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断捨離

みきこのシリメツ、ハタメーワク

44年のアメリカ生活を畳んで、日本に帰国することが現実的になってきた。「さあ、断捨離!」と、ためておいたもの、知らない間にたまってしまったもの、日常に使っていたものなど、家の中を歩き回れば必ず、「どうしよう?」という物に出くわし頭を悩ます。そのうち、「はて、今私が死んだら、子どもたちは私の遺留品をどうやって処分できるのだろう?」と、父が残したものの処分が20年近く経った今でもいまだ終えていない状態で、考え込んでしまった。

40歳代の頃は、「今まで生きてきた時間と同じくらい生きられる!」と思っていたが、50代ではそうはいかず、60代になると、「今までの半分生きられるか?」。65歳を過ぎると、もう、あと20年がいいところ。そのうち、頭がしっかりして体も動き、自分として生きてる実感があるのは10年……。そんなことを考えると、死んだ後の子どもたちのために片付けをすることに、寂しさ、悲しさが頭を占め、憂鬱になってしまう。そこでタイムカプセルを作ることにした。

父の他界後2年近く経ち、アメリカで散骨をしたため空になった父の骨壺がまだ残っている。どう処分しようか、クッキージャーにしても誰も中身を食べないだろうし、と考えあぐねていた時、「これをタイムカプセルにしよう!」と思い立った。われながらいい案だと思い、せっせと捨てられない子どもたちの幼児期のお絵描きなどを入れ始めた。ふたの上には、「タイムカプセル。ママが死んだら開けてね」と書いたメモを付け……。やっぱり、自分が死ぬことを前提としている。しのびない。「そうだ、『10年後、2030年に開けるように』と書き換えよう!」

10年後の、子どもたちがそれを開けた時の笑顔、もしかして孫がいたらその子らのワイワイ、ガヤガヤなどを想像し楽しくなってきた。「断捨離」は私が死んだ後の子どもたちのことを考えるのでなく、すっきりして、これからの残された私の人生の再出発のため、と発想を変えた今、すんなり進んできた。これからの10年、物だけでなく、必要のないことに惑わされてウダウダ悩むのはやめよう。時間やエネルギーの浪費を避け、「切り捨て御免!」と、大統領選も結果のみに集中した。

「断捨離」とは単に物を捨てるためではなく、今までの執着心との決別を意味するのだと、改めて実感した。

東京都出身。2000年から2005年まで姉妹紙『北米報知』ゼネラル・マネジャー兼編集長。「静かな戦士たち」、「太平洋(うみ)を渡って」などの連載を執筆。2020年11月に日本に帰国。同年、著書『ゼッケン67番のGちゃん』を刊行。