrace, WA 98043 ☎ 206-430-5108 FAX 206-430-5118