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H-2Bビザ民間給与調査データの使用禁止

H-2Bビザとは、非農業季節労働者のためのビザであり、1回限り・季節・収穫期または断続的な労働を行う目的で取得できるビザです。このビザをめぐってはこの数年、平均賃金(prevailing wage)決定方法のルールおよび申請方法の変更をめぐって、予算・訴訟の影響で混乱状態が続いています。その訴訟の中で2013年3月21日にペンシルバニア東地区連邦裁判所の出した判決が、労働省・移民局でのH-2Bビザ審査を約1カ月間ストップさせてしまい、ただでさえ時間が限られている申請手続きに大混乱をもたらしたことは、H-2B労働者を必要とする雇用主にとっては、記憶に新しいことでしょう。 2013 年の訴訟で問題になった争点は、2008 年ルールの熟練レベルによる平均賃金額決定方法の合法性でした。もともと短期の特殊技術を必要としない単純労働に従事するH-2B 労働者の給与が、さらに熟練レベルによって分けられるというのは現実に即しておらず、そのためH-2B 給与額が人工的に低く設定されているとの指摘がありました。そのため労働省は、熟練レベルによる平均賃金額決定方法ではなく、中間値を賃金額とする方法を暫定最終ルールとして採用し現在に至っています。ただし、この中間値を賃金額とする方法は、労働統計局の職業別平均給与データ (Bureau of Labor Statistics Occupational Employment Statistics, OES) を使用する時のみで、雇用主は別途民間給与調査データを労働省に提出し、そのデータを基にした平均賃金額を決定してもらうことも可能でした。 2013 年にストップしてしまった審査は、OESデータを基にした申請のみ対象であったため、同様の混乱を避けるために、民間給与調査データを利用した申請は、その後一般的に行われていました。 一連の平均賃金決定方法をめぐる訴訟の中で同年12 月5 日、裁判所は、信頼できるOESデータがある中で労働省が民間給与調査データを基にして給与決定しているのは違法である、との判断を下しました。その判決を受けて、労働省は、12 月8 日、民間給与調査データを基にした賃金決定をストップしました。そのため、すでに提出された民間給与調査データを基にした給与決定申請に関しては、OESデータを基にした決定になるか、もしくは対政府契約の給与額 (Service Contract Act もしくはDavis Bacon Act) または労働組合の給与額を基にした申請に変更をするかの選択が与えられることになります。また、すでに民間給与調査データを基にした給与額によって求人活動を終了した場合、または労働認定証(Labor Certification) を申請した場合、もしくは労働認定証がその給与額によって認可されている場合は、後日OES データを基にした補足給与額が決定され、雇用主は民間給与調査データの額ではなく、後日決定された補足給与額に基づく実際の給与を労働者に支払う義務を負うことになります。労働省のこの一連の動きのため、H-2B平均賃金額申請の審査時間が長くなる影響がすでに現れています。 [知っておきたい移民法]

神戸市出身。明治大学卒業。大手外資系コンピュータ会社でのシステム・エンジニア職経験後渡米。 アメリカのハートランド、カンザス州のワシュバーン大学ロースクール(法科大学院)を卒業、ジュリス・ドクター(J.D.)取得。 カンザス・ワシントン両州において弁護士資格を持つ。K&I Lawyers設立以前は、 ロサンジェルスおよびシアトルにある移民法を中心とする法律事務所での勤務を通じて、多様な移民法関連のケースの経験を積む。 また、移民法以外の分野、特に家族法、遺言・検認・遺言状執行、会社設立、その他民事訴訟にも精通する。カンザス州およびワシントン州弁護士会会員、 米国移民法弁護士協会会員。移民法関連のトピックにおいて、たびたびセミナーを開催。 6100 219th St., SW, Suite 480, Mountlake Terrace, WA 98043 ☎ 206-430-5108 FAX 206-430-5118