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米国市民権を取得するための帰化プロセス〜知っておきたい身近な移民法

知っておきたい身近な移民法

米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) 五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき移民法について解説します。

米国市民権を取得するための帰化プロセス

生まれながらの米国市民ではない人が米国市民権を取得することを、帰化(Naturalization)と言います。現在、シアトル地域では、帰化申請の提出から面接まで早くても4、5カ月、約8割のケースで8カ月ほどかかっています。

面接は審査の最終段階でスケジュールされ、免除対象とならない限り、面接と同時に英語テストと公民テスト(Civics Test)が行われます。申請者がいずれかのテストに合格しなかった場合、審査官は、60~90日の間に再試験をスケジュールします。再試験では、最初のテストで不合格だった部分のみ、テストが実施されます。英語テストには合格したものの、公民テストで不合格だった場合、再試験は公民テストのみで、英語テストはありません。再試験で不合格になると、帰化申請は却下されます。

年齢による免除・特別処置のほか、身体的または精神的障害などが理由で、英語テストや公民テストが受けられない場合、ケースバイケースで免除を得られることがあります。免除を受けるには、医師からの証明書が必要です。

英語テスト

英語テストでは、アメリカの日常生活における基本的な読み(Reading)、書き(Writing)、会話(Speaking)の能力を見られます。審査官は、申請者の多くがネイティブ・スピーカーでないことを理解しているので、パーフェクトな英語力は求められていません。

•Reading:3つの文のうち1つを正しく読む。
•Writing:3つの文のうち1つを正しく書く。
•Speaking:面接時、移民局の審査官とのやり取りで判断される。

英語テストが免除される申請者は以下の通りです。免除対象になる場合でも、公民テストは受けなければなりません。ただし、公民テストは母国語で受けられます。

•50/20 Exception – 申請時に50歳以上で、永住者としてアメリカに20年以上住んでいる。
•55/15 Exception – 申請時に55歳以上で、永住者としてアメリカに15年以上住んでいる。

公民テスト

公民テストはアメリカの歴史や政治に関する内容を網羅し、口頭で行われます。公民テストに向けて、指紋採取(バイオメトリックス)の際、『ポケット・スタディー・ガイド』という小冊子が配布されます。指紋採取が免除となる場合、オンライン(www.uscis.gov/sites/default/files/document/guides/M-1122.pdf)でダウンロード可能です。

審査官は公民テストで、事前に公開されている小冊子に掲載の100問の中から最大10問を出題します。ただし、申請者が65歳以上で、アメリカに永住者として20年以上住んでいる場合は、そのうち※印がある20問の中から出題されます。出題10問のうち6問に正解すると合格。5問が不正解の時点で不合格となります。

なお、公民テストは2008年版と、帰化申請を厳しくしたトランプ政権時の2020年版が存在します。元に戻された2021年3月1日以降に帰化申請書を提出した場合は、2008年版が使われます。

小冊子にある100問には解答サンプルも用意されています。例1のように正解が1つしかないもの、例2のように正解が複数あるものが混在します。特に複数解答の指示がない限り、どれか1つ正解すれば問題ありません。

例1: Q – What is the supreme law of the land?
A – the Constitution

例2: Q – What does the Constitution do?
A1 – sets up the government
A2 – defines the government
A3 – protects basic rights of Americans

テストを受ける時期によって、正解が異なる質問も存在します。たとえば、大統領や副大統領、州知事、上院議員の名前などです。小冊子には正解が変わる可能性についての記載がありますので、そうした質問の解答はテスト前に自分で調べておきましょう。

神戸市出身。明治大学卒業。大手外資系コンピュータ会社でのシステム・エンジニア職経験後渡米。 アメリカのハートランド、カンザス州のワシュバーン大学ロースクール(法科大学院)を卒業、ジュリス・ドクター(J.D.)取得。 カンザス・ワシントン両州において弁護士資格を持つ。K&I Lawyers設立以前は、 ロサンジェルスおよびシアトルにある移民法を中心とする法律事務所での勤務を通じて、多様な移民法関連のケースの経験を積む。 また、移民法以外の分野、特に家族法、遺言・検認・遺言状執行、会社設立、その他民事訴訟にも精通する。カンザス州およびワシントン州弁護士会会員、 米国移民法弁護士協会会員。移民法関連のトピックにおいて、たびたびセミナーを開催。 6100 219th St., SW, Suite 480, Mountlake Terrace, WA 98043 ☎ 206-430-5108 FAX 206-430-5118