知っておきたい身近な移民法
米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) の五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき移民法について解説します。
本コラムで提供される情報は一般的かつ教育的なものであり、個別の解決策や法的アドバイスではありません。また、情報は掲載時点のものです。具体的な状況については、米国移民法の弁護士にご相談ください。
E・L-2ビザ保持者の就労許可
本コラムで以前、H-4・E・L-2ビザ保持者の就労許可に関するルールが変更されたことをお伝えしました。今回は、E・L-2ビザ保持者の就労許可についておさらいしながら、その後の進展をお知らせしたいと思います。
まず、このルールの対象はEビザまたはLビザ保持者の配偶者で、子どもはその対象になっていません。L-1ビザ保持者の配偶者にはL-2ビザが発行されますが、Eビザの場合、メインのEビザ保持者と配偶者のビザは同じです。たとえば、E-1ビザ保持者の配偶者にはE-1ビザが、E-2ビザ保持者の配偶者にはE-2ビザが発行されます。今回お話しするE-1やE-2ビザ保持者は、メインの申請者ではなく、その配偶者のことですのでご注意ください。
E・Lビザ保持者の配偶者はアメリカでの就労が認められています。ただし、就労はビザ・ステータスに付随していないため、入国後、移民局で就労許可申請を行い、EADと呼ばれる就労許可証を取得して初めて就労が可能になるというのが従来のルールでした。しかし、昨年11月、E・Lビザ保持者の配偶者の就労はビザ・ステータスに付随しているものとする、従ってEビザまたはL-2ビザ保持者はアメリカ入国後、就労許可を申請することなく自動的に就労が可能になると発表されました。
この政策は、発表があった日からの施行となったものの、これを実現するには移民局がE・Lビザ保持者の配偶者が就労可能であることをシステムに反映させる必要がありました。移民局は、すぐに実行に移ると公言しましたが、いつまでに何をするといった具体的な発表はしなかったため、発表当時は、E・L-2ビザ保持者が就労する場合、有効なEADが就労可能なことを証明できる唯一の書類でした。
その後、2022年1月31日に、米税関・国境警備局(CBP:US Customs and Border Protection)が新しい入国管理システムを導入し始めたことを発表。同日以降に入国したLビザ保持者の配偶者にはL-2S、Eビザ保持者の配偶者にはE-1SまたはE-2Sという入国コードが表記されることになりました。この「S」の表記がある場合、EADを取得しなくても就労可能ということを示しています。配偶者と子どもが識別できるように、子どもにはL-2Y、E-1Y、E-2Yというように、「Y」の表記があります。また、米国内の移民局でL-2、E-1、E-2ビザのステータス延長申請が認可された場合も、ステータスに「S」が追記されます。
これより前にアメリカに入国した人はこの「S」が表記されていませんが、アメリカでの就労が必要なければ滞在するには問題ありません。就労を希望する場合は、アメリカ国内でEADを取得するか、あるいは一度出国し、L-2S、E-1S、E-2Sとして再入国する必要があります。現在、EADの申請には時間がかかるため、出国して再入国するほうが早く仕事に就くことができるでしょう。
なお、CBPには「Deferred Inspection」というオフィスがあり、滞在期間や在留資格など入国審査での間違いを修正したり、書類不備などにより空港で入国審査ができない場合に入国後の審査をしたりしています。CBPは、2022年1月31日より前にアメリカに入国したL-2、E-1、E-2保持者のコードをL-2S、E-1S、E-2Sに変更しないと発表しましたので、Deferred Inspectionによる変更はできません。
2023年分の H-1Bビザ申請期間は6月30日まで
H-1B ビザは例年、キャップ数以上の申請があるため、申請受け付けの前に抽選が行われています。抽選のためには、移民局の専用サイトに申請を登録する必要がありますが、会計年度2023年分のH-1Bビザは、3月1日から18日までの登録期間が終了し、3月29日に最初の抽選が行われました。すでに当選者には、専用サイトを通じて連絡が届いています。その専用サイトでの連絡ですが、以下の5つのステータスによって状況がわかります。
Submitted:抽選のための登録が完了(申請応募に当選したことではない)。
Selected:会計年度2023年の申請に応募できる。
Not Selected:会計年度2023年の申請応募に当選しなかったことを意味する(会計年度の申請が最終的に終了するまでは、「Not Selected」のステータスに変わらない可能性があるため、現時点ではこのステータスの登録はまだないと考えられる)。
Denied:登録自体は行われたが、複数の登録をした場合など、登録自体が無効扱いとなったことを意味する。
Invalidated-Failed Payment:登録自体は行われたが、それに伴う費用の支払いが拒否された、受け付けられなかった、キャンセルされたなどの理由で、無効扱いとなったことを意味する。
現時点では、上記のうち「Selected」のステータスの登録のみ、実際の申請に進むことができます。申請は、4月1日から90日間の6月30日までに行う必要があります。審査のうえ棄却される申請もあるため、会計年度枠を使い切らない場合は、再度の抽選の可能性が残っています。