SDGsとは「持続可能な開発目標」。環境対策や貧困撲滅、ジェンダー平等などなど、大きな目標はたくさんあるけれど、私にもできることって? サステナブルで豊かなおうち時間を目指すべく「地球に、人に、そして自分に優しく」をテーマに、今気になるモノやコトを紹介!
以前、このコラムでも触れたが、この春から人生初ガーデニングに挑戦している。そんな中、ビオトープという言葉を知った。初めて聞いた時は「ん? 白金台のセレクトショップ?」なんて、全くピンとこなかったものである。ビオトープとは「動物や植物が安定して生活できる生息空間」のこと。もとはドイツ発祥の概念で、水や土などの環境要素や生物がそれぞれに作用し合って生まれる自然生態系を言うそうだ。つまり、森林や河川、湿地など、さまざまな生き物がその地域固有の自然生態系を構築している場所は全てビオトープということだ。
本来は学術用語だったが、近年は環境保護意識の高まりからランドスケーピングやガーデニングの分野で注目されているらしい。ことガーデニングにおいては、水辺を設けることでより自然に近い環境を再現することを指すようだ。都市部では公共の場にビオトープを取り入れることで、ヒートアイランド現象や大気汚染の解決の一助となることが期待される。教育の現場でも90年代頃から、子どもが自然に触れ、学ぶ場を整える、「学校ビオトープ」なる活動が日本各地で行われているそう。福岡県壱岐南小学校が、2002年から九州工業大学環境デザイン研究室と経堂で行うビオトープ創生プロジェクトは、なんと2007年経済産業大臣賞を受賞している。
先日、このビオトープの威力をまざまざと見せつけられる体験をした。以前から気になっていた、森の中の一本道にひっそり見える園芸店についに入ってみた時のこと。店自体は小規模で、老オーナーが家の敷地内で管理している様子。ところが、まず面食らったのは、大きなリンゴの木に設置されたブランコベンチ。ついついときめき、休憩していると、店舗の向こう側にそれは大きなアジサイと、しゃれた東屋が見えた。その一帯がオープン・ビオトープ・ガーデンになっていたのだ。
ヤマモミジのそばの小さな池にはアメンボがたくさんいるし、蓮の浮かぶ隣の池には赤や青のトンボが飛び交っている。アメンボなんて、筆者が小学生の頃は近所で当たり前のように見かけたものだが、そう言えばずっと目にしていなかったことを思い出した。池から池へと流れる小川には木漏れ日が差し、小さな橋が架けられている。水音も心地良く、その脇には日陰を照らす白アジサイ。ヤマボウシの木陰にはシダや苔が茂り、まさに「小さな自然」だ。そこに、夏から秋へと季節が移り変わるのを実感したのだった。ビオトープ、すごい! 最近、わが家の庭にもカエルやハチ、チョウがやって来るようになったことだし、なんとか少しくらい真似できないものかと頭をひねる今日この頃なのである。
■Roadhouse Nursery
ポールズボーで1985年から続く家族経営の園芸店。水生植物が特に充実している。隣接するオーナー住居の庭も、バラやアジサイなど色とりどりの植栽が見事で、通りがかりの目に楽しい。
■国土交通省「都市と生物多様性」
www.mlit.go.jp/common/001341502.pdf
日本の都市部の現状と、公園などでのビオトープ事例を紹介。蛇足だが、東京では2001年から条例で一定規模以上の建物の新築・増築の際には屋上緑化を義務付けているらしい。全然知らなかった!
■アクアフォレスト「ビオトープ(庭池・滝・小川)ガーデンの正しい作り方」
www.aqua-forest.jp/category/1246061.html
ビオトープに特化した日本の会社のサイト。環境保護としてのビオトープと、個人宅の庭造りにおけるビオトープの違い、その矛盾や限界、デメリットについても丁寧に解説されている。さまざまな角度から物事を見ることの必要性について考えさせられる。
参考資料
①ビオトープとは・意味 https://ideasforgood.jp/glossary/biotope/
②特定非営利活動法人 日本ビオトープ協会 https://www.biotope.gr.jp/
③”Growing Place” in Japan—Creating Ecological Spaces at Schools that Educate and Engage Everyone