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和紙で織りなす伝統と革新「和紙トランスフォーム」展〜イベントクローズアップ

和紙で織りなす伝統と革新
「和紙トランスフォーム」展
2021年にペンシルベニア州アレンタウン美術館から始まり、2026年までに全米11州を巡回する注目の和紙アート展。現在は、工芸品や視覚芸術にフォーカスするベルビュー美術館にて開催中で、日本人、日系人アーティストの9名が参加します。珠玉の作品群を一度に堪能できます。

取材・文:リー・ジャニス

生命力みなぎる存在感に圧倒される
「大地の息吹 BS 705」
入り口のすぐ近くに、池崎義男さんによる「大地の息吹」シリーズが並ぶ。一見、黒い岩のようで、これが和紙でできているとは驚きだ。池崎さんはフロリダの大学で絵画の学位を取得後に日本へ戻り、6年間を和紙の研究に費やした。和紙を自作し、墨を吸わせて作品に息を吹き込む。

制作過程が非常に気になる巨大な立体作品
「巣の国」
思わず写真を撮りたくなるのは、「巣」をコンセプトにした作品作りで知られる田中孝明さんの「巣の国」。無数の赤いキューブが和紙の原材料、楮こうぞの繊維でつながる。個々のキューブの中に、複雑に絡み合う繊維が見て取れる。

 

波を形作る文字列もつい追ってしまう
「朝焼け #2」
多様な要素を取り込む屏風は、伊部京子さんによるもの。古いガンピ紙を再利用し、藍染や墨、雲母で抽象的なイメージに仕上げている。実際の納税記録や結婚歴のコラージュもまたユニーク。早朝の淡い光に照らされた波に浮かぶ言葉に、過去の存在あってこその今、というメッセージが込められている。

 

 

 

超絶技巧が異彩を放つ花や植物をモチーフとする
「日本人女性」
横浜出身で拠点をフランスに移した切り絵アーティスト、蒼山日菜さんの作品は、ぜひ至近距離で鑑賞したい。そのレースを思わせるディテール、細かさに息を呑むことだろう。「自分の作品を見る間だけでも、痛みや苦痛を忘れてもらえたら」という思いでアートを手がけているそう。

 

光と影が織りなす美の世界に浸ろう
「行変形02」
木版と藍染が施された細部をじっくりと鑑賞「恵みの雨」証券などに使われてきた、局紙と呼ばれる和紙がある。西村優子さんは日本大学と筑波大学の在学中から、この局紙を用いて作品作りを行っていた。ほとんどが木材と紙にもかかわらず安定した強度を保つ、日本独特の建築デザインに日本人の精神を感じ、紙を追究するようになったと話す。立体の幾何学模様に折ることで、テクスチャーの変化、光と影のコントラストを喚起している。

繊細かつ自然な造形に目を奪われる鳥の巣をイメージした
「和紙 紐 結ぶ W+B」
福岡を拠点に活動するファイバー・アーティスト、石井香久子さんの「結ぶ」シリーズの作品。それぞれの素材本来の美点を生かし、ニュアンスの違いを際立たせる作風が特徴的だ。アーティスト自身は干渉せず、紙そのものに秘められた可能性を引き出すことに重心を置く。

レストランやホテルなどの建築空間に「生きた」和紙を
「石の光のオブジェ群」
元銀行員という異色の経歴を持つ堀木エリ子さんは、伝統的な和紙作りを継承するために修行しただけあり、その作品には和紙へのリスペクトがにじむ。月、秋草、石と波紋を組み合わせて禅庭を再現した「石の光のオブジェ群」は、ランプの放つ柔らかな光に心が温かくなる。

部分的なコラージュにより、作品全体が古い地図のように見えてくる
「虫食い」
ユウコ・キムラさんの最近の作品は、和紙と虫に食われた紙、祖母から譲り受けた古紙をコラージュしたものがほとんど。これらは時間、衰退、更新を表す。特に、向こう側が透けて見える楮でできた和紙を好んで使用しているそう。楮の内皮は虫の好物でもある。制作には時間がかかり、瞑想的な側面すらあるが、それが新たな発見や出合いに導くとも語る。

 

木版と藍染が施された細部をじっくりと鑑賞
「恵みの雨」

奥の展示室で天井から吊り下がる大作。作者の吉田亜世美さんは環境問題を意識し、作品には有機的な素材を用いるが、和紙もそのひとつ。古来、日本は雨が多い国である。ただ、昔と違い、現在の雨は災害を呼ぶもの。インスタレーションでは「過去」の浮世絵の技法を使い、「現在」の雨を表現した。

 

Washi Transformed: New Expressions in Japanese Paper

日程:開催中~4月26日(金)
場所:Bellevue Art Museum
510 Bellevue Way NE., Bellevue, WA 98004
料金:一般$15、7~17歳$8、学生・65歳以上$12 ※6歳以下無料
問い合わせ:☎︎425-519-0770
詳細:www.bellevuearts.org