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おひなさま〜みきこのシリメツ、ハタメーワク

第40回 おひなさま

「おだいりさーまとおひなさま、ふーたりそろって、えびす顔。じゃなくって、なんだっけ?」

初孫の初節句。娘は来週、東京に来るので、沖縄に送らなくても家に飾っておいてあげたい、と思って雛人形を探している。私が子どもの頃、日本橋の家にあったのはお内裏さまとお雛さまの一対で、決して豪華でなかったが、それなりにふっくらした顔立ちのかわいいセットだった。

私は次女なので自分のものだとは思っていなかった。まあ娘たち3人、皆それぞれの結婚をして早めに家を出て行ってくれ、というのだかは不明だが、桃の節句はそんな意味が込められているのだろう。お雛さまの横に鮮やかな菜の花と桃の花の小枝が飾られ、思い出すと温かな、優しい気持ちになる。確か母が亡くなる前の年、幼稚園の年長組だったと思う。

長女が生まれた時は初節句には間に合わなかったが、帰国した際、乃木坂付近の神社の蚤の市でお雛さまを買った覚えがある。お内裏さまが満載の大きな箱と、お雛さまがいっぱいの別の箱。なんだこれ、離婚びな? などと思いながら、好みのお雛さまに合いそうなお内裏さまを見つけた。そうか、これは再婚びななんだ! 私は「お仲人さん」である。

満足した一対を買い上げ、シアトルに戻ってから娘たちが他州の大学へ通うまで、毎年飾っていた。そのお雛さまは今、倉庫に大事にしまってある。2年前に帰国した時は、娘に女の子が生まれるなどとは考えてもいなかったため、置いてきてしまった。

今回は離婚びな、再婚びなはやめた。娘たちがたまに夫婦げんかをしているのを見て、あれは、やはりまずかったのかな? と思い始めているからだ。とはいえ、夫婦げんかは犬も食わぬとはよく言ったもので、翌日はけろっとしている。で、また始まるのだ。

そんな折、急にハワイに引っ越す従兄妹が、2対あるとのことで翌日届けてくれた。早速飾ってみる。お内裏さまはどっち側だっけ? 昔は向かって右だったが、最近は左が多い。調べてみると、この習慣が始まった平安時代は男性が刀を左側に収めるので、お雛さまの左。お雛さまの右に座ると、誰かが攻めてきた時にお雛さまを切ってしまうではないか。戦後は西洋式の、権力を持つ順に右から並ぶので、男性は向かって左になる。「右にならえ!」なのだ。まあ、いろいろ説はあるのだが。敗戦の影響がこんなところにまで及んでいたのか。お雛さまの並び方まで変えなくたっていいのにね。と言っても、まねをしたのは日本人である。

孫には、疑問のある時にはきちんと問いただせる人間になって欲しい。とすると、婚期を逃して、どんなお雛さまを飾っても思い通りにはならんだろうなぁ。

とんだジンクスである。

東京都出身。2000年から2005年まで姉妹紙『北米報知』ゼネラル・マネジャー兼編集長。「静かな戦士たち」、「太平洋(うみ)を渡って」などの連載を執筆。2020年11月に日本に帰国。同年、著書『ゼッケン67番のGちゃん』を刊行。