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“Known Employer Pilot” プログラムとは?

移民局を管轄する国土安全保障省は3月3日に、雇用ベースのビザ申請期間の短縮化を図るために「Known Employer Pilot」というプログラムを一時的に実施し、状況を分析することを発表しました。Known Employerとは、「知られている雇用主」いう意味で、名称が示すように、移民局にとってすでに何回も審査した事のある雇用主のことを指します。これらの雇用主に対して審査の方法を変更し、書類の省略化、審査に掛かるリソースの削減、そして審査の遅延を防ぐことを目指しています。今回のプログラムはパイロット(試験的)プログラムですので、恒久的に実施されるものではなく、一定期間の実施を行い、審査方法・かかる審査期間など、長期的に実施された場合のメリット・デメリットなど、様々なデータ取得・分析のために行われることが第一の目的です。

このプログラムの発端は、米国とカナダの間のBeyond the Border Initiativeという2011年に発表された両国間の関係、国境を越えたセキュリティおよび経済の更なる発展を目指した方針が元になっています。その後この方針は年々発展し、2015年1月には、このKnown Employer PilotプログラムをBeyond the Border Initiativeの施策の一部として実施することを検討すると発表していました。この度、実際に試験的に実施されることになりましたが、このプログラムの対象はカナダ国籍者のみではなく、労働者がどこの国籍であろうとも適用されることになっています。

現在の雇用ベースビザ申請で審査される主な点は、(1)雇用主のビジネスの真実性、(2)外国人労働者にオファーされたポジションの本質、(3)職務要件、(4)外国人労働者の資格などですが、ビザ申請の度に雇用主に関するインフォメーション・書類を提出する必要があります。しかし、このパイロットプログラムを通して外国人労働者部分の審査と雇用主審査部分を切り離すことができれば、審査の効率化になり得ます。

Known Employer Pilotプログラムでは、各種ビザ申請における雇用主の審査部分を一元化し、雇用主情報・書類のみを先に移民局に申請することができるようになります。雇用主が審査される主な点は、雇用主の会社組織、運営状況、および財政状況です。実際の審査の手続きは、ウェブベースのKnown Employer Document Library(KEDL)と呼ばれる雇用主プロファイルに、必要とされる申請書・書類を提出する方法で行われます。もし移民局が雇用主の申請を認可した場合、ビザ申請は、外国人労働者の資格および職務要件など、オファーされたポジションに関する情報・書類のみを提出するだけとなり、雇用主の情報・書類の再提出の必要はなくなります。なおKEDLにアップロードされた雇用主の情報・書類は、米国政府による情報共有化のために、移民局のみだけでなく、大使館・領事館の査証審査官や、関税・国境管理局の入国審査官も閲覧できる仕組みがなされます。

Known Employer Pilotプログラム審査で対象となるビザの種類は、移民ビザのカテゴリーでは、EB1と呼ばれる傑出した教授・研究者と多国籍企業重役・管理職、非移民ビザのカテゴリーでは、H-1B、L-1A、L-1B、およびTNビザとなります。また、今回の施行は、あくまで試験的なプログラムであるため、現時点では、Citigroup, Inc.、Ernst & Young LLP、Kiewit Corporation、Schaeffler Group USA, Inc.、Siemens Corporationの5社のみのプログラム参加が決定しています。

[知っておきたい移民法]

神戸市出身。明治大学卒業。大手外資系コンピュータ会社でのシステム・エンジニア職経験後渡米。 アメリカのハートランド、カンザス州のワシュバーン大学ロースクール(法科大学院)を卒業、ジュリス・ドクター(J.D.)取得。 カンザス・ワシントン両州において弁護士資格を持つ。K&I Lawyers設立以前は、 ロサンジェルスおよびシアトルにある移民法を中心とする法律事務所での勤務を通じて、多様な移民法関連のケースの経験を積む。 また、移民法以外の分野、特に家族法、遺言・検認・遺言状執行、会社設立、その他民事訴訟にも精通する。カンザス州およびワシントン州弁護士会会員、 米国移民法弁護士協会会員。移民法関連のトピックにおいて、たびたびセミナーを開催。 6100 219th St., SW, Suite 480, Mountlake Terrace, WA 98043 ☎ 206-430-5108 FAX 206-430-5118