米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) の五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき移民法について解説します。
本コラムで提供される情報は一般的かつ教育的なものであり、個別の解決策や法的アドバイスではありません。また、情報は掲載時点のものです。具体的な状況については、米国移民法の弁護士にご相談ください。
グリーンカード保持者への
留意点
トランプ政権の移民法政策への不安の声が広まっています。突然、自己強制送還の通知が届いたり、知らないうちにビザが取り消されたり、何十年も前の軽微な犯罪歴によって入国審査時に拘束されるなど、さまざまな事例が連日のように報じられています。その影響は、アメリカ国内に生活基盤を持つグリーンカード(永住権)保持者にも及んでいます。
グリーンカードは、アメリカにおける永住資格を証明する身分証明書で、アメリカでの居住や就労が可能であることを示します。18歳以上の永住者は、有効なグリーンカードを常に携帯する義務があります。
通常、グリーンカードの有効期限は10年です。アメリカ市民やグリーンカード保持者との結婚により取得した場合は、最初に2年間の条件付きのグリーンカードが発行されることがあります。この場合、有効期限が切れる前に、10年有効のグリーンカードへ切り替える必要があります。
また、1989年ごろまでに発行された一部のグリーンカードには有効期限が記載されていないものがあります。移民局では、こうしたカードを10年ごとに更新が必要な最新のグリーンカードに切り替えるようすすめています。有効期限のないグリーンカードは機械読み取りに対応していないため、グローバル・エントリーなどには使用できません。
5月7日より、国内線の旅行であっても、18歳以上の大人は空港のTSAチェックポイントでリアルIDに準拠した有効な身分証明書を提示しなければなりません。州が発行する強化運転免許証のほか、グリーンカードや外国政府発行のパスポートも有効な身分証明書として認められています。
10年有効のグリーンカードは有効期限の6ヵ月前から、2年の条件付きのグリーンカードは有効期限の90日前から更新手続きの申請が可能です。有効期限がない古いグリーンカードは、いつでも申請できます。また、カードを紛失した場合や、記載情報に変更があった場合(例: 結婚により姓が変わったなど)は速やかに申請するようにしましょう。
2年の条件付きのグリーンカードの条件解除にはForm I-751、10年有効のグリーンカードの更新にはForm I-90を使用します。このForm I-90については、2025年5月29日以降、2025年1月20日に発行されたバージョンのみが有効となり、それ以前のものは使用できなくなります。現在、申請書の様式は改訂が頻繁に行われていますので、提出時には最新版かどうかを必ず確認してください。
アメリカ国内に滞在しているグリーンカード保持者を含む外国人は、引っ越し後10日以内にForm AR-11を提出し移民局に住所変更を報告する義務があります。
たとえ有効なビザやグリーンカードを所持していてもアメリカ国外への旅行にはリスクが伴うようになってきています。法律に違反したことがない人は出国や再入国については過度に心配する必要はありませんが、犯罪歴のある人は、不要な出国は控えたほうがよいでしょう。少なくとも、出国前に移民法に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
また、入国審査も全体的に厳格化しており、空港でパソコンや携帯電話の中身を確認されたり、二次審査に回されたりするケースが増えています。申請書類についても様式の改訂が頻繁に行われているほか、審査に時間がかかる傾向が見られます。さらに、ソーシャルメディアの確認も行われるようになりました。移民局では申請者の身元確認や申請内容の整合性、国家安全保障上のスクリーニングなどを目的にソーシャルメディアの情報を活用しています。
今後はさまざまな申請において、ソーシャルメディアに関する情報の提供が義務化される(申請書に関連する質問項目が追加される)ことも発表されています。